社会貢献活動(CSR)

「生」に寄り添いながら 映画『いしぶみ』をめぐる対談 是枝裕和×藤田和芳

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アメリカ合衆国のオバマ大統領が広島の原爆死没者慰霊碑に献花し、「その瞬間を目にした子どもたちの恐怖に思いを馳せよう」とスピーチしたその2日前、ドキュメンタリー映画『いしぶみ』(※1)をめぐるこの対談は行われました。広島の原爆によって「全滅」した中学生321人たちの「生」を見つめる監督の是枝裕和さんと、大地を守る会代表・藤田和芳──二人の思いが交錯します。

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「これは『生きる』記録なんです」

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藤田 『いしぶみ』を拝見して、是枝さんにぜひお会いしたいと思っておりました。

是枝 ありがとうございます。

藤田 本作では被爆した子どもたちが、亡くなるまでのわずかに残された1時間、せいぜい3日ほどの時間のなかで、肉親の手のぬくもりを求めたり、友達と水浴びに行く約束をしたりしながらごく普通の日常を生きようとします。「生きる」ことのすさまじさは日常性のなかにこそあるのだな、と痛感しました。

是枝 この作品は1969年に放送されたテレビ番組のリメイクなんですけど、そのオリジナル版の書籍(※2)を読み直してみると、「死んでいくことを描写しているだけでなくて、生の最後の瞬間を記録したものだな」と強く感じたんです。その日の朝はどんなふうに家を出たか、友達や先生、肉親とどんな言葉を交わしたのか。原爆という非日常の出来事が起こる前後の日常性が、観た人の中で強く残るように作ったつもりです。

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藤田 原爆で人が亡くなることはもちろん悲惨で悲しいのだけれど、綾瀬はるかさんが淡々と朗読する「生」の荘厳さのなかには、恐ろしさや憎しみよりも多くのことが表れているような印象を受けました。

是枝 オリジナル版では杉村春子さんが母親の目線で読んでいらしてもちろん素晴らしいのですが、それではどうしても気持ちが「被害」に傾いてしまいがちなので、綾瀬さんには「子どもを死に追いやってしまった先生、大人の側の目線を入れて読んでください」とお願いしました。

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藤田 淡々と事実を読み上げられると、観る側の経験や知識とハーモニーして、怒りや悲しみがでてくるような力を感じました。

是枝 作品そのものだけではなくて、観た人の想像力を補って完成する作りにしたかったのでうれしいですね。

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なぜ私たちは生き残ったのか

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藤田 『いしぶみ』には、「広島・長崎の人たちだけが戦争の被害者なのではない」と語る方が登場して意外な展開を見せます。「東京や神戸、他にも空襲の犠牲になられた方たちもたくさんいたのだ」と。

是枝 ええ、偶然にも原爆直撃の難を逃れた広島二中の生徒の生き残りの方のお一人がそうおっしゃった。

藤田 当然、この戦争では日本のせいで命を落とした人が、アジアじゅうにも、またアメリカにもいたわけですから、日本人は自分たちの「被害」だけでなく「加害」の側面も見なければなりません。

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是枝 「被害」を語り継いでいくということは、戦争経験者が減ってきている現状を考えると当然必要なんですけど、やはり「被害」だけを声高に語っても広島・長崎の体験は日本の外に拡がっていかないし、世界の共有財になっていかない。それはアジアだけでなくアメリカの反応を見ても明らかです。じゃあどういう立ち居振る舞いができるかということを考えれば、やはり「加害」体験も含めて相対化していくという視線が必要だろうなとずっと思ってきました。

藤田 なるほど。

是枝 そこで、最初は原爆を落とした側の理屈とか、落とされたことによって解放されたアジアの人たちを取材しようかと思ったんです。ところが、広島二中には生き残った人たちがいて、「なぜ自分が生き残って彼は死んだのか」と考え続けながら70年間生きてきたということが取材の中で分かってきた。ならばオリジナルから離れずにきちんと「被害」と「加害」のようなことは語れるのではないかと。そのためには、死んでいったことと生き残ったことの濃淡みたいなものをもう少しきちんと見ていく作業が必要で、そこから始めたんですね。

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「おいしそう」からはじめよう

藤田 先ほど、日常や生きることについてのお話がありましたが、枝さんの作品には、現在公開中の『海よりもまだ深く』をはじめとして、日常の家庭の食卓を描くことを通して深いテーマに迫る手法が多いようですね。大地を守る会も、社会や環境にかかわる世の中のひずみに対して直接、告発や糾弾をしたりするよりは、毎日口にする食べ物のなかにこそ伝わるメッセージがある、というところが原点で、どこか通じるところがあるように思います。

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是枝 ぼく自身は東京しか知らない完全に都市型の人間なので野菜を作ったりという活動には向きませんが、ただ食いしん坊なので映画の中に出てくる食べ物もしくは食べているシーンというのは非常に大事にしてます。そういう「生」のディテールの充実みたいなものが積み重なって人生ができているというところをきちんと描かないと、劇映画でもドキュメンタリーでも、メッセージって上滑るんですよ。

藤田 私たちの活動でもいちばん根幹にあるものは、お母さんたちの日常的なごく当たり前の気持ちです。「農薬や化学肥料を使わない安全な野菜を子どもに食べさせたい」とか「この子のアトピーをなんとかしてあげたい」という気持ちには嘘がない。是枝さんの作品から受ける感動というのは、「生」の根幹にふれる表現ゆえだと思うんですよね。

是枝 『海よりーー』では樹木希林さん演じる母親が出てくるんですが、あの団地で毎日どう生きてるのか、何を食べているのか、それはどういう味がするのか、そこをきちんと描けると、観終わった後にカレーうどんが食べたくなるはずなんです。

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藤田 (笑)「おいしそう」という気持ちは正直ですからね。

是枝 でも映画ってそうでないといけない。何かメッセージを探されるよりは、観終わった時に「あれおいしそうだったね、カレーうどんを食べて帰ろう」と思ってもらった方がうれしい。そのぐらい目線の低いところで見た人の「生」に密着したほうがいいんじゃないかと思うんです。

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この日、是枝監督はカンヌ映画祭から帰国されたばかりのお忙しいなか時間をさいていただいての取材。現地では出品作の『海よりーー』の上映後に7分間もスタンディング・オベーションが鳴り止まなかった、と日本でも大きく報じられました。レッド・カーペット上に集まった世界中の人たちにだって、日本の団地に生きる人間の「生」は伝わる──断絶や対立に満ちて複雑にもつれた世界ですが、ときほぐす糸口はほんのすぐ目の前にあるのかもしれません。

 

2016716()より東京・ポレポレ東中野にて公開、ほか全国順次公開

映画『いしぶみ』

※註1:映画『いしぶみ』
1969年に広島テレビが放送したドキュメンタリー番組『碑』(薄田純一郎・原案、松山善三・脚本構成、杉村春子・朗読)を、2015年に是枝裕和監督・脚本でリメイクし、放映されたのが本作。建物疎開作業のために集合していた旧制・広島第二中学校一年生321名と教員4名が爆心地から500m地点で被爆し全滅した記録をオリジナル版の内容を受け継ぎながら、綾瀬はるかの朗読と池上彰によるインタビューを加え、現代版として再構成された。2016年7月16日よりポレポレ東中野ほかで順次劇場公開。
※註2:薄田純一郎『いしぶみ』(1970年、ポプラ社)。テレビ番組をもとに書籍化され、現在まで版を重ねている。

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