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すこやかな循環をつなぐ

【NEWS大地を守る4月号】竹と箸のはなし

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竹箸の原料となる孟宗竹の竹林。節の色の違いが分かるでしょうか。中央の竹は節が白っぽく、これは1年目の若竹です。左に見える竹は節が黒く、こちらは3年経ったもの。かたくて箸に向いている3年目のものを採ります。

“国産の竹だけ”で箸を製造し、竹から始まる循環を守る人々がいます。1本の竹から約150〜200膳。年間500万膳。熊本県南関町で箸を作るヤマチクの、地域の自然への貢献を見つめます。

地元の竹で作る箸

熊本県南関町。「なんかんまち」と読みます。福岡県との県境に位置し、人口は9000人ほど。緑に覆われる山深い地で、竹の箸を作るヤマチクの三代目・山﨑彰悟さん(34歳)を訪ねました。
工場に向かう道すがら、こんもりと茂るクスノキや杉に隣り合うように、竹の林が随所に見られます。天に向かって伸びるさまは美しいものの、奥を覗くと斜めに横たわる竹、また竹。朽ちて色艶をなくし、林の内部は鬱蒼として、「これが荒れているということか」と、竹林の現状を目の当たりにします。
竹は生長スピードが速く、その特性を生かせば資源として有効ですが、放置されると周囲を侵食し、特有の生長速度が仇となります。かつてはたけのこを掘り、竹製品を作るという営みにより管理されていた竹林が、荒廃する姿が一帯に見られました。
そうしたなか、地元で採れる竹を使って箸を作るのがヤマチク。大地を守る会では、「竹箸の普及により竹との共生を取り戻す」という、もの作りの姿勢に共感し、昨年から箸の取り扱いを始めています。

箸先は拭き漆、持ち手は色漆で仕上げた「うるしがんこ箸」。重さ約10gでお豆もつまみやすく、箸さばきも軽やかに。

30工程もの手仕事リレー

この日の朝、工場に到着すると、朝礼が始まったばかりでした。竹の乾燥窯の煙が上がるそばで、総勢29人が輪になって段取りを確認します。
最後は、「ケガがないようにがんばってください」と笑顔で締めて持ち場へ。制服の背中には「竹の、箸だけ。」の文字が誇らしげです。

「使い手が作り手」というヤマチクの社員。多くが女性で、「きずな箸」「納豆のためのお箸」など社員の発案でヒット商品が生まれています。右から2番目が山﨑彰悟さん、中央が彰悟さんの父・代表取締役の清登さん。

箸作りというと、機械の入口に木材をぽんと入れて、出口から箸が出てくる。そんな自動製造を想像していました。けれども、ヤマチクの工場で目にしたのは、「竹を切る」「削って形を整える」「うるしを塗る」といった30以上もの工程。人間の手が関わらない作業はありません。
「箸はシンプルな2本の棒ですが、魚をほぐしたりごはん粒をつまんだりする道具。かすかな違いが使い心地に出るんです。そして、その違いが分かるのも人間の手なんですよね」と山﨑さん。使うのも作るのも違いが分かる「手」。だからこそ、「一気に形にはならない」といいます。
「摩擦で角ば丸くしとるけん。これだと当たるでしょ。こうするとなめらか。持ったときに痛くないようにね」と、箸作り27年の松原和子さん。定規も使わず、「手も道具の一つ」と箸をやすりに当てて仕上げます。こうした工程を、何人もの作業でつないで少しずつ箸になるのです。

竹材屋さんから届いた孟宗竹。太さ15 ~20㎝と立派。筒状にカーブした厚み1㎝ほどの部分を箸に加工するため、何工程もの難しい作業が待っています。
筒状の竹に縦3㎝幅に切り込みを入れたあと、下に叩きつけてばらけさせ、棒状にします。このあと節をならす作業へ。
乾燥が甘いと黒ずみが出る竹。端材を燃やした熱で5日間かけ、念入りに乾燥。
竹は繊維が密集している表皮側の強度が高いため、表を削りすぎないよう、色の濃さで見分けながら慎重に削ります。
ベルト型のやすりに箸の頭をあてて丸く削っています。お姉さんが楽しく働く姿を見て入社した1年目の境 彩華さん。
「うるしがんこ箸」を箸先にかけて細く四角く削り終えたところ。このあと8つの工程を経て、箸の「形」が完成。その先に塗りの工程も控えています。
色漆を乾かす工程にも、3週間かかります。

竹を切る人がいるからこそ

山から竹を切り出す職人さんのことを「切り子」と呼びます。竹から箸を作るヤマチクは、彼らの営みを守ることも使命としています。
―「損な役回りの人間もいないと、世のなか回らんけん」―
あるとき切り子さんが、何の気なしにこぼした言葉。この一言に山﨑さんは愕然としたといいます。家業に戻った24歳のころ、10年前のことでした。
当時は20mにもなる竹を山から切り出しても、竹材屋さんの買い取り価格が1本500円。“損な役回り”とは、過酷な労働の対価の低さを示していました。
「自分たちの箸作りは(切り子さんの)がまんのうえに成り立っていたのかと、堪えましたね。切り子さんが竹で食っていけなくては、若い担い手だって増えない。僕たちの営みにも未来はないと思いました」
何とかしなくてはと、仕入れ価格を1本1200円に上げる目標を掲げ、竹材屋さんに協力を求めます。
山﨑さんの説得に皆が徐々に歩み寄り、10 年かけて1本1000円に。目標まであと一歩となりました。するとうれしいことに、周りに30代の切り子さんが増えてきたのです。
切り子さんが食べていけるようになれば、切り子さんが増える。竹林が整い、たけのこや竹箸が消費者に届くという好循環が生まれる。作っているのは箸だけでなく、社会の健全なしくみでした。
山﨑さんと付き合いのある平明広さん(35歳)も、昨年から農家と兼業で切り子を始めた一人です。きっかっけはご近所からの切実なSOS。
「“山ば整備してくれー”って近所のおばあちゃんに頼まれました。昨年おじいちゃんが亡くなって、それまで10年荒れていた竹林です」
箸の材料となる孟宗竹は、直径15〜20㎝と太く、1本の重さは50㎏以上。伐採はチェーンソー片手に急斜面を上がり、竹を切断して倒し、林から引きずり出す重労働です。
さらに、夏ともなれば蚊やマダニも発生し、冬は地中のたけのこを目当てに猪が出没。それでも、「だれかがやらんといけんし、荒れない方がいい。箸になると思うと悪くないけん」と平さん。切り子の多くが70代、80代という仕事が、若い世代に引き継がれています。

「せっかくやけん、きれいにしてやろうって気持ちで」と竹林を整備する平さん。
急斜面に続く竹林。伐採するだけでなく竹林の整備も行いながら奥に進みます。

毎日使う箸。素材まで気にしたことがないという方もいるでしょう。「箸」の漢字の冠は竹で、日本の箸の歴史は竹から始まっています。ヤマチクの箸は手にすると竹ならではの軽さを感じ、小さなものをつまむ際に、コンマ数㎜の手仕事の繊細さを実感します。
「箸は1膳だけ買うという人は少ないから」と山﨑さん。だれかの分も一緒に買えるようにとやさしい価格にしているそうです。新生活がはじまる4月、家族の分をそろえて楽しんでみるのもいいですね。

昨年第二工場の横に、ファクトリーショップ「拝啓」をオープン。「地元に若い人が働く素地を作りたい」と、箸のオブジェが目を引く店舗にしつらえ、「大日本工芸市at 熊本」「ヤマチク還暦祭」などイベントも実施。地域に多くの人を集めています。

COLUMN<竹林を放っておくとどうなるの?>

現在日本には約16万haの竹林があり、森林面積の0.6%を占めています。春に地表に出てくる若芽はたけのことして、生長した竹は竹製品や竹材として利用されてきましたが、たけのこの輸入増加や農家の高齢化に伴って、竹林の管理放棄が進みました。生長の速い孟宗竹の場合、1日に1m 以上伸びた記録があるほどで、放置された竹林の竹の根は、周囲に侵出し、ほかの樹木の成長を阻害します。また、多くの植物は竹より背が低いため、陽光を遮られて枯死していきます。こうした放置竹林の拡大を防止すること、伐採した竹を資源として有効活用することが課題となっています。

出典:林野庁ホームページ「竹の利活用推進に向けて」、「竹のはなし」「森林・林業統計要覧2021」 

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大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。