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〜真田信之のお膝元、沼田を訪ねて〜その②

【真田丸】沼田の地で400年続く 「真田用水」の今

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水不足に苦しむ領民を助けるために作られた真田用水

沼田には世界が旨いと認めるお米を育てる米農家さんがいます。そのお米の秘密にもなんと!?真田家と関わりが深いとか。400年の歴史が育くむ沼田の台地に流れる若き領主真田信之公の想いとお米の謎について(株)金井農園の代表、金井繁行さんにお聞きしました。

群馬県沼田市。人口約5万人が住む場所は、交通の要所として多くの人が行き交う場所です。昔も同じで、群馬県が上野(こうづけ)と呼ばれた時代、沼田は上野国の北部に位置し、関東と越後・信濃を結ぶ、戦略上重要な場所だといわれてきました。

そのため、この地をめぐり戦が幾度となく繰り返されています。真田家がこの地と関わったのは武田家に仕えた時からです。武田家滅亡後、この沼田は紆余曲折の後、1590年、豊臣秀吉が北条氏を征伐したときの褒美として真田家の領地のひとつとして認められたのです。

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沼田城外堀跡。今はグラウンドです。

真田昌幸の長男、信幸(改名前の名。改名後は信之)が沼田領2万7千石を拝領。初代城主として入り、以降5代にわたり91年間、沼田は真田家の領地でした。真田家が親兄弟敵味方と分かれた関ヶ原、大坂の役後も、沼田は真田家が治めていたのです。

「1590年に上田より25歳の信之公とまだ19歳の奥方の小松姫がお越しになられた頃、沼田は稲作に向いた土地ではありませんでした」と語る金井さん。

真田用水が出来るまでこの裏山で雨乞いをしていたそうです。

真田用水が出来るまでこの裏山で雨乞いをしていたそうです。

「沼田は河岸段丘の台地の上に農地があり、利根川、片品川という水量豊かな水が流れる川より農地が70〜100cm高く、常に水不足に悩まされていました。田植えをしても雨が降らないことも多く、よく裏山で雨乞い踊りをしていたそうです。その様子をみた信之公と小松姫がこれではダメだと思って、沼田を隅々まで視察。すると雨乞山の奥に2158mの武尊山があり、そこは雪解け水がたくさん流れていることが判明。武尊山の麓から用水路を台地の上の農地に引けば、領民は安心して米作りができると考え、沼田真田家の領国経営の重要施策として大小100本もの真田用水を作ったのです」

石高を3倍以上に増やした真田用水

真田用水の経済効果はどのくらいかというと、信之公が沼田城主となったときは2万7千石だったのが、1681年の前橋藩の検地(測量)では表石高6万5千石(実録高9万石)、なんと3倍近くになったのです。

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「沼田の面積が3倍に広くなったわけではなく、荒田に水をひき、荒れ地を実り豊かな田に変えただけ。これで石高が3倍近く増えた。沼田の真田家は、幕府から無理難題を押しつけられ、5代目で取りつぶしになりましたが、初代、信之公が作られた真田用水はその後も使われています。沼田には土岐家という譜代大名が幕末まで治めましたが、石高は真田統治時代のままでした。つまり信之公の政策を超えることができなかった。信之公が入城してより125年。沼田の地は豊かに実る土地に生まれ変わったのです」

実は!?真田びいきではなかった沼田

真田家のおかげで生まれ変わった沼田。地元での真田人気はすごいのかと思っていましたが実はそうでもないそうです。

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「明治時代、真田のお殿様を悪者にした『磔茂左衛門』という講談噺があり、この話が世の中で大ブレイク。明治22年に作られた噺ですが、実はこれ史実ではないと言われているのです。千葉県成田市の佐倉藩で、佐倉惣五郎という義民が重税を課す領主、堀田氏の悪行を将軍家に直訴し処刑されたという話でした。それをそっくり真似して、出演者だけを入れ替えたとされています。5代目の真田信利公が領民を磔や打ち首にしたという悪政を行ったわけではありません。でも『磔茂左衛門』を大正5年、東京の松竹座で上演。すると大喝采を浴びて興行としては大成功。その余波として、物語の舞台はどこだ?と沼田に大勢の人が来るようになったのです」

今のテレビドラマのロケ地や舞台を見にいく心境と同じなのでしょう。最盛期の頃は上越線が臨時列車を出すほどの人気ぶりだったとか。

「田舎に人が多く来ると、人は儲け心が生まれます。沼田の住民も磔茂左衛門の舞台だと装いはじめ、小さな祠を磔茂左衛門の供養堂といったり、河川敷に勝手に磔場跡地という石碑を立てたり。初めは商売っ気を出していただけで『磔茂左衛門』が実は作り話だとわかっていたのに、時代の経過とともに、いつのまにかこの物語は本当に沼田で起こった出来事だと信じる住民も出てきた。そして真田家に対する思いが薄くなったのです」

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人の噂は本当に奇妙なもので、沼田の領国経営に心血を注いだ真田家の人気は低いと嘆く金井さん。

「この作り話の影響は深刻で、真田家の現14代目当主もご存じでした。私が沼田出身だと知り「沼田真田家の5代目がご迷惑をかけました」と、気にかけておられました。本当のことを申し上げなくては失礼にあたります」

真田用水の真の目的は領主も領民もWINWIN

上田や松代と同じくらい沼田は真田と縁の深い場所。初代城主、真田信之公と小松姫のおかげで不毛の台地は豊かに甦ったこと忘れてしまったのは寂しいものです。

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「真田用水は開削以来400年、みんなで使い恩恵を受けている。その大事な用水路を真田のお殿様が作ってくれたことを知らない人が多いことが残念です。だから私は自分が農業に携わり、真田用水の恩恵を受けているからこそ、真田用水のことをもっと広めなくてはと思っています」

金井さんは『真田のコシヒカリ小松姫』というブランド名のコシヒカリを栽培しています。年間を通して、真田用水から流れてくる武尊山の綺麗な雪解け水を水田に引き、昼夜の寒暖差もあり恵まれた自然環境の沼田の大地で有機栽培米を育てています。

「真田用水には各地に水番がいます。用水の本流の本線と、支流となる支線の分岐枡は水番しか触れません。田への水入れは、この水番の言う通りにしか入れられない。いわば米作りの命綱を握る大事な役職。この水番を置いたのも信之公なのです」

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実はこの水番、400年たった今日でも現役の役職として、沼田の米農業にとっては必要不可欠な存在だそうです。昔から水番に選ばれる者は人柄も良く、地元農民を公平に対処できる徳のある者のみが選出されたとか。平成の今でも倫理観正しい真面目な方が水番を努めていて、平成の水番の指示のもと、沼田では皆で仲良く稲を育てているそうです。

真田家に伝わる古文書のなかに信之公が“領民を大事にしなさい”“家臣を大事にしなさい”と記した記録があるという金井さん。真田信之公や小松姫にこういう想いがあったからこそ、莫大なお金がかかっても、荒田に水を引き土地を潤わし、粟やヒエしか育たなかった荒田にお米が作れるようにしたのだと思うと感慨深いものですね。

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六文銭の形にお供えされていました。

「信之公は経済感覚に優れた方だと思います。沼田が潤うことで、領民も領主も双方が得するように考えておられた。まさにお互いWINWINなのです。私はその精神に敬服し、自分もそれを引き継ぎたいと思います」

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真田を侮ってはいけない。全ての人に利を与えるのが真田魂

金井さんが育てるお米『真田のコシヒカリ小松姫』はここ数年、米を品評する大きな大会で連続金賞に輝いています。先祖代々、大事に耕してきた田で、毎日、稲のことを考えているそうです。

「私の作り方は田に植える苗の数を平均の6掛け。かなり少ないといわれますが、苗と苗の間の風通しをよくし、稲の米粒一つ一つに太陽の光りがあたるようにしています。こうすれば、イモチ病などは発生しません。余分な農薬など使わなくて済みます」

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肥料は自家製の籾殻発酵肥料のみで動物性肥料は一切使いません。農薬を使わず、JAS 有機認証を取っています。そして、収穫したお米をお客様へ商品として納める前に農薬と放射能の残留検査を必ず行うそうです。

「田植えの時期は他の田と比べてうちはスカスカでみすぼらしい。でも梅雨が明ける頃になると元気に伸びてくる。隙間部分は苗が元気良く分けつしてしっかり大地に根を張ります。土壌分析すれば自分の田はどのような割合で栄養形成しているのかを知ることができる。肥料の計算方法は昔からあるのです。このとおりに行えば、誰がやっても病気にかからないおいしいお米ができますよ」

金井さんの作る『真田のコシヒカリ小松姫』は今、世界中から注目を浴びる存在。

「私はこの『真田のコシヒカリ小松姫』の育て方、名称を独り占めするつもりはありません。真田用水が育む沼田の米ですから、地元の多くの米農家と一緒に広めていきたいと考えています。東京ビックサイトなどで各大会の賞状を掲げると、びっくりした顔のバイヤーさんがブースに立ち寄られますよ。皆、「群馬?群馬の米で金賞とれたの?」と聞いてくる。だから私は必ずこういいます(笑)。「真田を侮ってはいけません」と」

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かつて徳川家康が唯一恐れたといわれている真田一族。その一族が愛した沼田で、世界が認める一流の米を育てる金井繁行さん。まるでそこに真田家の意思が宿っているように感じるのは開削以来約400年現役の真田用水の持つ力なのでしょうか。春夏秋冬、滔々と流れる真田用水は昔も今も多くの人に頼りにされている存在なのです。

 —完—

テレビドラマでも話題&真田信之公も愛した!? 「真田のコシヒカリ 小松姫」

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大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。