「やまけんの出張食い倒れ日記」や「日本の食は安すぎる」で注目のフードジャーナリスト、やまけんこと山本謙治さんが、大地宅配の食品についてとことん語ったコラム。大地を守る会の機関紙『NEWS大地を守る』に掲載されていた人気コラム「やまけんの大地を守るうんまいもん探訪(2011年~2014年)」を再掲載します。今回はその回目。テーマは「練り物」です。
僕の母は愛媛県の港町で育ったため、魚には一家言ありました。
特に我が家の食卓に並ぶかまぼこは、漁港で有名な宇和島から関東まで取り寄せていました。
そのブリンブリンと弾力の強い、素朴な味わいのかまぼこに慣れていたせいか、外食や買った弁当に入っている、変なにおいのするかまぼこがどうにも苦手でした。その頃から練り物という食に関しては、何が入っているのかわからんぞ、という警戒心を持ち続けています。
魚の練り物は、すり身にした魚に結着剤ともなる塩や各種の調味料を加えて練り、加熱したものです。そう書くとシンプルですが、現代の加工食品としての練り物にはいろんなものが入っています。
「保存性を増すため」「悪い素材にプリプリの弾力を与えるため」「味をよくするため」という言い訳をしながら。
じゃあ、本来不要なものを入れなかったらどうなるのか。
島根県の出雲地方に「野焼き」という練り物があります。ある店で、新鮮なすり身と塩と、その地域で古くから使われてきた料理酒だけで味をつけて焼いた野焼きを買い求めました。
魚そのものの味わいにスッキリとした香り、素朴な塩味。たっぷり堪能し、食べきれず残しておきましたが、はたして4日後、冷蔵していたその野焼きの周りはネトネトしていたのです。
僕はそのとき衝撃を受けました。
練り物は、形を変えてはいるが魚なのです。そして、ちゃんとした練り物はすぐにダメになるのだ、と。
いま我が家では、大地宅配の練り物商品を愛用しています。きっちり早めに悪くなる、はずです。
もったいなくて、実験したことはないですけどね。
山本謙治(やまもとけんじ)
1971年、愛媛県に生まれ、埼玉県で育つ。農産品・食品などのコンサルタント会社(株)グッドテーブルズ・代表取締役社長。『日本の食力―国産有機物がおいしい理由』ほか。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記(www.yamaken.org)」が人気。