ここで6日間にわたる「ばななぼうと」の航跡をたどってみたい。進行スタッフとして乗り込んだ自分にとって、それは休む間も船酔いする間もない、怒涛の航海だった。
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1986年10月5日 神戸港から瀬戸内海~太平洋へ
正午、銅鑼の音とともに「ニューゆうとぴあ号」は神戸港を出港。
昼食(食事はすべて実行委員会が持ち込んだ食材による)をとって「出発式」となる。実行委員長・西川栄郎さん(徳島暮らしをよくする会/当時)より「ジャンルを超えた草の根市民運動のネットワークを作り上げよう」とのアピールがあり、フィリピンから参加したバナナ農園労働者のオスカーさんの挨拶、そしてフィリピン共和国大統領コラソン・アキノさんからのメッセージが読み上げられた。
「洋上草の根サミット」の参加者のみなさん!
第三世界からの参加者を含めた対話と協議のために、さわやかな、そして非常に独創的な環境づくりに示されたみなさんの想像力ばかりでなく、開発途上国の内部や相互間に平和・正義・自由・平等・繁栄を促進する上で示されたみなさんの関心と熱意ゆえに、みなさんにご祝辞を申し上げます。(中略)
みなさんのサミットを促進するのは、より大きな善 ―世界の資源のもっと公正な分かち合い、人間の尊厳の擁護、環境の保護と発展― を目指して結集した人々の間のこのような合意である、ということを私は知っております。私はまた、みなさんのサミットを成功させるのは、みなさんの真摯さであり、みなさんの運動に対するみなさんの誠実さであることも私は知っております。
開発途上国間の関心と協力という特色を持った、より幸せな、よりよい世界に向かうみなさんの象徴的な航海のご成功をお祈りします。
出発式を終えるや、早々にワークショップが開始された。核施設問題、公害、農薬問題、教育、第三世界の諸問題……船内は一気に熱気に溢れる。夕食後は松橋勇蔵さんの一人芝居「心に海を持つ男」上演、そして国際シンポジウムへと続いた。話はいきなり第3世界の自立と国際貿易のあり方についての議論である。砂糖、バナナ…私たち日本人の暮らしは、否応なくフィリピン農民とつながっている。あるべき貿易の姿を創りだそう。
合間々々に実行委員と進行スタッフはミーティングを行ない、プログラムの調整や進め方について議論する。早くも寝る時間が失われていった。
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10月6日 ~石垣島へ
快晴の下、船は一路南の島へと走る。船内では朝から超過密スケジュールでワークショップが繰り広げられる。乗船者からはワークショップの希望や運営に対する意見が次々に寄せられ、調整にあたる実行委員会を批判する壁新聞なども登場した。
午後、「生活を創る市民運動シンポジウム」開催。“モノ提携・テーマ連合”をキーワードに、今後のネットワークづくりについて議論は延々5時間余に及んだ。
夜8時、「白保の夕べ」開催。新空港建設問題で揺れる石垣島・白保について、キャサリン・ミュージックさん(ハーバード大)よりスライド説明がある。
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10月7日 石垣島~徳之島
最初の目的地となる沖縄・石垣島到着。10台のバスを連ねて白保地区に向かう。
白保では、小舟によるピストンでのサンゴ礁見学、島の乱開発の様子を見て回るオプショナル・ツアー、白浜での豊田勇造さんや加藤登紀子さんの歌などによる交流会が催される。
特にサンゴ礁の美しさは参加者を深く感動させたのだが、最後にスタッフの順番になったところで現地の人たちが音を上げてしまった(おかげで僕は見ることができなかった)。
浜ではそのまま「空港建設阻止全国大会」へと合流。
「空港建設で埋められるのはサンゴだけではない。そこで暮らす人々の命も埋められるのだ」
島の人々のアピールに参加者は胸を打たれた。
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10月8日 徳之島~奄美大島
徳之島・亀徳港入港。歓迎レセプションが行われ、バナナ園、コーヒー園を見学。台風にやられながらも、バナナの復活で島おこしにかける生産者の思いに触れる。
夜は船内で「島おこしシンポジウム」、そして加藤登紀子コンサートに島うた交流会。酒を酌み交わしながらの交流は深夜まで続いた。
登場人物が多すぎたか、未消化のまま終わったシンポジウムだった。司会を務めた筑紫哲也さん(当時は朝日ジャーナル編集長)が悶々としながら酒を飲んでいたのを覚えている。
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10月9日 奄美大島~神戸港へ
奄美大島・古仁屋港に入港。海上タクシーを使って、核廃棄物処分場計画が進む加計呂麻島へ。島では「諸屯シバヤ」と呼ばれる伝統芸能などでの歓迎セレモニーとガーデン・パーティが開かれる。午後は海水浴など、最初で最後の自由行動を楽しむ。
夜は船内でのパーティ。事務局のあずかり知らぬミニ・ワークショップも船内のあちこちで続けられていた。皆、何かを持ち帰りたいと焦っていた。
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10月10日 神戸港に帰港
最終日。6日間の天候に感謝しつつ神戸港に向かう。
午前中はテーマ別の分科会と自主的なワークショップ。分科会では、これまでの討論を実のあるものに結びつけるために、さらに熱の入った議論となる。
午後は砂田明さんによる一人芝居、そして「さよならミーティング」。各分科会の報告から始まって、参加者からのアピールが続々とされ、改めてこの船が抱えたテーマの広さと深さを感じさせた。水俣・相思社の柳田耕一さんからは、環境社会学を中心とした「水俣大学」構想が提唱された。
最後に実行委員会から、「残した課題はたくさんあるが、これだけの人たち、しかも各団体のリーダーたちが6日間ともに行動し、語り合ったことは画期的である。これを出発点として、今後のネットワークと新しい運動を創りだしてゆこう」と締めくくられた。
19時、無事神戸港に帰港。延べ2,249㎞に及んだ航海は、参加者に新しい夢とテーマと消化不良の胃袋を与えて、その6日間の旅を終えた。
(以上、『ばななぼうと報告集』の戎谷レポートをもとに再構成した。)
壮大な祭りのようで、しかし実にたくさんの新しい種がまかれた船だった。
あの暑苦しい船旅は何だったのか。“「ばななぼうと」のその後”のトピックをいくつか拾って、この項を終わりにしたい。
(資料協力・ほんの木)