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4000年の歴史上岐路に立つ大豆
カラカラ、カラカラ……。風が吹くと、黄金色に輝く畑に軽やかな音が響き渡ります。「いい風だね。大豆が乾燥するには、湿度が低い風が必要です。この音は、水分量が減ってぎゅっと小さくなった大豆が、さやの中で揺れている音なんです」。風になびく大豆畑を見つめるのは、大豆の生産者・平譯 優(ひらわけ まさる)さん(北海道幕別町)です。 大豆は、4000年以上前から中国で栽培され、日本には約2000年前に伝わったとされています。豊富な栄養素を含み、昔から栄養食・保存食として重宝されてきました。味噌や醤油、豆腐、納豆など、日本の食文化の形成にも欠かせない大豆は、今日に至るまで私たちの食を支えています。 しかし、長い歴史を持つ大豆は今、岐路に立っています。国産大豆の自給率はわずか7%で、ほとんどを海外産のものに頼っています。その中には、日本への輸入が許可されている遺伝子組み換え大豆がある可能性も否めません。また、2017年4月、「主要農作物種子法」の廃止法案が成立しました。大豆を含む穀物の種子の価格が不安定になり、出回る品種が少なくなるともいわれ、これまで食べていた大豆が食べられなくなる可能性もあるのです。 目まぐるしい変化の中にある大豆の国内生産を支えているのは、全国の収穫量のうち約3分の1を占める北海道です。平譯さんは、広大な畑が続く北海道十勝平野の南西部に位置する幕別町で、35年以上農薬や化学肥料を使わず、大豆をはじめとしたさまざまな品種の豆や野菜を育てています。自然乾燥で一層引き出された大豆の味わい深さには、生きる力が秘められています。【送料無料】おいしい・便利・安心がかなう宅配!まずはお得に、お試しセット1,980円!
北の地を力強く生き抜く
茶色のさやをパキッと割り、出てきた大豆を平譯さんは口に含みました。「こうやって噛むと大豆の水分量、つまり乾燥度合が分かります。ぐにゃっとしたら約20%以上、カリッとしたら約15%。日高山脈から吹き下ろす乾燥した風が水分量を減らしてくれます。雪や雨、霧はもちろん、風があっても太平洋からの湿度が高い風ではだめ。豆の中でも大豆は水分量が変わりやすいので、収穫するタイミングは天気と大豆の状況次第です」。 一般では、大豆の水分量が20〜25%もある早い時期に収穫し、機械で乾燥させることが少なくありません。一方、平譯さんは、水分量が約15%になるまで風に当てながら、畑でじっくりと大豆を自然乾燥させます。「大豆は土から栄養をしっかりと吸収してうまみを蓄えます。機械乾燥では風味がとんでしまうことがありますが、自然乾燥ではうまみと香りを生かすことができるんです。早く大量に生産できる機械乾燥も便利だけど、やっぱり自然乾燥だね」。寒いけど風が吹くと嬉しくなると平譯さんは話します。 実はこれまで、枝ごと刈り取って畑に積み上げておく伝統的な「にお積み」で自然乾燥を行ってきた平譯さんですが、今は畑の様子が違います。「近年、北海道向けの農業機械の改良が進み、米に加えて豆と小麦にも対応できる収穫機が登場したんです。自然乾燥は続けつつ、収穫時の労力を軽減できるようになりました」。地元でも、畑でそのまま自然乾燥させてから収穫する光景が広がりつつあります。 農家を継ぐと決心し、今は主に収穫を担当している息子の健一さんが、収穫機を走らせます。選別担当の平譯さんは時に手伝いながら、その様子をじっと見守っています。全国で農家の減少・高齢化が進む中、幕別や北海道全体では、大豆農家が多く残っています。夏は草取りで延べ百人単位の人手が必要となり、冬は雪が積もれば溶けるまで待つしかないというのも、北の農業の厳しさです。 そんな中で力強く育った大豆は収穫後、平譯さんが30年以上使い続ける選別機にかけられます。手動で調整する風に当てて選別した大豆には、うまみと香り、生命力がずっしりと詰まっています。【送料無料】おいしい・便利・安心がかなう宅配!まずはお得に、お試しセット1,980円!