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始まりは、1本のメルロの木から
収穫を目前に控え、たわわに実るぶどう畑に佇む1本の大きな木。「これは、最初に植えたメルロの木です。60年以上経った今でも、しっかりと実を付けています。若い木に比べると果汁は少なめですが、味は濃くなるんです」。そう話すのは、長野県塩尻市の桔梗ヶ原で、創業106年を迎えるワイナリー「林農園」の代表・林幹雄さんです。桔梗ヶ原は今や世界的にも評価の高いメルロの産地として知られていますが、実は林農園と深い関係があるのです。 日本でワイン造りが始まったのは明治時代。雨量が多く湿度が高い日本では難しいとされる中、コンコードやナイアガラなどアメリカ系品種のぶどうを主に用いて、甘めのワインが造られていました。第二次世界大戦中には、ワイン造りの工程でできる酒石酸という成分が軍事利用されたため、酒石酸が抜かれた酸っぱい状態に砂糖を加えたワインも多く出回りました。 日本のワイン造りが模索を続けていた1911年、幹雄さんの父・五一さんは、桔梗ヶ原で桃やぶどう、りんごなどの果樹園を開園しました。中でも好評だったぶどうの余りを加工しようと思ったことから1919年にワイン醸造を開始。さまざまな品種を試験的に栽培していたものの、当時、国内で主流となっていた甘口のワインを造っていました。 戦後、父の仕事を手伝う幹雄さんが抱いていたのは、「ヨーロッパにあるような辛口のワインを造りたい」という思い。そこで1952年に植えたのが、山形県の農家から譲り受けたメルロです。「寒さや病気から守るため、幹をわらで巻いたり接ぎ木する高さを調整したりと、試行錯誤の連続でした」と幹雄さんは振り返ります。その苦労が実を結び、3年後、糖度が20度もあるメルロの栽培に成功します。メーカーに原料も卸していた林農園は、「ヨーロッパ系品種のぶどうはないか」という大手メーカーの相談にメルロを提案。そのメーカーのワインは国際コンクールで数々の賞を受賞し、桔梗ヶ原はメルロの産地として国内外から高い評価を受けるようになったのです。 林農園は、本格的なワイン造り、ひいては日本におけるワイン造りの礎を築いた一人と言っても過言ではありません。【送料無料】おいしい・便利・安心がかなう宅配!まずはお得に、お試しセット1,980円!
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国産ワインと「日本ワイン」
今も変わらず、自社農園と地元の契約農園で育てたぶどうからワインを造る林農園。9月から収穫作業に追われている自社農園は、太陽の光がきらきらと降り注ぎ、下草が青々と茂っています。 「搾ったあとのぶどうの皮や梗(こう)などを発酵させた肥料を土壌に混ぜ込んでいました。今では土壌内の成分バランスが整い、20年以上無肥料です」と幹雄さん。ぶどう畑のところどころに花を咲かせているバラは、「虫を寄せ付けない役割を担っています。また、ぶどうと似た病気にかかるので、バラに変化があったら注意するといった、バロメーターでもあります」。 ぶどうにふと目を向けると、列をなしてずらりと並んでいました。「これはスマート法といって、芽を一方向に伸ばしていく栽培方法です。太陽の光がよく当たるうえ、労力が40%省けるほど作業しやすく、農家の高齢化にも対応できます」。 毎朝、農園の真ん中にある自宅からぶどう畑を歩いて出勤する幹雄さん。ぶどうの声に耳を傾けるように、異変がないか木や葉を見て、実を口に含み、いつもぶどうを見守り続けています。 取材当日の収穫量は800㎏で、契約農家がトラックで次々と運んでくるぶどうと合わせると20トンにもなります。基本的に、収穫したその日のうちに圧搾し、発酵・熟成と仕込んでいきます。 このように、生のぶどうからワインを造ることは当たり前のように思われますが、実は今、そうでない場合が多いのです。「日本で販売されているワインの70%は輸入ワインです。残りのうち20%は、海外産の濃縮還元果汁を使用して国内で醸造されたもので、『国産ワイン』と呼ばれます」とは製造担当の添川さん。「日本ワイン」と名乗ることができる、国産ぶどうを100%使用して国内で造られるものは、わずか10%と希少な存在です。【送料無料】おいしい・便利・安心がかなう宅配!まずはお得に、お試しセット1,980円!