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海に生かされてるんだ

【NEWS大地を守る3月号】南三陸、また海とともに

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カキを引き上げるため、毎日船で海に出ます。カキが付いたロープを機械につなげたら、落ちないように手をやさしく添えて。

8年前のあの日。未来へ向かう道のりが始まっていました。宮城県南三陸町戸倉地区でカキを育てる生産者の、阿部徳治さん・民子さんを訪ねました。

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始まりはあの日から

何台ものダンプカーの後ろに連なって車を走らせ、建物の骨組みが残った南三陸町防災対策庁舎の周辺に未だ広がる、平らにならしただけの土地を抜けると、志津川湾がどっしりと構えていました。透明度の高さから映し出されるさまざまな碧色と、雲の隙間からこぼれ落ちる朝日が穏やかな海面で交じり合い、何色とも言いがたい色合いを醸し出しています。その美しさに思わず驚嘆していると、「ねぇ、綺麗でしょう」と笑顔でこちらに歩いてきたのが、宮城県南三陸町戸倉地区でカキを育てる生産者の阿部民子さんです。

どっしりと構えながら繊細な色合いを醸し出す志津川湾。カキの養殖棚は、船が悠々と通れる間隔で設置されています。


8年前となる2011年3月11日。カキの養殖をはじめ水産業が盛んな南三陸町では、大津波により、住宅はもちろん船や養殖棚、剥き場など何もかもが失われました。民子さんは周りの皆と高台に避難する際、集団の後方にいました。後から一人のおばあさんが来るのを見て、声を掛けながら一緒に走っていたところ、次に振り返った時にはそのおばあさんはもういませんでした。民子さんの義理の父・徳太郎さんも、違う場所で同じ状況となり、帰って来ることはありませんでした。一方、民子さんの夫・徳治さんは船で漁場に出ていたところで、津波が来ると察知すると、周りの船とともに沖に出ていきました。翌日、船から見た陸地には何もなく、変わり果てた町の姿がありました。

「私たちが住んでいる浜で残った船は1艘だけ。着の身着のままの状態で、復旧作業をしながら、養殖や地域をこれからどうしていこうかと毎日皆で話し合いました。そして、カキ漁師37人が悩み抜いて出した結論が、ASC認証(※)を取得したカキを生産することでした」。

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海と人を守るASC認証   

昼過ぎ、船に乗り込んだのは徳治さんと息子の瑞輝さん。「養殖棚は船が悠々と通れる間隔で設置して、各棚にぶら下がっているカキが付くロープも5m間隔だね」と徳治さんが話します。

阿部徳治さん(左)と息子の瑞輝さん(右)。「息子がいて2人の時は楽です」。


震災前は、養殖棚もカキが付くロープも間隔が狭く、カキは過密状態でした。とにかく水揚げ量を多く得るためです。複雑に入り組んだリアス式海岸で山から栄養が流れ込み、植物性プランクトンが豊富でカキ養殖に格好の場所である志津川湾も、過度の養殖により、次第に堆積物が海底に積もり、栄養と酸素の循環が滞るようになりました。カキの身入りは悪くなり、出荷できるまでの期間は1年から3年にまで延びていたのです。それに漁師たちは気付いていました。しかし、生活がかかっていることもあり、養殖方法を変えることは容易ではありませんでした。

そこで起きた東日本大震災。津波は奇しくも過密養殖のツケも流し去っていきました。その後、養殖棚の数を減らすという不安がある中、大学の教授などの協力のもと、その数を3分の1にまで減らしました。持続可能な養殖を行うASC認証カキの生産を始めたのです。

カキがびっしり付いた重いロープを引き上げていると、気付けばカキで満杯になったかごが船の上にずらり。「今は1年くらいで出荷できる大きさになります」とは息子の瑞輝さん。心配されていた水揚げ量も以前と変わっていません。

カキがびっしり付いたロープを機械につなぐまで手で持つのが「すげー重い」。
今では1年ほどでこれだけ大きくなり、出荷できます。
一つも落とさず、正確かつパワフルに運びます。


翌朝の日の出前。海の目の前に建てられた共同のカキ剥き場には明かりがついていました。現在は大半の漁師がここで、午前中までカキ剥きを行っています。「たくさんあるからいつもこの時間からやってるの」と言う皆さんの手は、休みなく動いています。

むきガキは、一つ一つ剥いてくれる人がいるからあるのです。
たくさんあるため、いつも日の出前から行われるカキ剥き。
終わらなさそうな人がいると皆でお手伝い。


徳治さんと民子さんも自らの剥き場で同じ時間にカキを剥いています。「食べてみて」とすすめられて口に入れたカキは甘みが濃く、渋みの少ない澄んだ味わいです。

甘みが濃く、渋みの少ない澄んだ味わい。
寒い中、石油ストーブで徳治さんが焼いてくれたカキの味わいは格別。

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痛みも抱きしめて歩んでいく

養殖版の海のエコラベルとも呼ばれるASC認証は、戸倉地区のカキ生産者たちが国内初の取得者です。すべてを失って震災の痛みを抱えながら、皆で一丸となり、125におよぶ審査項目をクリアしてASC認証まで手に入れたことは、自然や自分自身と向き合い、並大抵ではない努力を重ねてきたからこそです。


実は、以前は徳治さんと船に乗ってい た民子さんは、震災の経験から今もまだ船に乗ることができません。しかし、南三陸町戸倉地区のこの状況をなんとかして伝えたいという想いで、養殖体験イベントやインターネットでの情報配信なども積極的に行っています。

もっと伝えるために手作りした紙芝居。
イベント開催や情報配信なども行う民子さん(左から2番目)のところは、女性が働く場所にもなっています。

「海が憎かった。でもね、気付いたの。私たちは海に生かされてるんだって。動植物が棲む海に、人間も寄り添うように共存しないといけない。消費者の皆さんもぜひ一緒に取り組んでほしいです」。民子さんはまるで海のように澄んだ表情で言いました。自然、人を敬う心を持ち、食をいただきましょう。


【コラム】ASC認証(※)とは?
水産物には大きく分けて、海や川で獲られた「天然」ものと、人の手で育てられた「養殖」ものがあります。養殖の水産物が、環境に大きな負担をかけず、労働者や地域社会にも配慮し、責任を持って育てられたものであることを示す認証がASC認証です。水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が認証し、国際的なエコラベルをつけています。持続可能な水産物の取り組みを応援する際、このラベルが一つの目印となります。


「ASC認証南三陸戸倉っこかき(加熱用)」はこちら
※該当商品の取り扱いがない場合があります。


大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。