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2007年10月16日

水産物生産者会議(前編)-海のエコラベルの可能性

さて続いては、10月13日(土)、成清さんを偲ぶ会の前に開かれた、
『第17回全国水産物生産者会議』 をレポートする。

大地に水産物(加工品含む)を出荷して頂いている漁業者・メーカー・卸し関係者が
年に一度集まって、
各種の視察や研修、情報交換などを行なう会議。
毎年各地の生産地で開催してきて、もう17回目になる。

今回は、ビシッとお勉強の日、とします。
ということで、ちょっとシニア大学といった感もあるが、学問の府に集まっていただく。

場所は、東京・品川にある東京海洋大学。
昔の水産大学と商船大学が合併してできた国立大学である。

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テーマは、
「MSC認証」-持続可能な漁業・水産物供給の促進について-

「MSC」とは、
MARINE STEWARDSHIP COUNCIL (海洋管理協議会) の略。

漁業資源の乱獲を防ぎ、持続可能な漁業の推進を目指して、
1997年に設立された国際的非営利組織。本部はイギリスにある。

どんな活動をしているのか-については、
要するに、まぁ・・・まずは下記の講演スライドを見ていただきましょうか。

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要するに、まあ、
持続可能な水産業を保護・発展させるために、
ちゃんとした基準に則って、
海洋資源を適切に保全・管理する漁業(あるいは加工・流通)を認証して、
独自のラベルを貼って推奨してゆこう、というもの。

MSCは、いま世界で唯一の水産物に対する第三者認証機関である。
(ちなみに講師はMSC日本事務局プログラムディレクター・石井幸造氏)

言わば 『海のエコ・ラベル』 である。
少しずつではあるが、世界の各地で広がっていて、
日本でも取り扱い店や団体も増えている。

今回はまず、その概略を理解すること。
そして、こういう取り組みが求められてきていることに対して、
それぞれどんなふうに考え、自分たちの仕事や経営に生かすか、を考えていただく。

そこでもう一人、日本初のMSC認証を取得された築地の仲卸しさん、
(株)亀和商店の代表・和田一彦さんにも登場願った。

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和田さんのMSC認証取得は、かの長寿漫画 『美味しんぼ』 でも紹介された。
いま大地とは、昨年5月に日本最初のMSC認証製品となった、
アラスカの天然キングサーモンの話が進んでいる。

3人乗りトロール釣り漁船で、一本ごとに釣り上げたサーモン。
素晴しい話、ではある。

しかし、国内漁業や近隣での話となると、コトはそう簡単ではない 。
(なんか、いつもこんな話の展開のような気がする…)

資源が枯渇に向かえば向かうほど、やまないのは乱獲だ。
あるいは汚染は、海の向こうから (手前から?) やってくる。

これらの問題が厳然と残る限り、
一人で頑張って認証を取得しても、空しくなるばかりではないか-
実に素朴な疑問であり、これこそ漁業者の目の前にある最も厳しい現実だとも言える。

自身の努力と技術次第で認証が可能な有機JAS規格とは異なる世界が、
海にはある。なんたって相手は、漁業資源なのだ。

MSCの基準-「持続可能な漁業のための原則と基準」 は
FAO (国連食糧農業機関) が2005年に採用した 「水産物エコラベルのガイドライン」
に則っている。
この基準と、認証と、漁業者の経営(生活)が上手にリンクするには、
国の規制制度ともちゃんとつながらなければうまくいかない気がするし、
かつ地域的 (あるいは海域的・国際的) 取り組みを支援する仕組みも必要だろう。

そして問題解決の鍵を握る 「消費行動」 に、どうアプローチするか。
あるいはどういうコミュニケーションをとるか、とれるのか。
そのために何が必要か・・・霧の向こうに目を凝らして、考えよう。

あらゆるジャンルで認証が花盛りとなった時代。
それだけ不安な世の中とも言えるけど、
根本的には生産と消費がうまくつながってないことの証左であって、
特別なマークに寄りかかっても、上手くはいかないのだ。
基準の精神が社会のスタンダードにならなければ・・・

ともかくもまずは、
和田さんが多大な手間とお金をかけて先鞭をつけた、
漁師の顔が見える 『MSC認定-天然キングサーモン』 から、
我々は何を語れるか、を大事に追求してみたいと思う。
もちろん、目の前の海を見つめながら。