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ベストセラー作家の吉本ばななさん。実は、大地を守る会の食材を長いことご愛用いただいています。今回、大地を守る会のホームページでエッセイの連載が始まることになりました。吉本ばななさんの食にまつわる思いや暮らしぶりに触れることのできる特別なエッセイです。イラストは、吉本ばななさんのお友達で、絵本作家・イラストレーターの山西ゲンイチさんの描き下ろし、ぜひお楽しみください。
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野菜の力
三十代を過ぎたあるとき体を壊し、食べるものが体を作っていることを実感した。野菜に関してもちょうど魚の目玉や張りを見るように、その色や形から「生き物としての力」を持っているかどうかを見るようになった。
それから二十年、何が起きたかというと違いがわかるようになった。大きくてきれいに見えても味がなかったりスカスカの野菜がおいしくないということが、見ただけでだいたいわかるようになったのだ。
とても長い時間がかかったけれど、自分がどんな世界で育ってきたかを考えたら、それもそのはずだ。スーパーに行っていろいろ購入したら、そこに「うまみ調味料」や「添加物」が入っていないものはほとんどない。コンビニエンスストアに行ったらいっそうその割合は大きくなる。
私はマクロビオティックを実践していないし(彼らの提唱する味は、私にとっては『強すぎる』のです)、ヴェジタリアンでもない。ごく普通に生活しその中で食べられるものをおいしくいただいているだけだ。
ムツゴロウさんがおっしゃっていた。いろいろ考える必要はない、食卓にのぼるおいしいと感じるものを、なんでも食べたらいいと。そんな感じだ。ただ素材に気を使っていただけで、自然に、薄紙がはがれるように、体が添加物をわかるようになり、受けつけなくなっていった。
大切なのは「体に悪いから添加物を取らない」と頭で決めることではなくて、「これ、好きじゃないなあ」と自然に感じる体を作ることなのだ。頭で決めると、単に制限が多くなって息苦しくなるだけだから。
人工的な味は刺激的で、じわじわっと舌に響いてきて、なんでも同じ「おいしい」味になる。
それから、よく噛んで味わうと気持ち悪くなるので、早く飲み込んだほうがよくなる。
野菜に力がなくても、ドレッシングの味だけで満足してしまう。
大人になって判断力がある私でも、そんな味の違いがわかるようになるまでに二十年以上かかっているのだから、子どもにとってのそれがどんなにたいへんなことかよくわかる。
小さい頃からいつも添加物でいっぱいのものばかり食べていたら、舌が慣れてしまって、おいしい野菜の味を知らないまま育ってしまう。もしかしたら野菜が嫌いになってしまうかもしれない。えぐみもないのでうまみも甘みもない、そんな野菜に慣れてしまったらもったいない。経済的な事情を口にする人は多いが、量を減らせば対応できると思う。私はそうした。
おいしいきゅうりをコールドプレスジュースにすると透明な緑色の液が出てくる。きゅうりのエッセンスがみんなつまった、どんな水よりも生き生きした水だ。あの瑞々しさに触れる喜びを子どもたちから奪ってはいけないと思う。
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吉本ばなな プロフィール
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『下北沢について』『毎日っていいな』がある。noteにてメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」を配信中。