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山と海を耕す

【NEWS大地を守る12月号】拓いた道は海へとつながる無茶々園

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無茶々園の創設者、片山元治さん。「日本の農業・地域の再生と農業の国際化は今、密接な共存関係にある」と、日本とベトナムを行き来し、有機農業の実践・普及に取り組んでいます。

それは、一つの小さな伊予柑畑から始まりました。山、海とともに暮らす無茶々園(むちゃちゃえん)(愛媛県西予市明浜町)の皆さん。見つけたのは、海のようにどこまでも続く循環型農業とふる里への想いでした。  

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“無茶”からのはじまり

青々とした山の急斜面を登りきると、ところどころ黄色く実を付けた木々が生い茂り、その先には穏やかな海が広がっています。「畑に戻すには、まず木や葉を切って日を当てる。2〜3年かけてなんとかせんと」。ベトナムからの農業研修生と一緒に、亡くなった持ち主の畑を再び拓いているのは、無茶々園(むちゃちゃえん)(愛媛県西予市)の創設者・片山元治(もとおさ)さんです。 1960年代、愛媛県ではその温暖な気候を生かした、温州みかんの栽培が奨励されました。結果、生産量は日本一になりましたが、みかん畑となった山は、農薬や化学肥料の多用で疲弊していました。愛媛県西予市明浜町では川や海も汚染され、小動物が驚くほどの勢いで減っていったそうです。さらに、農薬の害についてよく知らず使った生産者も多く、体を害し病院通いを強いられる人が増加。片山さんは「自然に溶け込み、土と親しみ、土に還す百姓が、農薬や化学肥料で命を切り売りするのが農業か?」と疑問を持ちました。その頃、有吉佐和子の著書『複合汚染』、レイチェル・カーソンの著書『沈黙の春』にもふれ、若い生産者仲間と夜な夜な議論を重ねました。そして、地元のお寺の伊予柑園を借り、この畑にスペイン語の「お嬢さん」を意味する「ムチャ」と、「無茶を無欲で無茶苦茶頑張ってみよう」という意味を込めて「無茶々園」と名付け、農薬・化学肥料に頼らない柑橘栽培を始めたのです。  

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地域で取り込む環境保全型農業

複雑に入り組んだリアス式の入り江には小さな集落が点在し、山の斜面には先人たちが築いたみかんの段々畑が空に向かって広がる愛媛県西予市明浜町。太陽の光、海・石段からの照り返しという「3つの太陽」に恵まれた、柑橘栽培にとって理想の土地です。

複雑に入り組んだリアス式の入り江には集落が点在し、山の斜面にはみかんの段々畑が広がる愛媛県西予市明浜町。

最初は県中心部に販路を求めましたが、次第に関東や関西などの消費者団体とも出会い、つながってきました。それに伴い仲間が増え、40年が経った今、無茶々園の生産者の数は約70世帯、無茶々園発祥の地・狩浜集落における割合は約7割にもなりました。柑橘栽培そのものにとどまらず、地域で実施されていた農薬散布の中止をはじめ、日本各地・海外からの若い生産者の受け入れや、地域の伝統文化の継承、高齢者の福祉サービスの展開など、地域の人々が生き生きと暮らせるコミュニティーを作り続けています。 みかん畑の目の前は海、集落では農家と漁師がお隣同士。無茶々園では漁業者も仲間に加わり、地域全体で環境を守る第一次産業に取り組んでいます。漁船に乗せてくれたのは、チリメンジャコの生産者・佐藤吉彦さんです。

家の目の前で獲ったカタクチイワシなどの稚魚を、海水で炊いて天日干しするチリメンジャコの生産者・佐藤吉彦さん(左)、お連れ合いの美加さん(中央)、息子の哲三郎さん (右)。

チリメンジャコに砂糖、酒、醤油をまぶし、あったかいごはんにのせていただく漁師飯。

「約18年前、海藻が減っていることに気付いたんです」。当時、フグの養殖で寄生虫駆除に使い海に捨てられていたホルマリンの影響が大きかったものの、温暖化による海の環境の変化、生活排水や農薬による汚染など理由はさまざま。「好漁場の豊後水道に面するここは真珠の養殖も盛ん。真珠を取り出す『浜揚げ』の後に残ったロープを活用して、小魚が生息しやすいようにわかめの養殖を始めました」。漁協の女性部は廃油をリサイクルして石鹸を作り、今も各家庭に配布しています。「山のことは海から、海のことは山から見るとよく分かる」と、佐藤さんは漁船から山を見つめます。

海の中で穏やかに過ごすアコヤ貝や明日の仕事に備える漁師を、今日も山が見つめています。

 

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自然との歩みは豊かな未来へ

自然とともに生きること。それは、豊かさの中にある厳しさに直面することでもあります。2018年7月の豪雨では、早朝から300ミリを超える雨が降り続き、土砂で畑は崩れ、農道も埋まってしまいました。段々畑で必須ともいえる、収穫した果実の運搬機をはじめとした農業機械や施設の破損も多く、折れるなどした木は2千本以上、収穫量にして1万7千キロ以上の被害になると考えられています。   豪雨による被害は山だけにとどまりません。「土砂が大量に流れ込んだ海では赤潮が発生し、豪雨前後に作業したアコヤ貝の3〜4割が死んでしまいました」。祖父の代から続く真珠の生産者の3代目・佐藤和文さんは話します。

「毎日の仕事は朝4時半の貝の世話から始まります」とは、祖父の代から続く真珠の生産者の3代目・佐藤和文さん。

「真珠の養殖で一番大事」である「核入れ」を行う、和文さんの母・若子さん。

貝を丸くしたものと貝の細胞片を、アコヤ貝の中に入れる「核入れ」。

山からカルシウムやミネラルが流れ込む、栄養豊富な海で育まれる真珠。

「自然災害に対して、いつも覚悟は持っています。時間をかけてゆっくりと、復旧に取り組むしかないのです」。そう話すのは、柑橘農家を継いで10年目、現在の無茶々園の代表・宇都宮幸博(さちひろ)さんです。農業学校を卒業後、農薬も扱う農業資材会社に勤めていましたが、「どうしたら自分の人生をよりよくできるか」と考え、無茶々園での柑橘農家を継ぐことを決心しました。

柑橘農家を継いで10年目、無茶々園の代表・宇都宮幸博さん。「あれもこれもやりたくて、1年があっという間です」。

「みかんのヘタが長いとあたって傷の原因になる」ため、ていねいに短く切ります。

  「ずっとみかんが近くにあったし、小さい頃から海にも入っていますが、サンゴも増えているんですよ。この地域を守り楽しみながら、いいことをみんなで分け合っていきたい」。宇都宮さんは段々畑から海の方を眺めました。 心まで耕す彼らが拓き続ける道は、山と海、そして未来につながっています。   【コラム】自然災害が起きた生産現場では 無茶々園の皆さんをはじめ、多くの大地を守る会の生産者が「異常気象」と言うように、近年、作物の生育不良や自然災害などが目立ちます。2018 年7 月、西日本を中心に襲った豪雨では、大地を守る会の生産者も甚大な被害を受けました。圃場の崩壊や施設の浸水、機械の破損、また、圃場の水没により取得していた有機の認証が今年は通らないという場合も発生しています。大地を守る会は、「大地を守る未来募金」を通じて会員の皆さんからいただいた寄付金で生産者を支援しながら、現在、他の支援方法も検討中です。引き続き、あたたかいご支援をよろしくお願いいたします。 ※他の支援方法については1月中旬頃、カタログとウェブサイトに掲載予定です。   「無茶々園の商品」はこちら 「無茶々園を含む大地を守る会の柑橘」はこちら  

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。