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武骨だけど味のある海苔

【NEWS大地を守る1月号】有明海、秋芽の一番

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朝6時半の有明海。海苔の"世話"をしに、漁場へ向かって走っていく船。有明海での一日はすでに始まっています。

新海苔の季節、到来。成清海苔店(福岡県柳川市)の成清忠さんがこだわるのは、その年、一番初めに摘み取る海苔「秋芽一番摘み」。それは、心に届くおいしさです。

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距離が開いた?私たちと海苔

薄っすらと雲がかかった青空から、水面に静かに降り注ぐ太陽の光。その光で満ちた穏やかな水面は、見渡す限り立ち並ぶ支柱を鏡のように映しています。船でそっと支柱に近づき、その間に張られている網をぐっと引き寄せてみると現れた黒いもの。「これが海苔やね。ようのびとる。あと4〜5日で摘み取りやね」。やわらかな表情で話すのは、有明海の海苔漁師を束ねる漁業協同組合の一つ、皿垣開漁業協同組合(以下、皿垣漁協)の組合長・内田利男さんです。

満潮時と干潮時の海面の高さの差は6mで、干潮時に海苔網が顔を出します。


太陽の光と風にあたることで殺菌され、うまみも蓄積されます。ちなみに自分の海苔網の場所は、「仕事しよったらだいたい分かる」そう。


海や海苔の状況について話す、皿垣漁協の組合長・内田さんと成清海苔店・成清さん。

おむすびや寿司、ラーメンなど、私たちの食生活に昔からなじみのある海苔とはいえ、広大な有明海でびっしりと育てられている様子を見ると、その生産量に驚かされます。しかし、そんな海苔にも変化が表れています。近年、全国における生産量は30万トン前後(※1)と大きな変動はありませんが、消費量の内訳で贈答用と家庭用が減少し、業務用が増加しているのです(※2)。「昔は贈り物で海苔をもらったらうれしかったでしょう? 今は食卓で海苔を食べること自体、少なくなっとる」。船を操縦する内田さんの隣りで話すのは、大地を守る会の海苔でおなじみ、海苔の仕入れ・焼き・加工を担う成清海苔店(福岡県柳川市)二代目・成清忠さんです。「海苔には等級が付けられるけれど、業務用にあたる等級が最近、新たに増えたほどだよ」と内田さんも続きます。私たちと海苔の距離が少しずつ開きつつある中、成清海苔店、皿垣漁協、漁師たちが励むのが、〝味重視の海苔作り〞です。

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ひたすら味に向き合う

「この時期、海の上で漁師が主にやる仕事は『調整』。海苔網が満潮で海水に浸かり、干潮で海面から出るように、潮に合わせて網の高さを調整すると。海苔は海水から栄養を吸収し、太陽の光と風で殺菌され、うまみを蓄えるけん」。内田さんの後を継ぐ娘婿の広光さんをはじめ漁師たちが小舟に乗って「調整」している姿を、内田さんは見つめます。「毎日のように海に出て、海苔をよく観察しながら世話をする。常に変化する海の状況、世話をする日にちや時間、頻度などで、海苔の生育や仕上がりは変わるけんね」。それは、まるで海の上の農業のようです。

毎日のように海に出て、きちんと海苔網が海面から出るよう、潮に合わせて網の高さを調整します。

もう一つ、この時期の海での仕事で、年に3〜4日しか行わないのが「網揚げ」です。町がまだ深い眠りについている午前3時。漁業用合羽を着た漁師たちは小舟に乗り、複数張ってあった海苔網を、海に1枚残して他を手で引き揚げます。

冷凍保存する海苔網を引き揚げる「網揚げ」。


寒空の下、ぴしゃぴしゃと海苔網を手で引き揚げる音が響きます。仕事をする船の明かりがずらりと並んだ、午前3時の海の上。

朝日が昇る頃、「家に戻って朝ごはんを食べてから、陸の上で続きをやります」と言う漁師の塩塚信介さん。午前8時、海苔網は畑に干されていました。「風に少しさらしたら、漁協の冷凍庫に入れに行きます」。海苔の摘み取りは11月中旬から3月頃まで。前半は海に残した網で、後半は冷凍した網をもう一度張って、海苔を摘み取ります。「摘み取りが始まったら、睡眠時間はさらに少ない2〜3時間ですね」。一年中、海苔が食べられるのは、夜も昼も、海でも陸でも仕事にあたる、漁師たちがいるからこそです。

冷凍保存する前に海苔網を畑で少し干す のは、多すぎる水分と一緒に凍ると、細胞が壊れてしまうため。


四角い海苔になるまでには、たくさんの努力が詰まっています。


海苔網を干している間は、空の模様を確認しながらお茶の時間。雨が降りそうなど空に変化があれば、すぐにとりこみます。


日の入りで黄金色に染まる有明海。

漁師たちが作った「乾海苔」に等級が付けられて入札会に並ぶと、成清さんの出番です。成清さんは、年に数回ある入札会の1回目で、シーズン中一番初めに摘み取った海苔「秋芽一番摘み」のみを仕入れます。「歯ざわりがやわらかくてよか。『秋芽一番摘み』の入札は年に1回しかないので、まさに真剣勝負。普段から皿垣漁協のメンバーや漁師たちと話して情報を聞いたり、入札会前は海苔のサンプル100種類以上をもらって食べ比べたりするとよ」。

500以上ある海苔の等級で、最上級「旬優」 の帯が巻かれた海苔。

仕入れた海苔は成清海苔店で焼き上げます。「皿垣漁協の海苔は細かくミンチされて少し厚めだから、穴が開いたり割れたりとロスが出るけれど、サクッとした歯ざわり、ふわりとした口どけ、しっかりとしたうまみが何よりも決め手」。「個性」と呼ぶ、海苔それぞれの細かな違いも見逃さず、焼き機につきっきりで焼いた海苔をすかしたり口に含んだりする成清さんは、慈しみをも秘めた真剣な眼差しです。

「海苔にも個性がある」と、焼き加減や味など仕上がりを常に確認しながら、海苔を焼いていきます。


いつもの笑顔から、職人の真剣な眼差しに。

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人やつながりもおいしさのうち

実は、一般的に、海苔の等級は主に見た目で付けられています。黒い色や艶やかさなどを気にしがちな海苔。きちんと味も考慮する仕組みをつくれないかと動き出したのが、成清さんが信頼を置く皿垣漁協でした。そして1995年、皿垣漁協は全国で初めて食味検査を導入したのです。20年以上経っても、味重視の海苔作りを続けるのは、ずばり「おいしいから」。「食べてみれば分かるよ」と、成清さんをはじめ皆さんがにこやかな表情で口を揃えます。

焼き工場で一緒に仕事をする妻・千賀さん と。やっぱり笑顔がこぼれます。


「もう他の海苔は食べられんと」。明るく和やかな皿垣漁協の皆さん。

素直に味に向き合った人たちがつながりできた海苔。そのおいしさは、海苔、ひいては食本来の〝味〞を教えてくれるはずです。

(※1) 農林水産省2012年〜2016年「海面漁業生産統計調査」参考
(※2) 全国海苔貝類漁業協同組合連合会「ノリ消費動向」参考

【コラム】今年の海苔の仕上がりは?

読むのが難しい海の状況と同じく、「四角い海苔にしてみないと」味が分からない海苔。新海苔の季節を迎えている成清さんに、今年の海苔の仕上がりについて聞きました。「味は昨年と同じくらいのっており、口に広がるうまみ・甘み・塩気はさすが秋芽一番摘み。口どけも秋芽一番摘みならではですが、昨年の方がほんの少しやわらかかったと思います。色は、海における栄養分の不足が否めず、昨年よりやや赤みのある黒です。海の状況で心配なところもありますが、一年間皆さんにお届けできる枚数の海苔を仕入れることができたのでほっとしています」(成清さん)。今年も有難く、おいしくいただきましょう。

「成清海苔店の海苔」はこちら

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。