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探求する“俺のみかん”

【NEWS大地を守る2月号】みかんの男、波村郁夫

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「みかんの樹が俺の先生なんだ」と笑う波村さん。独創的な栽培方法を実践し続けるみかんの探求者です。

優しい笑顔が印象的な波村郁夫さん(熊本県)。50年来の柑橘栽培を通して人生を哲学する“みかんの男”は、出会いと感謝、そして愛を知りました。

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生産者たちが探す“俺流”の先

有機農業に携わる生産者を取材しているとあることに気付きます。それは皆さんが「俺流」を模索し、その先を目指す。そして歩みを決して止めないということです。

長崎有機農業研究会では、粘土質の赤土により重労働になる収穫作業に苦しめられながらも、じっくりと作物が育つ土壌を生かして、味ののった玉ねぎを栽培しています。福島わかば会の鈴木正幸さんは、きゅうりの表面に付く白い粉が農薬と間違えられるため、栽培が敬遠されている「ブルームきゅうり」を、みずみずしく甘みがあるからと今でも「俺流」で作り続けています。土壌を改良する化学肥料、虫や病気を予防する農薬に頼らない有機農業では、各地の風土に合った栽培方法を見いだし、それを「俺流」に工夫を重ねることで、生産者たちは誰よりもおいしい作物作りに情熱を注いでいます。

「俺が作りたいのは“良いみかん”」と話すのは、熊本県でみかんを中心に柑橘を育て、大地を守る会とは35年のお付き合いがある生産者・波村(はむら)郁夫さんです。「良いみかん」とは、「健康に育ち、それがそのままみかんの味になり、食べる人が喜んでくれるみかん」のこと。じつに抽象的で、哲学的な「俺流」を実践し続ける生産者が波村さん。部屋いっぱいに本がある読書家で、お気に入りはアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著の『星の王子さま』。「王子さまが輝いているのは、自分の星に残してきたバラの花への愛に気付いたから。私も王子さまがバラの花に思いを馳せたように、愛や絆、責任を持ってみかんを育て、“良いみかん”を皆さんに届けたい」。今回は、そんな純粋さに溢れる少し不思議な生産者・波村郁夫さんのみかん作りを見に行きました。

畑の次に多くの時間を過ごす離れの書棚。栽培のこと、人生のこと、俺流を哲学する波村さんにとって神聖な場所。
波村さんの愛読書『星の王子さま』。独創的で想像力に富み、純粋な心を持つ波村さんの人柄が表れています。

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止まらない探求心

「朝話していて、一番条件のいい早生みかんの畑の樹を切ってしまおうかと言うんです。夕方に帰ってきたら全部切ってしまっていて……」と話すのは、波村さんと一緒にみかん畑を世話する妻の雅子(うたこ)さん。「一度言い出したら絶対に言うことを聞かないんです。私だって一応、みかん農家の育ちなんですよ」。
「あれは、味の差が出にくい『しらぬい』を、一番いい畑で作ってみたかったから。究極においしいしらぬいを作ってみたくて」と波村さん。

50年間歩みをともにしてきた雅子さんと二人で。器量のある雅子さんに支えられてやってきました。


ほかにも、波村さんなりの“良いみかん”作りは続きます。「みかんの畑の下は、じつは髪の毛くらいの根が張りめぐらされているんです。その根を健康に育てるために、通気口を作りました。土に新鮮な空気を送り、暑い日は土の中に溜まった熱を逃がしてくれる通気口です。土が酸素不足になると、みかんの味は落ちます。まだ実験段階で、結果が分かるのは2年後です。下草の管理も重要です。草の根元には微生物が生きていて、土をやわらかくして活性化してくれます。伸び過ぎるといけないから、夏はとにかくずっと草刈り。でも有機農業の生産者にとって草との共存は不可欠なんです」。

傾斜にあることが多い柑橘の畑。当然、重労働になり、高齢化とともに生産者が減っていく理由にもなっています。
年々増える台風などの自然災害に備えて植えられた防風壁の槙(まき)の木。
長年研鑽を重ねて行き着いた“俺のみかん”の樹形。真ん中にスペースを作り、日が当たるように工夫されています。
畑を掘り起こして設置した“波村スペシャル”の通気口。空気を送り込み土を活性化してくれるはず。
肥料に含まれる栄養素を樹ごとに変え、タグにして記録。味にどう影響するかをテストしています。


これなら毎年おいしいみかんができるのでは? 「みかんは正直で、人間のように嘘はつかない。常に変化がある中で、みかんの樹の気持ちをよみながら育てる。どれだけ寄り添えるかが大切なんです。これまでいろいろなことを実践してきたけれど、まだ自分が納得のいく“良いみかん”と思えたことがない。だからやり続けるんです」。

そんな波村さんが2008年に大地を守る会のイベントに参加した時、そこで自分のみかんを食べて愕然としたといいます。何かが違う、おいしくない。

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最後のひと手間まで

「正直に言うと、俺のみかんじゃないと思いました」。
畑では、みかんを食べながら収穫しているという波村さん、樹ごとに味を確認しているのです。「収穫の時はもっとおいしかった、生き生きとして、みかん本来の味を保っていたはず。どこかでみかんにストレスがあると考えました」。
一つ一つ精査した結果、選果に原因があることに気付きます。選果時に行うブラシがけが原因ではないか? 今ではブラシがけを止め、自分たちで目視で選果し、“良いみかん”作りの最後のひと手間を惜しみません。

樹ごとに味を確認しながら収穫。みかんをたくさん食べて黄色くなった手。ちょっとうらやましい気もするけど……。
80コも入ったら一体どのくらいの重さになるのか? 収穫袋を下げて広い畑を練り歩く収穫作業は2人で行います。
みかんのストレスを与える原因と考えられるブラシがけを止め、一つ一つ目視で選果していきます。


「50年間“良いみかん”を目指してきました。その試行錯誤を一つ一つ積み重ねて、深めていくことがおもしろくもあり、俺のみかん作りで生き方そのものなんです」。

今は、温州みかんの出荷が終わり、ちょうど「しらぬい」と「ぽんかん」の出荷最盛期です。波村さんの“良いみかん”を一房食べれば、きっと笑顔になるはずです。


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※該当商品の取り扱いがない場合があります。

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。