岩手県久慈市山形町の生産者と二人三脚で、守り、育て、皆さんにお届けしてきた「山形村短角牛」が今、小さな芽吹きの時を迎えています。伝統的な飼育からの進化に向き合う、牛飼いたちの今をリポートします。
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多様化する牛肉の現状
朝の出かけ、「今夜はステーキよ」という母親からの一言に、胸を踊らせて家を出たなんて思い出はありませんか? そんなことは昔の話? 時代は変われど、常に〝ごちそう〞だった牛肉は、いつの日かもっとも身近な肉の一つになっています。特に近年の〝肉ブーム〞は目覚ましいものがあり、街を歩けば、牛丼、ステーキ、肉バルと、まさに肉食街道まっしぐらです。
牛肉の消費量の増加には、食の多様化に合わせた輸入牛肉の増加も一因でしょう。2014年の牛肉の供給量は輸入が60%(※)を占め、2019年に合意された日米貿易協定により関税が引き下げられると、アメリカ産牛肉は現在の26.6%から2033年の9%まで段階的に関税が下がり、消費価格では今よりも2割以上安くなると言われています。それらの牛肉の多くは、遺伝子組み替えトウモロコシなどを使用した濃厚飼料を大量に与え、成長を促すホルモン剤により効率よく育てられた肉牛のものでもあるとされています。また、和牛人気が世界的に広がり、和牛受精卵の国外への不正持ち出し事件も複数回発生しています。遺伝子資源の保護体制や知的財産としての位置付けが不十分であることが浮き彫りとなり、畜産業界のみならず、大きなニュースとなって世間を騒がせたのは記憶に新しいことでしょう。こうして多様化していく牛肉の世界ですが、岩手県久慈市の山奥にある山形町(旧山形村)では、昔と変わらない方法で、幻ともいわれる和牛「日本短角種」を育てる牛飼いたちがいます。
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伝統を守りつつ、進化する短角牛
「生まれた時から短角牛と一緒。小さい頃は住んでいるところの3分の1が短角牛の牛舎で、冬、お風呂に入っていると短角牛が顔を出す、夏は畑一面に冬場の飼料となるトウモロコシ(デントコーン)が植わっていて、まさに人と牛が一緒に暮らしていました」と話すのは、山形村短角牛肥育部会の部会長・中屋敷稔さん。南部牛をルーツに持ち、かつては塩の運搬・使役に活用されてきた短角牛と、じつに5代にわたり歩みをともにしてきた牛飼いの一人です。
現在13名の生産者で構成されている山形村短角牛肥育部会では、それぞれが独自に工夫を凝らし、安心でおいしい牛肉を生産していますが、春から夏は野山に牛を放牧し、冬は里の牛舎で育てる「夏山冬里方式」の伝統は守り、赤身主体の力強いうまみが特徴の短角牛を育てています。
「餌と水が大事だと思う」と、発酵米を手に話すのは落安兼雄さん。「地域で育てたお米を2カ月発酵させて作った飼料で、肉の味がよくなる。甘くなるよ。動物は人間のようにしゃべれないけれど、発酵食品を食べると体の調子が良くなるのが分かる。水も自分で300〜400m上から引いた水をあげてるんだよ」。
干し草を牛にあげていた上村智聡さんは、「山から下りてきたばかりの牛は、はじめのうちは山で食べていた草と似た干し草で胃を慣らしてあげます」と語り、山形町のもう一つの名産品である炭を飼料に加えている三上文男さんは、「大地を守る会の炭焼きツアーイベントで、林学博士の岸本定吉先生(故)が教えてくれて、整腸剤として炭をあげるようになったんだよね。体調が悪い時に炭を増やしてあげると元気になるよ」と牛の健康管理に余念がありません。各生産者の工夫により、おいしい短角牛を育てる努力がなされているのです。
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牛飼いが描く未来予想図
より安心でおいしい牛肉を追究したい。その想いから、実験や試食を繰り返している山形村短角牛肥育部会。4年前に部会長となった中屋敷さんをはじめ、中堅生産者たちの積極的な取り組みにより、都市部のレストランでの評価も多く得ています。また、「短角牛は未来に受け継ぐべき牛である」として、岩手県農業研究センターと東北大学・宮城大学が共同で、300頭以上の短角牛の遺伝子と食味の調査・研究を昨年から始めており、大地を守る会もサンプル提供に協力しています。
「東京で一度働いた後、東日本大震災の何年か前に山形町に戻ってきたら、地元の風景が変わっていて愕然とし、さみしく思いました。短角牛の生産者が減ったり、黒毛和牛も飼わないと経営が成り立たなかったりという状況がありました。それでも皆、短角牛を手放すことはしなかった。やっぱり思いがあるからなんです。この『山形村短角牛』、この地域の振興のため、改めて『俺たちの山形村短角牛』を作りたいと感じています。生産者としては、よりおいしい短角牛を育てるため、飼料の配合や肉質の統一化などに取り組んでいきたいです」。牛肉の現状に不安が募る今こそ、伝統を守りつつ進化し、短角牛ならではの力強いおいしさをもっと伝えていく。それが未来の山形村短角牛を作るのだということに気付いたと言う中屋敷さんたち生産者。伝統の牛飼いのプライドがこれから日の目を見る時代が来ているのかもしれません。皆さんも一口ごとに、古くて新しい山形村短角牛のうまみを味わってみてください。
※ 農林水産省「牛肉の供給量(2015年)」
【コラム】飼料も輸入し続ける日本
近年、牛肉そのものの輸入がニュースによくなりますが、国内で飼育する牛の飼料も日本は輸入し続けています。家畜の飼料の自給率は26%、穀類である濃厚飼料にいたってはさらに低い13%となっています。代表的な穀類のトウモロコ シの輸入国は、約70%を占めるアメリカに続いてブラジル(※1)。一方、アメリカにおける遺伝子組み換えトウモロコシの栽培率は88%で(※2)、私たちは遺伝子組み換え作物も避けて通れない状況に置かれています。
※1 農林水産省「飼料をめぐる情勢(2020年1月)」
※2 農林水産省「遺伝子組み換え農作物の現状について」
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※該当商品の取り扱いがない場合があります。