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受け継がれる由比の味

【NEWS大地を守る6月号】郷愁の練り物店

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地元のお客さんが顔を出したり、配達車が行き交ったりと、のどかな雰囲気の中に賑わいも見せる店頭。

旧東海道にのれんを構えるいちうろこ(静岡県静岡市)。昔ながらの練り物が少なくなった今でも、国産・地元産の魚を使い、無添加で練り物を作り続けています。創業1818年から伝わる、練り物の今昔物語をご紹介します。

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魚の味が消えていった練り物

駿河湾に突き出すようにそびえ立つ山の裾にある薩埵(さった)峠。そこから見える風景は、浮世絵師・歌川広重による『東海道五十三次』に描かれています。急勾配の山道を下れば、旧東海道・由比(ゆい)宿に。この土地でのれんを構えるのが、創業1818年から続く練り物店・いちうろこ(静岡県静岡市)です。

駿河湾と富士山が一望できる薩埵(さった)峠からの風景は、江戸時代の浮世絵『東海道五十三次』に描かれ、今も変わらぬ様相を見せています。
東海道五十三次の16番目の宿場町として栄えた由比(ゆい)宿の面影を残す旧東海道。


「昔は前浜で獲れた魚を使って、竹輪だと魚のすり身を竹の棒に巻き付けて炭火にかざして、一本一本様子を見ながら手でひっくり返して焼いていました。私も小学生の頃から手伝っていましたね」。そう話すのは、いちうろこの9代目・佐野敏夫さんです。

いちうろこの9代目・佐野敏夫さん(右)、10代目で息子の俊介さん(中央)、俊介さんの妻・真由美さん(左)。


海に囲まれた日本には各地に、漁業とともに練り物作りがありました。高度経済成長期以降になると、練り物も安く、多く、早く作られるようになっていきました。リン酸塩入りの輸入すり身に、植物たんぱくを多く使用し、アミノ酸等などで味を付けるようになったのです。

「実は添加物を入れて練り物を作ったこともあるのですが、魚の味は失われて、昔から食べていた練り物の味とはほど遠く、まったくおいしいとは感じませんでした。自分で作るなら昔ながらの味、〝本物の味〞をお届けしたいと思い、無添加での練り物作りを続けてきました」。いちうろこは、今でこそ100%地元の魚とはいかないまでも、国産無添加の原料にこだわり、港町の原風景に欠かせない小さな練り物店を営んでいます。

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昔ながらの確かな仕事

「練り物屋は朝が早いんです」と言う佐野さんたちが工場(こうば)に入ったのは朝7時前。北海道産スケトウダラのすり身にカツオだし、発酵調味料「味の母」、塩、砂糖、馬鈴薯でん粉を加えて混ぜ、石臼で練り上げます。「この石臼練りで魚の粘りが出て、コシを生み出します」とは10代目で息子の俊介さん。昨今の主流は、原料すり身にもともと添加されているリン酸塩の作用で鮮度ひいては弾力が保たれるため、石臼でしっかりと練り上げることは少なくなりました。

竹輪を焼く市川匡さんは、作業場を右に左に休む間もなく動いています。「すり身を鉄の棒に巻き付けているのですが、厚すぎると焼いた時に割れてしまいます。ちょうどいい厚さで巻き付けるには経験と勘が必要で、こまめに機械を調節します。同じく焼きの工程でも、火加減の調節は蓋の開け閉めで行っていて、機械といっても40年使い続けているこの〝相棒〞を使いこなすのは、やはり職人技なのかもしれませんね」。焼き上がった竹輪を口にして仕上がりを確認する市川さんと〝相棒〞は、一心同体で働いていました。

一般では全自動の機械が多くなりつつある中、いちうろこでは人間の勘と手を使う昔ながらの機械を今でも愛用しています。
竹輪の焼き具合を調節する時は、木の札を機械に挟んで蓋の高さを変えます。この火加減の調節は勘を使った職人技。
焼き具合を見るのは、人が行う大事な仕事の一つ。担当の市川さんは動き回りながらも、常に焼き具合を見ています。


由比といえば桜えび。日本ではほぼ駿河湾でしか漁獲されないという桜えびを使った、揚げ蒲鉾も作っています。粉末にした桜えびを混ぜ込んだすり身を、50年働く松永茂さんが木べらを使って木枠に入れていき、表面にあしらう桜えびは一尾ずつ手で乗せます。こうして型どりした生地は、コシを出すために一晩寝かせた後、非遺伝子組み換えのなたね油でこんがりとしたきつね色に揚げます。

由比の名産・桜えびを使った揚げ蒲鉾は、一尾ずつ形も大きさも違う桜えびを無駄なく綺麗にあしらうため、手で乗せていきます。


その隣りでは、石臼で黒い色のすり身が練られていました。「駿河湾産のいわしを骨ごと練り上げて、黒はんぺんにします」と俊介さん。黒はんぺんとは、主にいわしをすりつぶしてゆでた静岡名物の練り物。湯気に包まれながら、松永さんが静かにゆで上げていきます。てきぱきと、しかし丁寧に、今日も練り物作りが続けられています。

魚のすり身を練り上げるのに欠かせない伝統の石臼練り。
ゆで上がると上に浮いてくる黒はんぺん。

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練り物を継承するために

効率重視で大量生産が行われている今、原料となるスケトウダラの漁獲量も、小さな練り物店も減っています。そんな中、佐野さんは練り物の未来を考えると、昔のように前浜に揚った魚を上手に使ってくことが必要だと言います。「竹輪にサンマ、黒はんぺんにカツオ、桜えびの触覚を粉にして使ったり、釜揚げにした時に出る桜えびのだし汁も活用したりね。昔、獲れた魚を無駄なく練り物にしたように、もっと柔軟に、かつ大切に魚と向き合うことで、おいしくて楽しい練り物の未来が開けると思います」。

店頭で黒はんぺんのフライをいただきました。その味はまるでいわしフライ。「練り物は魚ですから」と佐野さんはにこやかな笑顔です。

静岡でよく食べられている黒はんぺんのフライは、パン粉を付けて揚げるだけ。ボリュームもしっかり。ぜひお試しを。
「輪っかが残ると少しかわいいでしょう」とは、竹輪料理を作ってくださったお店担当の奈良ルリ子さん。揚げても、卵でとじても……何でもよし。食卓やお弁当などに活躍します。


皆さん、魚、食べていますか? 魚を調理するのが難しいと感じる時、練り物を炒めたり揚げたりと、佐野さんが言うように、自由な発想で楽しんでみてください。〝本物〞の練り物はきちんと魚の味。生産者も私たちも楽しむことで、練り物の未来は開けるのかもしれません。


コラム原料に含まれる見えない食品添加物
一般でよく見かける安価な練り物には、輸入すり身が多く使用され、そのすり身にはリン酸塩などの食品添加物がすでに添加されていることがほとんどです。リン酸塩は保水性を保ち、保存性を高める、練り物作りにはまさに万能な食品添加物。生産者に聞くと、無添加の原料すり身を探すことは難しく、ましては国産となると大変希少なものとなっているそうです。また、一括表示ラベルでは、原料の原料(二次原料)までを表示しなければならない法的義務はなく、ラベルを見ても原料に含まれる食品添加物を確認することはできません。


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大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。