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継承される札幌黄

【NEWS大地を守る10月号】種、花開く

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「ねぎ坊主」と呼ばれる小さな白い花の束は秋になると、黄金色に輝き“2度目の花”を咲かせ、新しい種を産み落とす。

秋に収穫された在来野菜「札幌黄 (さっぽろき)/玉ねぎ」の種。黄金色となった花に守られた種が、また次の命を生み出します。種を採り、守り、栽培し続ける大作幸一(おおさくこいち)さん・淳史さん(北海道札幌市)を訪ねました。

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次世代へ種をつなぐ

カサカサカサ、サッサッ。枯れた花や茎を種採り機で取り除き、さらにふるいにかけて種だけを集めていく。祖父の時代に石を積み上げて建てた石倉は、昔は馬小屋でしたが、今は在来作物の「札幌黄(玉ねぎ)」の種採りのために使われています。開いた扉から差し込む銀世界の光のもと行われる、次の世代へ種をつなぐ〝神秘的〞な作業。「花殻を取ると綺麗になるでしょう。これが俺の種採りの最後の仕事さ」とは大作幸一さん(北海道札幌市)。

「この石倉には札幌黄のすごさが秘められているからね」と大作幸一さん。代々、種を採り、つないできたその光景は神秘的。

「種採りは父が担当しています。最近は体調があまりよくない時もあるけど、種採りをしにここに来ると元気になるんですよ」と話すのは息子の淳史さん。「花殻を取って種だけにするのは、種採りの作業では最後の仕事だけど、大作家の札幌黄作りにとっては最初の仕事になります。こうして100年以上、種を採っては播いてきました」と話が続きます。

残っている花殻はさらにふるいにかけて取り除いていきます。
秋の11月と言えども、扉の外は銀世界。キンと張り詰めた冷たい空気の中、種を集め続ける大作さん。
最後は葉書の先端を使い、花殻を一つ一つ取って種だけにします。

「札幌黄」は、日本の玉ねぎ栽培発祥の地・北海道札幌に伝わる在来作物です。「在来作物」とは、その地域で世代を超えて「種採りと栽培」が続けられ、その風土に適応した作物のこと。一般品種と違い、地域ごとに伝わる個性豊かな味や形が特徴です。在来作物がその個性を次世代につなぐのに対して、一代交配種(F1種)は、形が揃って病気にも強く、また味にくせがなく食べやすいとされますが、次世代にその性質が伝わらない〝一代限りの種〞です。現在、日本で栽培されている野菜のほとんどはF1種。F1種はその栽培のしやすさと安定の品質で、生産者ひいては消費者の生活を支えていますが、一方で在来作物を誰も栽培しなくなれば、その作物はあっという間にこの世界から消えてしまうことになります。「札幌黄は種採りも栽培も大変だけど、他の玉ねぎとは味がぜんぜん違います。肉厚で香りがよく、加熱すると甘味が強く、味が濃くなる。じつは生だととても辛いんですよ。その辛みが加熱すると甘味に変化するんです」と淳史さん。その味に惚れ込む一方で、「1回でも種を採らなかったとしたら、その種は途絶えて、もう大作家の札幌黄ではなくなってしまいます。ずっと種をつないでいるという誇りをかけて種を採り続けています」そんな想いを丁寧に話してくれる淳史さんに、種採りが伝えられたのは20歳の頃。まるで大作家に生まれた宿命であるかのように種採りの伝統を大切に守ってきました。

F1種の台頭や公害問題などがあった激動の時代に、大作さんは種採りも有機農業も守り続けてきました。

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種採りと草取り 大作家の札幌黄

「種採りはまず前の年に選抜しておいた札幌黄をそのまま4月中旬に畑に植えます。生長すると長ねぎのような緑の葉の上に、『ねぎ坊主』と呼ばれる、小さな白い花がポンポンのようにまとまって咲きます。それを8月下旬に刈り取って、石倉の中で乾燥させるんです。11月中旬、枯れた花が割れて種が見えたら、乾き具合を確認し、種採りの日を決めています。今ではこの辺りで種採りをしているのはうちを入れて4〜5軒ですね」。
採り終えた種は、次の年の春に播きます。F1種と比べると病気にかかりやすく、形も不揃いのものが多くても、大作家では有機農業で育てています。「人が食べるものだから、やっぱり安心できる方がいいですよね。でも、農薬を使わないから草取りがとにかく大変。種採りに草取り、大変なことだらけ」。8月には玉ねぎを掘り出し、畑の上で乾燥、熟成させて9月頃に本収穫となります。こうしてまた翌年の種採り用の札幌黄が選抜され、未来へつなげられていくのです。

「去年は雨が少なくて玉が小さく、形が不揃いでした。今年はそれに比べると、8月の畑を見ている限りでは、玉も大きく形も揃い、肉厚も水分もよさそうです」と淳史さん。
札幌黄を食べて育った淳史さんは、「玉ねぎを食べるならやっぱり札幌黄」。加熱すると甘味が強く、味が濃くなるのが最大の特徴。

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個を尊重し、種を守る

今年6月、農家の自家採種(種採り)に制限が加わる「種苗法改正」(コラム参照)が国会で見送られました。種苗法改正案は、大作家の様に、在来種、固定種などを自家採種している生産者にも大きく影響を及ぼす可能性が指摘されています。淳史さんは種採りについて語ります。「F1種が登場して『まだ種採りなんてしてるのか』という声が聞こえてきても、これまでずっと父親が種採りの伝統を守ってきてくれました。今はまだ種採りを続けられても、これからいつ規制されるか分かりません。食、種、そして命の多様性を守るための法律が、企業の利益や特許を守るために使われている気がして。個性豊かな在来作物がなくなったら、作物は均一化されて面白みもありません。私は札幌黄の味が好きです。おいしい札幌黄を作り続けたい。そして皆さんもおいしく、大切に食べてもらえたら、それ以上は望みません」。札幌黄の種採りは、法改正などの危うさを含みながらも、淳史さんから次世代へこれからも継承されてくことでしょう。

大作幸一さん(右)、息子の淳史さん(中央)、淳史さんの妻・静さん(左)。
お爺さんの代からある大きな木も札幌黄の畑を見守っています。
大作家の定番、水を使わず札幌黄の水分だけで作る「札幌黄カレー」。オリーブオイルと塩をかけて丸ごとオーブンで焼いた、札幌黄のグリルも添えて。

在来作物を食べるということは、個を尊重し、種を守ること。そして何よりおいしくて、楽しい。一粒一粒の種を紡いで育てた、「札幌黄」を食べて、多種多様な命があふれる未来を想像してみませんか。


【コラム】種採りと「種苗法改正」の関係とは?
種苗法とは、植物の新品種の創作に対する保護を定めた法律です。その新品種を登録することで、育成する権利(育成者権)を占有することができます。種苗法の改正で一番懸念される点は、今までは登録品種であっても原則自由とされてきた農家の自家増殖が、許諾がなければできなくなり、実質的な自家増殖禁止になることです。また、新たに品種登録簿に記載された特性(特性表)で比較する制度が設けられることによって、侵害立証を行いやすくするとされています。そのことにより、在来種や固定種など、登録品種以外の品種を栽培していても、特性表の偶然の一致だけで育成者権を侵害している、と判定される可能性を否定できません。

※撮影は2019年7月に行いました。

北海道・大作さんの玉ねぎ(札幌黄)はこちら
※該当商品の取り扱いがない場合があります。

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。