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花香る純粋はちみつ

【NEWS大地を守る10月号】旅する養蜂家

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藤井養蜂場の3代目、社長・藤井高治さんと飛び交うハチたち。8月上旬、北海道・阿寒湖の近くの採蜜現場で。

花の開花を追って、九州から北海道へ。転地養蜂というスタイルで養蜂を続けている藤井養蜂場(福岡県朝倉市)の採蜜の現場を訪ねました。

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ミツバチと共に全国を旅して

林道から少し入った山中に、並ぶ巣箱。ミツバチたちがせっせと出たり入ったりしています。北海道、阿寒湖のほど近く。ここでハチたちは菩提樹の花の蜜を集めています。
「よう働きますよ、ハチは」
そう話すのは藤井養蜂場(福岡県朝倉市)の社長、藤井高治さん。ハチたちとこの地にやってきたのは6月の終わり頃です。4月には鹿児島・熊本でレンゲのはちみつの採蜜から始まり、5月には青森でりんご、6月には秋田でトチ・アカシアのはちみつの採蜜を経て、そして北海道へと旅してきました。このように、各地の花の開花の時期に合わせて場所を移り、ハチたちを移動させながら採蜜する養蜂のスタイルは、転地養蜂と呼ばれています。藤井養蜂場の創業は1909年。専業養蜂家として、藤井さんの父親の代から転地養蜂のスタイルを続けてきました。

撮影時は蕎麦のはちみつの採蜜。巣枠を引き抜く。ハチをふるい落とすにはコツがいる。
ハチを大人しくさせるために煙をかける。

採蜜に当たる10人ほどのメンバーは20代のフレッシュな若手から、70代のベテランまで。約半年の間、寝食を共にしながら、花を追って全国を移動します。大型トラック数台で、ハチも一緒にお引越し。そのハチの数は約2000群、6000万匹にもなると言います。

若手代表の4人組。養蜂業の未来を担う希望の星たちだ。

養蜂家の1日は朝早く始まります。早い時には明け方2時には起きて、巣箱のある森まで移動・準備をし、4時頃から採蜜を始めます。ハチたちは24時間営業。集めた花蜜を、夜のうちにバタバタと羽を動かし、水分を飛ばして濃縮することで、はちみつにしていきます。
昼を過ぎると、その日に集めた蜜が混ざるため、はちみつは薄くなります。朝のうちに採蜜をすることで、濃いはちみつを採ることができ、そしてその後も引き続きハチが働き続けるのだと言います。
採蜜の現場では、メンバーそれぞれに役割分担され、作業が進められていきます。巣箱には、巣枠と呼ばれる9枚の板が並んでいます。外した巣枠から、ロウで蓋をされた部分を切り落とし、遠心分離機にかけます。そうしてできたてのはちみつを集めたら、二重にした網で濾して、一斗缶に詰めていきます。

ミツバチは保存のためにはちみつの上に蜜蝋で蓋をする(通称ミツブタ)。これを切り取る作業はベテランが担当する。
遠心分離機にかけて、巣枠に溜まったはちみつを採る。
遠心分離機から流れ出てくるはちみつ。ミツブタなども一部混じった状態。
白と赤の網を二重にかけて濾し、異物を取り除く。重労働だ。

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ミツバチが作ったそのままのはちみつ

一連の流れは、原始的で、機械化はできない作業ばかり。生産部長を務める息子の幹久さん曰く、
「作業は祖父の時代からほとんど変わっていません。変わったのは、遠心分離機にモーターがついたぐらい」
ハチのテリトリーに上がり込んで作業をするため、テキパキと作業しないとハチが荒れてくるのだと言います。
「昔は手袋をしなかったから、1日に100カ所も200カ所も刺されましたよ」
と、なんでもないことのように藤井さんも話しますが、危険と隣り合わせな重労働です。

森に並べられた巣箱。周囲には熊よけの電柵が張られている。最盛期にはこうした設置場所を1日に8カ所も回って採蜜することもある。
白い蕎麦の花が咲いている蕎麦畑。ハチたちの仕事場だ。

ハチは特殊な生態を持つ生き物です。生涯産卵を続ける1匹の女王バチと、その子どもたちである、「働きバチ」の雌バチ、繁殖の役割を担う雄バチでコロニー(群)を形成して暮らします。働きバチは、その日齢によって役割が異なり、巣作りから子育て、掃除、餌場の偵察、採餌など、その名の通り様々な働きでコロニーを支えます。花の蜜を集めてくると羽ばたきで水分を蒸発させます。
こうしてできた自然のままのはちみつが「純粋はちみつ」です。純粋はちみつは、ミツバチが加工・貯蔵したそのままのものなので、元になった蜜源、花の種類によって、色も香りも味も異なります。例えばアカシアならさらっとして薄い色のはちみつに、菩提樹ならさわやかで黄金色のはちみつに、蕎麦なら濃く黒っぽい色のはちみつになり、黒糖のような風味がします。

数日前に採ったばかりの菩提樹のはちみつ。口に入れると風味が一気に広がる。

養蜂の現場は、自然とともにあります。農薬の影響、気候や環境の変化、そうしたものに真っ先に影響を受けてしまいます。

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花粉媒介の重要性

農薬の影響もありハチを失ったことが何度もありますが、長い間、農薬の養蜂への影響は「関連性がはっきりしない」とうやむやにされてきました。それでも県や国に何度も訴え続け、現在ではやっと、ハチを殺してはいけないという認識のもと、使用農薬や使用期間などの情報が共有されるようになりました。
それは、ハチが自然界、また農業で果たす花粉交配の役割の重要性が理解されてきた結果でもあります。ハチの花粉媒介による経済効果は国内で4700億円(※1)、世界では66兆円(※2)という試算があります。ハチなしには、多くの作物に実りが訪れないのです。

8月下旬に北海道の道東で咲き始める「オオハンゴンソウ」。

ハチを通じて、自然と共に生きてきた養蜂家たち。
「昔と比べて、春にはモンシロチョウが飛ばない。秋にはトンボも飛ばない。蜜が採れんようになりました」
藤井さんは危機感を示しますが、それでも少しでも多くはちみつを採れるよう工夫を重ねてきました。
藤井養蜂場の強みは、「ハチがいい」ことだと藤井さんは胸を張ります。採蜜が終わる秋以降は、ハチ作りの作業になります。翌年の採蜜用の女王バチを育てるのです。「ハチは子どもみたいなもんです」という藤井さんですが、育てているのはハチだけではありません。ここで修行し巣立っていった養蜂家が、国内外に200人以上います。

北海道に遠征しているメンバー。中央の2人が藤井高治さん・幹久さん親子。

養蜂を守り、ミツバチを守ること。それはすなわち自然を守ること。自然とともにある正直なはちみつ作りで作られたひとさじのはちみつは、口に入れた瞬間、強烈な風味とともに私たちに大事なことを訴えかけてくるようです。

※1 農業環境技術研究所の推定。(2016年)
※2 IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)による報告

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大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。