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三里塚闘争の記憶とともに

【NEWS大地を守る2月号】この空とさつまいも

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さつまいもの収穫に欠かせない農機ポテカルゴと三里塚酵素の会のみなさん。

千葉県成田市。かつてこの地では空港の建設をめぐり三里塚闘争が起きました。農地を守るために戦った先代たちの思いを今に継いで。さつまいもの生産者「三里塚酵素の会」を訪ねました。

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農地守るため戦った日

成田国際空港から飛び立った飛行機が、一機、また一機と空に航跡を残していきます。空を見上げると飛行機雲があちこちに。千葉県成田市大清水。空港にほど近い地に、「三里塚酵素の会」の生産者・堀越一仁さん(65)のさつまいも畑はあります。
穏やかに流れる冬の澄んだ空気に、その名残は微塵もありませんが、この土地はかつて「三里塚闘争」の舞台となった地です。
県有林と宮内庁の御料牧場、そして戦後に入植した開拓農民の土地だった一帯が、日本のインフラとなる新東京国際空港(現・成田国際空港)の建設地として突如閣議決定されたのは、1966(昭和41)年。
強権的に開港を進めようとした政府と、農地を守るべく立ち上がった地元住民が対立し、さらに学生運動をしていた学生たちが反対派に合流しました。
建設を巡って展開されたこの闘争は、成田闘争とも言われ、やがて死者を出すほどまでに激しさを増していきます。
空港問題が勃発した当時、堀越さんは小学校4年生。現在94歳になるお父さんの昭平さんとともに、20年前まで反対運動のさなかに身を置いてきました。闘争を描いたフィクション漫画「ぼくの村の話」(尾瀬アキラ・作)のモデルになったのも堀越さんたちのグループです。
現在、大地を守る会で販売させてもらっている堀越家のさつまいも。そのつながりの原点は、この頃に遡ります。
「大地ができるよりもずっと前からのつながりなんですよ」
と堀越さんは笑います。

数分おきに飛行機が離着陸する。
農業組合法人かんらん車代表理事の堀越一仁さん。

当時、反対運動に参加した学生たちが40〜50人、堀越さんの家に常駐していたと言います。その中の一人が、学生運動の指導者だった藤本敏夫でした。のちの大地を守る会・初代会長です。一方的な押し付けに屈せず、自分たちの農地を守る。そんな共通の思いがつながりの原点。大地を守る会の前身である「大地を守る市民の会」が設立される1975年よりもさらに前の話です。

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生かしながら休ませる

物理的な排除など実力行使を行う71年の強制代執行では機動隊との激しい衝突があり、54人が拘留され、農家の若い働き手がいなくなったと言います。作った作物を買ってもらう人を探さなければ、彼らが出てきたときに仕事がなくなってしまいます。生産者、消費者のネットワークを作る動きの中で、「三里塚微生物農法の会」が立ち上がり、のちに現在の「三里塚酵素の会」として独立しました。
「有機は誰に頼まれたわけでもない。 好きでやってる、趣味でやってるだけ」と堀越さんは言いますが、空港と国に翻弄された歴史とともに、堀越さんたちの有機農業は成長してきました。
今では息子の佑弥さんも一緒に働いているほか、干しいもや煎り落花生などの加工品を製造販売する会社・かんらん車での活動も同時に行なっています。

一仁さん(左)と父・昭平さん(中央)、息子の佑弥さん。

この日、撮影に集まってくれたのは「さつまいもチーム」でもある3組の若手農家の皆さん。親の代から農家だというご夫婦もいれば、5年前に就農したばかりのご夫婦も。堀越家の3世代を中心に、撮影中もにぎやかで笑いが絶えません。
「新しい生産者を増やしていかないといけない。先輩・後輩はあるけど、生産者は平等です」
と堀越さんはチームの関係性に胸を張ります。

カメラの前でおどけてくれた秋間さんご夫婦。 2000年から農業に携わっている。
親の代からの農業を継いだ池上さんご夫婦。
東城さんご夫婦は5年前に就農。

モンゴルから働きに来ている若者を社員にしたり、堆肥やコンポストについて学びたいという大学生を受け入れたり、堀越家はいまや地域のハブのような存在でもあるのです。
取材に訪れた12月下旬。すでにさつまいもの収穫は終わり、畑に芽を出していたのはからし菜です。近年猛威をふるっているさつまいもの基腐(もとぐされ)病を防ぐための対抗作物として植えているのだそう。
「こうして畑を生かしながら休ませるの。そうしないと畑が痩せていく一方だから。緑肥にもなる」
病気はどうしたってあるもの。大事なのは抵抗力があるかどうかだと堀越さんは言います。土が栄養失調状態にあるから、病気に負けてしまう。野菜も人間も同じことです。
畑の隣には大きな堆肥施設を構えています。土は試験場に出して成分を分析し、科学的なデータに基づいて、改良を重ねてきました。
「だってそうしねぇと土がどれだけお腹が空いてるかわかんねぇじゃん。腹いっぱいのところに入れすぎたら、腹いた起こすでしょう」

モンゴル出身の男性が社員として活躍している。選別されたさつまいもの根を切る作業中。
芋収穫機ポテカルゴを慣れた手つきで運転する堀越一仁さん。複数人が乗り、収穫から選別、コンテナ詰めまでこれ1台で行うことができる。

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とれたてよりも貯蔵後が甘い

貯蔵庫の中は湿度と温度が常に保たれている。湿度90%になるよう霧が吹き出す。

堀越さんが現在生産しているのは紅はるかとシルクスイートの2品種。収穫されたさつまいもたちは貯蔵倉庫で眠っていました。
野菜や果物は、とれたてで新鮮なものがおいしいというイメージがありますが、さつまいもの場合は異なります。
10月下旬から1か月ほどの間に収穫したさつまいもは、貯蔵庫で眠りにつきます。この間にでんぷんが糖化することによって、甘みが増すのです。
ケースが高く積まれた貯蔵庫の中は温度15〜16度、湿度90%近くに常に保たれています。昔は穴を掘って埋めたり、畳を巻いたりして貯蔵していましたが、8年前に新設したこの貯蔵庫のおかげで、年明けから初夏までという長期間にわたるさつまいもの安定供給が可能になりました。

焼きたての紅はるか。割るとしっとりした黄金色があらわれる。

シルクスイートは紅はるかに比べて硬さがあるので大学いもなどの料理にも向いていますが、紅はるかのオススメの食べ方は何と言っても焼きいも。
「蒸すよりも焼くほうがおいしい。水分が飛ぶから」
とお父さんも太鼓判を押します。水分を飛ばすには、時間をかけてじっくり焼くのがコツだそう。
焼きあがったばかりのホカホカの甘い焼き芋をいただきながら、空を見上げると、また一機、飛行機が飛んでいきました。

さつまいも」はこちら
※該当商品の取り扱いが無い場合があります。

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。