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小さな養豚場が育む命、家族の絆

【NEWS大地を守る8月号】黒豚の血を継いで

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生まれてまもない子豚たち。元気いっぱい、これからぐんぐん育ちます。

脂身の甘みと、きめ細かい肉質。「うまみこい豚」のおいしさの秘密は黒豚を50%以上かけ合わせているから。宮城県で養豚を営む、仙台黒豚会を訪ねました。

米作りと養豚の循環

宮城県登米市。市の中心を北上川が流れ、見渡す限り田園風景が広がります。ここでは、豊かな水環境の恵みを受け、古くから米作りが盛んに行われてきました。米に並んで畜産も盛んで、東北有数の家畜飼養頭数を誇る大産地です。仙台牛が有名ですが、養豚も負けてはいません。
ひと昔前まで、この辺りの米農家では、豚も飼育するのが一般的だったそうです。残飯を餌にして、堆肥は田んぼに還元する。そんな小さな循環がそれぞれの家庭の中にあった時代です。
もともと養豚が盛んだった宮城県。昭和42年の資料によれば、飼養戸数は37000戸で、飼養頭数が18万。平均すれば5頭ほどとなり、多くの農家が小規模で飼育していました。そこから令和3年には109戸まで飼養戸数が減りました。それでも飼養頭数は約20万あるので、大規模に効率よく大量生産する養豚場が増えたことがわかります。

30年一緒にやってきた

久保さんたちの豚舎は地域に4ヶ所。野生動物の侵入防止や消毒など、豚熱の感染対策が徹底されている。

1980年代、大地を守る会では、畜産事業部から独立した(株)大地牧場をグループ会社として持っていました。その理念に共感してくれる生産者として出会った仙台黒豚会とは、30年もの付き合い。
1992年に9軒の養豚・繁殖農家で始まった同会ですが、今では久保勇さん、伊藤冨美男さんの2軒だけとなってしまいました。
95年から同会の会長を務めてきた小原文夫さんが2020年末に亡くなり、現在は久保さんの息子の至勇さん(33)が会の代表を務めます。
久保さん親子が管理する豚舎を訪ねました。豚舎は登米市近辺に4カ所あり、それぞれに親豚舎、分娩離乳舎、肥育舎が並んでいます。分娩離乳舎にはまだ生まれたばかりの子豚たちが母豚と一緒に過ごしていました。
母親の飼養頭数は全部で80頭とそれほど多くないので、しっかり目も行き届きます。
飼料となるトウモロコシ、麦、大豆カスなどの穀物は非遺伝子組み換えのもの。飼料の高騰が続いて不安を抱えながらも、効率よりも味と安心を重視して豚たちを育てています。

30年前に9軒の農家で始まった仙台黒豚会も今では2軒に。右から久保勇さん、息子の至勇さん、伊藤冨美男さん。
飼料は非遺伝子組み換えのもの。トウモロコシ、麦、大豆カスなどが使われる。成長段階に合わせて配合が変わる。

効率優先になりつつある養豚業界

現在日本で流通している豚の多くは、LWDと呼ばれる三元豚の一種。ランドレース(L)と大ヨークシャー(W)と呼ばれる品種を掛け合わせたメス(LW)は、繁殖能力が高く、たくさん子どもを産む品種です。そこに、肉質に優れたデュロック(D)というオスを交配させます。生まれた子ども(LWD)は、発育がよく肥育日数は180日前後と効率が良いのです。
「(大量生産型の養豚は)一頭の親から何キロの肉を取れるか、という考え方なんです」と勇さんが説明してれます。さらに生産性を追求した「ハイブリッド豚」と呼ばれる品種の開発も進んでいると言います。通常、母豚には左右7個ずつ14のおっぱいがありますが、ハイブリッド豚は胴が長く、16〜18のおっぱいがあるのだそう。
仙台黒豚会の養豚は、こういった効率優先の養豚とは一線を画しています。

豚舎で豚の世話をする至勇さん。「養豚は、とにかく観察が大事」と父の勇さん

じっくり時間をかけて

仙台黒豚会の「大地うまみこい豚」は、バークシャー(B)と呼ばれる黒豚の血統が50%以上入っています。LWのメスにBのオスを掛け合わせると、LWBという子豚が生まれます。黒豚とのいわゆる「ハーフ」の子たちですが、毛の色はほとんどが白になるのだそう。
「味に旨みを出すのは黒豚なんです。脂が甘くてしつこくないし、肉質もきめ細かい」(勇さん)
味の良さには定評がある一方で、バークシャーは産子数が少なく、成長スピードも早くありません。肥育日数は210日ほどと、LWDと比べれば肉になるまでに1ヶ月長くかかるのです。純粋な黒豚(BB)では、手間がかかりすぎて値段が高くなってしまい、普段の食卓向きではありません。味と手に取りやすい価格の両方をバランスよく実現したのが、大地うまみこい豚なのです。
「バークシャーのお母さんは子煩悩なんです。お母さんに見えるところで子を鳴かせたりすると、怒って暴れるほどです」
そう言って子豚たちを眺めながら目を細める至勇さん。次男で、元々は違う仕事に就こうと考えていた至勇さんが養豚の世界に入ったのは、東日本大震災の後。地震が起きた直後は、電気もなく、水道も1週間断水するような状態で過ごしたと言います。
「ダンプで県外まで食料を買いに行ったりしてね。ああいう思いは二度としたくない。でも家族の輪が強くなったところはあるかもしれません」(勇さん)
その経験が、至勇さんに家業を継ぐことを決意させました。
後継者不足で廃業する養豚農家が多いなか、至勇さんの存在は仙台黒豚会の未来そのもの。勇さんと伊藤さん、そして天国の小原さんも、心強く思っているに違いありません。
家族の存在を強く意識している久保さん親子が、愛情を持って育て、自信を持って送り出す豚たち。命への感謝を込めて、味わってみませんか。

うまみこい豚になる豚たち。色は白いが、50%以上の黒豚の血統が入っている。
100%のバークシャー種。ちょうど換毛期で毛が抜けている最中。
生後30日未満の子豚。白い毛の子も黒い毛の子も、どちらも黒豚の血統が50%含まれている。
家業を継ぐと決めてこの世界に入り、10年が経った。

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大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。