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田んぼを見つめて食卓へつなぐ

【NEWS大地を守る11月号】米はどこから

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有機JAS認証制度の開始とともに先陣切って認証を取得した精米所・マゴメで精米された米。そろった美しい姿になるまでに何度もの選別と、それぞれの歩合に搗く精米作業が行われます。

稲から米へ。一粒5〜6㎜の小さな粒はその形を崩すことなく表面をまんべんなく磨かれ、白米となって私たちのもとに届きます。今回は米の産地と消費者の間にある「精米」の話。そこには、田んぼと向き合うありがたい姿がありました。

米に寄り添う精米の仕事

精米とは、玄米の表面を覆うぬかの層を削り取る工程をいいます。古くから「米搗(こめつ)き」と呼ばれるのは、杵で搗いて行っていた原始の精米の名残りで、3分づきとは3割、7分づきなら7割搗く(取り除く)という精米の割合を示します。
大地を守る会で扱う米は、約8割を東京都八王子市の「マゴメ」が手掛けています。そのつながりは1980年、大地を守る会が米の販売を始めたころに遡り、まだ有機米の概念がない時代から一緒に米農家に足を運び、安全な米作りを広げてきました。扱うのは有機米と減農薬米のみという数少ない精米所です。
米が実る秋。産地の多くは稲刈りと脱穀の後、米のまわりのかたい籾殻を除く籾すりまでを行い、玄米の状態で出荷。この後をマゴメが担い、温度管理された貯蔵庫で保管し、それぞれの歩合に精米します。
「北海道の米は皮が厚くて、新潟のは薄いよ。曇りが多いと厚くなって、暖かいと薄いこともある。洋服みたいだよね」と話すのは、代表を務める馬込和明さん。
この日は馬込さん、小雨混じりの北海道の道央をまわり、生産者グループ・北斗会の産地を訪ねました。有機栽培に挑戦中の生産者3カ所を含め、1日で7カ所です。
東京との気温差約20℃という寒さの中、馬込さんが洋服にたとえる〝皮〞とは、籾殻や玄米のぬか層のこと。気温に応じて厚着や薄着になるのかと聞くと、「今年みたいにうんと暑いと逆に籾殻が厚いこともある。暑さから身を守る、というのもあるかもしれないよね」と、米を深く考えた答えが返ってきます。

マゴメの代表・馬込和明さん(73歳・左)と北斗会の生産者、石坂寿浩さん(53歳・右)。「馬込さんは有機米にいち早く取り組んだ第一人者、名付けるなら"有機の仙人"かな」と、石坂さん。3町から始めた有機米の圃場は20年弱で20町(東京ドーム約4コ分)に。畔にはシロツメクサが青々と茂ります。

精米は単に機械を通すだけではありません。その年、その土地の気温や湿度で変わる米の状態を見て、圧力や回数を加減して行われます。
「玄米の色も、北海道のは黒っぽいよ。人間だって色白な人がいるようにさ。米もそれぞれだよね」と言い、馬込さんが見ているのは、「米の個性」。初夏の田植えに秋の稲刈りと、産地をまわり、苗を見て稲穂に触れ、精米に生かします。米を見守る目線で、「やわらかければゆるく2回、かたければ強くね」と言うように、個性に寄り添う精米を行っています。

今年から農薬に頼らない栽培に挑戦している北斗会の金田修一さん(58歳・左)。籾米の様子を2人で確かめます。
金田さんの籾米。天日干しで乾燥させる稲架掛けの自然さを目指して、低温乾燥に挑戦しています。通常よりも低い30℃の風をゆっくり2 ~ 3日送り続けます。
ごはんおかわりOKのカフェも営む高橋さんの新米、ゆめぴりかは甘くもっちり。籾殻を炭化させて土壌改良に取り組んでいます。
有機認証取得に向け家族でがんばる安田さん一家。左から長男・幸市さん(39歳)、次男・直幸さん(37歳)、父・伸幸さん(68歳)。

農家さんががんばってるから

八王子市に有機と減農薬の2カ所あるマゴメの精米所。中に入ると、天井近くまで米袋が積み上げられています。隣の部屋では、精米中の機械音と空気いっぱいに満ちたぬかの香り。壁を隔てて隣では精米したての米が袋に詰められています。
マゴメで扱う米は産地と品種で50以上。分づき米や胚芽米にも精米するため相当な数になります。種類は膨大でも1回ごとの精米量が少ないため、人力の作業が多くなります。精米の工程は、機械に玄米を投入する〝張り込み〞から始まりますが、その重さは1袋30㎏。コツをつかむまでは「腰がやられるよ」と言う重労働です。張り込まれた米はふるいにかけられるように何段階もの選別機を通ります。形や色で基準外の粒がはじかれるしくみ。途中で精米機を通り、袋詰めに進みます。
複雑にパイプが入り組んだ精米所の中で馬込さんは話します。
「農家さんたちがみんな、有機、減農薬ってがんばってるのに、使えないよね」と語るのは、精米所の消毒用薬剤のこと。一般的な精米所では、燻蒸(くんじょう)と呼ばれる消毒が行われることがあります。それは害虫を駆除するための薬剤を、煙で機器に行きわたらせる方法です。代わりにマゴメで行うのは、米の粉塵を風圧で飛ばして布で拭う毎日の掃除。「ぬかのいい香りに虫が寄らないようにね」。
人間がおいしいと思うものには、ほかの生き物も集まります。米農家が安全な米を届けるために、草取りや虫退治に勤しむように、精米の現場でも、同様に奮闘しています。

奥に見えるのが「フレコン」と呼ばれる1トン単位の袋。精米所では30㎏ずつの袋約34本にばらします。これもまた力仕事。
有機米の精米所内、選別機の奥にある精米機。管を継ぎ足して今の形になりました。
米袋をおろして玄米を投入します。足元の床に四角い穴があり、そこが精米の入口。

気持ちをでっかく持つ

遠く山々を望む田んぼの稲が一面倒伏しています。北海道東神楽町、北斗会の圃場での様子です。これらは初夏の低温で下部が生育不良となり、夏の高温で上部が育ちすぎたことが原因。頭が重くなった稲が台風で倒れてしまったのだそうです。

稲刈り直前の北斗会の圃場。手前の稲が倒れています。トラクターで稲を起こしながら収穫しますが、倒れている方向にしか刈れないうえに、泥が詰まって難航する作業です。

新潟県では、高温で発生する米の白濁が多く、「新潟コシヒカリ7割が3等米」と言う衝撃的なニュースが届いています。カメムシの被害も見られ、養分を吸われて粒が黒く変色。馬込さんの精米作業でも、1俵に2㎏の被害米を取り除きました。
「昼間暑くて夜涼しいのが稲にはちょうどいい。でも今年は夜も暑かったよね。人間はクーラーかけて寝たけどさ、稲はクーラー使えないもん。農家さんたちはぬるくなった田んぼに水を入れたり、早めに刈り取ったり、やることをやった。それでもひどいところは規格外もある。聞いたことがないよ」と馬込さん。
今年7月、日本の平均気温が統計開始以降で1位になるなど大変暑い夏を過ごしました。異常気象といわれて久しい昨今ですが、田んぼを見ると特に大きな影響を感じます。
馬込さんは言います。「自然ってそういうこと。われわれ人間は、作る方も食べる方も、気持ちをでっかく持っていきたいよね」。
農業は自然相手のもので、計算通りにはいきません。四季の恵みがもたらすおいしさは、良いときもあれば、悪いときもあるのが常。生産者の努力だけに頼るのではなく、継続して「食べる」という行為が応援となり、産地を、ひいては日本の食文化を支えることにつながります。
折しも新米の季節。今週はごはんを何膳食べたでしょうか。米一粒が届くまでの手間を思い、感謝しながら味わいたいと感じます。

<COLUMN>暑かった夏、新米への影響は?

今年の夏の猛暑が新米に影響しています。
通常、精米後の白米の色は白っぽい半透明ですが、今年は例年に比べ白濁した米が多く見られます。もち米のような白い色というとお分かりいただけるでしょうか。これは「シラタ」と呼ばれ、米が成熟する段階で天候の影響を受けると発生するといわれます。
大地を守る会で食味検査を行ったところ、味に影響はありませんでしたが、炊き上がりが少しやわらかめになりました。米を研ぐ際はやさしく、水加減を通常より少なめに調整してください。今年は異例の天候状況とご理解いただけますと幸いです。

― 炊飯のコツ ―
*炊く際はやさしく洗米し、浸水時間は30分程度にしてください。
*水の量は通常より10%程度少なめにしてください。

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大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。