せっかく素材にこだわった日々の食事なら、美味しく食べてきっちり栄養になってほしいもの。そのために整えたいのが「腸内環境」。最近では免疫機能の改善にも役立つといわれ、特に注目を集めています。そんな健康志向を背景に、日本でも消費が急増しているのがヨーグルトです。
（写真提供：デンマークヨーグルト）
今回、そのヨーグルトについてお話を伺ったのは、「株式会社デンマークヨーグルト」代表のイェンス H.イエンセンさん。社長業の傍ら、生まれ故郷であるデンマークの文化やライフスタイルを、料理家、文筆家として様々なメディアを通じて発信しています。
「毎日の生活にヨーグルトは欠かせない」というイェンセンさんにとって、ヨーグルトとは、その楽しみ方とは、一体どんなものなのでしょうか？
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ヨーロッパ屈指の酪農国デンマークのヨーグルト文化
ヨーグルトといえば「ブルガリア」、最近では「ギリシャ」が思い浮かびますが、実は日本で流通しているヨーグルトのほとんどが、デンマークの乳酸菌から作られたヨーグルトなんだとか。イェンセンさんは言います。
イェンセンさん「デンマークのヨーグルトはだいたい、牛乳パックと同じ、量は１Lで売っています」とのこと。
「日本のヨーグルトメーカーの多くが使っている乳酸菌は、デンマークのクリスチャン・ハンセンという会社のもの。乳酸菌をはじめとするその菌類のコレクションは20,000種類もあり、世界最大と言われています。それはやっぱりデンマークがヨーロッパでも指折りの酪農国で、発酵乳やチーズなど菌を使った食品が多いからでしょうね。日常生活でもヨーグルトをはじめとする乳製品は欠かせません。
日本の家庭用ヨーグルトはたいてい400～500mlのプラスチック容器で売られていますが、デンマークのスタンダードは牛乳パックと同じもの、量は1Lです。たくさん食べるから（笑）。大きなスープ皿のようなものに盛って、グラノーラやコーンフレークといったシリアルやフルーツなどの食物繊維をトッピングして、主に朝食に食べます。
でもそれ以外にも、ホイップクリームの代わりにケーキやタルトに添えたり、マヨネーズの代わりにショウガや練りごまを加えてドレッシングにしたり、さまざまな使い方をします。家族4人暮らしの我が家では、毎日1Lのヨーグルトがなくなりますね」
酪農文化が根強いデンマークでは、かつては自分の家で手作りの発酵乳を作っている家も多かったのだとか。そんな中には、普通のヨーグルトとは少し違いますが、ヨーグルトに似たおいしい発酵乳もあるそうです。
「僕の親の時代には、どこの家でも“チクメルク（Tykmælk）”を作っていました。熱して覚ました牛乳に、バターミルク（牛乳からバターを作った後に残る液体）と生クリームを加えて自然発酵させたもので、滑らかで少し強い酸味が特徴です。もうひとつは、発酵した牛乳からホエー（乳清）を取り除いて作る“イメール（Ymer）”。低脂肪でさっぱりとした口当たりです。このふたつはおそらくデンマークにしかないと思うので、ゆくゆくは商品化してみたい、きっと面白いものになるんじゃないかと思っています」
（写真提供：デンマークヨーグルト）
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自分にあった菌を選んで、腸内フローラを整える
さてヨーグルトの健康効果で、最近よく聞くのは「腸内フローラを整える」という言葉ですが、イェンスさん、そもそも「腸内フローラ」ってなんでしょうか。
「腸内には、1000種類100兆個の腸内細菌が住んでいると言われます。それが腸内の粘膜の襞にそれぞれに群生する様子を“花畑（フローラ）”に例えて、腸内フローラと呼びます。ヨーグルトには小腸のフローラを整える乳酸菌や、大腸の常在菌であるビフィズス菌が1mlあたり1000万個以上含まれています。だいたい1日100g（ミニカップ１つ）を目安に毎日食べ続けることで、腸内フローラの善玉菌と悪玉菌のバランスの改善に役立つと言われています」
そんな中でもここ数年増えているのが、「LB51株」「シロタ株」「BB536株」「SP株」など「株」が明記されている「機能性ヨーグルト」です。
「ヨーグルトには、ビフィズス菌、サーモフィルス菌、アシドフィルス菌、といった菌が主に使われることが多いですが、そうしたそれぞれの菌の中には、特定の症状の予防・改善の効果が期待できる“株”が発見されています。整腸作用のほかに、歯周病の予防、アトピー性皮膚炎や花粉症の改善、コレステロールの低下など、さまざまな健康効果が期待できるものもあります。
ただ、菌との相性で思ったよりも効果がないということもあるし、同じものを食べ続けると効果が半減するということもあります。2週間から1か月くらいを目安に続けてみて、体調の変化がないなと感じたら別のヨーグルトを試す、そんなふうにして自分に合ったものを探すのがいいかもしれません」
ちなみに、日本ではこんなに健康効果が追求されているヨーグルトですが、あまりに日常的に食べられているデンマークでは、そうしたことは話題にならないのだとか。健康のための「腸活」が意識されることは、ほとんどないそうです。
「日本も少し前の時代は、糠漬けや納豆、アルコール殺菌や加熱処理されていない生きた味噌などを多くとる“菌のある生活”をしていましたよね。でも食生活の変化によって、そうしたものをあまり食べなくなっている。簡単に手に入り生活の中にすぐ取り入れられる上においしいヨーグルトは、その代用としてすごくいいと思いますよ」
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ヨーグルトを使ったレシピで始める、おいしい「腸活」
ということで、簡単にできるヨーグルトを使ったレシピを教えていただきました。すぐに始められるおいしい「腸活」を、どうぞお楽しみくださいね～。
【Banan Yogurt / バナナヨーグルト】
- 無糖デンマークヨーグルト １００g
- バナナ １本
- メープルシロップ 少々
- ピーナツバター 小さじ２
- 小さく切ったバナナ、メープルシロップとヨーグルトをよく混ぜる。
- グラスにピーナツバターを入れて、その上に 1. を入れて、冷蔵庫で１時間ほど冷やす。
- ※お好みでグラノーラなどをトッピングしてもOK。
【Ristede Havregryn / オーツクランチ】
- オーツ １００g
- きび砂糖 大さじ１
- バター ２５g
- オーツと砂糖を良く混ぜあわせる。
- フライパンにバターを入れて火にかけ、溶けたら 1. を入れる。
- 弱火～中火で混ぜながら、きつね色になるまで30分ほど炒る。
- ※大量に作る場合はオーブンで。 2. を天板に広げ、150度に熱したオーブンで、時折混ぜながら30分ローストする。
【Tzatziki / ザツキ】
- 水切りヨーグルト １００g
- にんにく １片
- きゅうり １本塩
- ミント 適量
- 粗みじんにしたきゅうりに塩をして、水分が出てきたら軽く絞る。
- すりおろしたにんにく、水切りヨーグルト、 1. のきゅうり、ミントを混ぜ合わせて、冷蔵庫で１時間ほど冷やしてから食べる。
（取材・文）渥美志保
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イェンス H.イエンセン プロフィール
1977年デンマーク生まれ。ロンドン大学で日本語と言語学を学び、’02年に来日。
デンマーク大使館商務官、広報の仕事を経て、2013年より株式会社デンマークヨーグルト社長。
2010年には、デンマーク式コミュニティーガーデン「コロニヘーヴ」を日本に広める活動として、「日本コロニヘーヴ協会」を設立。
北欧の料理やデザイン、DIY など、手仕事の良さを感じられる北欧のライフスタイルを、さまざまなメディアを通じて発信している。自身がリノベーションを手がけた鎌倉の古民家に暮らす2児の父。
