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牛と人が共生する短角牛の里
朝4時。しとしとと降っていた雨が上がり、深みを増した緑の香りが牧野一面に立ち込めています。艶やかな赤褐色の牛たちは、穏やかに、でも黙々と草を食んでいます。ときより顔を上げ、連なる山々を見つめると、「もぉー」。精悍(せいかん)な鳴き声がこだまします。 ここは、岩手県久慈市山形町、かつての九戸郡山形村。面積の95%は山林で、平地が少なく田畑が作れない、かつ冬は雪に閉ざされる厳しい自然条件に合う、炭焼きや雑穀の栽培、牛の飼育などで暮らしを営んできました。江戸から明治にかけて、牛は荷物を運ぶ重要な働き手でもありました。東北地方の山間で生まれ育った在来種の南部牛は頑強で忍耐強く、特有の赤褐色から「赤べこ」と呼ばれ、人々に親しまれていました。明治、イギリス原産のショートホーン種と南部牛を交配して生まれたのが、「短角牛」という名で知られる、4種ある和牛の一つ「日本短角種」です。昔から短角牛が育てられている岩手県久慈市山形町は、まさに短角牛のふる里でもあります。【送料無料】おいしい・便利・安心がかなう宅配!まずはお得に、お試しセット1,980円!
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自然の摂理に沿って生きる
高く昇った太陽がじりじりと草木を照らすと、牛たちは木陰に身を寄せます。「暑い時はどうする?涼しい所に行くでしょ。牛さんたちも人間と一緒」。牛たちが自然と近寄ってくるのは、父親の代から短角牛一筋の、山形村短角牛肥育部会(岩手県久慈市)・柿木敏由貴さんです。12戸のメンバーが所属する山形村短角牛肥育部会は、主に東北地方で飼育される短角牛の中でも、独自の基準のもと「山形村短角牛」と名付けて育てています。 木陰での一休みを終え、山腹に出て行く牛たち。気の赴くままに生い茂る草を食み、子牛は母牛のお乳を一生懸命に吸っています。山形村短角牛の飼育方法は伝統の「夏山冬里」方式。春に「山上げ」という放牧を行い、牛たちは山で夏を過ごし、秋になると牛舎(里)に戻って冬を越します。 「牛さんは本来草を食べる動物。この放牧地では、おいしくなる時季の違いや植生の相性などを考えて、オーチャードグラスやイタリアンライグラスなど数種類の草を組み合わせて種を播く。海からの風『やませ』も吹くから、ミネラルもプラスされる。子牛は母牛のお乳だけで育って、山を下りる頃には約2・5倍の大きさになってるよ。山での放牧で、足・腰、そして胃も丈夫になる」。牛にとって当たり前の生き方ができる環境が、山と人により整えられています。 太陽の光を受けて眩しく映る緑の中を、子牛が走っています。ふと違う方向に目を向けると、大きめの牛がもう1頭の牛に覆いかぶさっています。「これが自然交配。夏に新しい命が宿って、冬に牛舎で出産を迎えます」と柿木さん。自然の摂理に沿って生きる牛たちは、逞しさを兼ね備えた悠々たる佇まいです。 「夏の放牧中に、冬に牛舎で与える飼料を育てる」と言う柿木さんが見せてくれたのは、牛舎の裏にある畑。「冬、牛さんのごはんになるとうもろこし。実だけでなく、葉や茎などすべてを乳酸発酵させて作る『デントコーンサイレージ』は、人間のごはんに例えると混ぜごはん。牛さんの胃の調子も整えてくれる」。その隣りには、干し草が一面に敷かれています。「干し終わったから、ロール状にして保管しようと思っていたけど、雨が降ってきたからまた乾かさないと」。飼料作りも〝自然に沿って〞です。 「牛さんの体調が悪い時は、地元の特産品でもある炭の粉をなめさせるよ。老廃物を吸収して外に出し、体調を整えてくれる」と話す柿木さんは、どこまでも牛の健康を気遣い、牛に合わせて生活しています。山形村短角牛の飼料は、サイレージや干し草など繊維質が豊富な粗飼料が中心で、すべてが非遺伝子組み換えのもの。各生産者の工夫で、素材や配合はさまざまです。【送料無料】おいしい・便利・安心がかなう宅配!まずはお得に、お試しセット1,980円!