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有機がやりたくてさんぶに来た

【NEWS大地を守る10月号】若き挑戦者たち

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右から吉田真也さん、林真里那さん、森亘さん、北村和大さん、浅野拓也さん、早崎良紀さん、松村光彦さん。

「新規就農者育成総合対策」で後継者への世代交代が進んでいる、さんぶ野菜ネットワーク(千葉県)。日々汗を流している若手農家のみなさんを訪ねました。

失敗するたび助けてもらう

「こういう葉っぱの症状が出たら、どうしてます?」
スマホの写真を見せながら先輩に相談しているのは北村和大さん(31)。先輩の森亘さん(43)が、「これは取っちゃっていいよ」などとアドバイスを返します。
二人は千葉県山武市を中心に野菜を生産する「さんぶ野菜ネットワーク」に所属する若手農家です。
北村さんは今年から独立したばかり。千葉市内で落花生やミニ冬瓜などの野菜を作っています。森さんは今年3年目ですが、最速で組合員に昇格した期待のホープです。

草取りに精を出す森さん。かつては東京でプロのミュージシャンだった。

北村さんは大学時代、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在し、農場に住み込みで働いた経験があります。その経験がきっかけで「食が幸福につながっている」と考えるようになったと言います。大学卒業後は、食に関連すIT関連会社の営業職に就きましたが、もっと直接「食」と関わる仕事がしたいと考えて農家に転身。神奈川県内のレタス農家で2年半働いた後、さんぶ野菜ネットワークとの出会いがあり加入しました。
今年の春から独立しましたが、何もかもが初めての事で作付け計画も試行錯誤。苗を一気に頼みすぎてしまったは、育苗ハウスを借りて置かせてもらったり、苗を他の生産者に買い取ってもらったり、失敗するたび、周りから助けてもらいました。
「春にはレタスを植えすぎて手が回らないほど忙しくなったり、その後の小松菜は少なすぎてすぐに無くなってしまった。もう少し作れば良かったと後悔しました。ズッキーニは全然大きくならず失敗してしまいました。」(北村さん)
いいときも喜びすぎず、ダメなときもへこみすぎず、なるべくフラットでいるように心がけているといいます。

林さん(右)は5年ほど別の農家で経験を積み、今年からさんぶへ。松村さん(中央)は会社員を辞め、現在独立2年目。畑を一から開墾しながら頑張っている。左が北村さん。

産地全体で育てる

さんぶ野菜ネットワークは、大地を守る会の売上高5位に入る主要産地。30年前から取引が続いてきた、長年のパートナーでもあります。トマト、里芋、根菜に葉もの、スイカなどを生産していますが、なんと言っても主力は人参です。
さんぶ野菜ネットワークの発足は1988年。山武農協内の有機部会として始まり、2005年に独立しました。現在は44戸の農家が出荷しています。
産地全体で後継者を育てていこう、という思いで「新規就農制度」を始めたのが2009年。師匠となるメンバーのもとで2年間研修を経た後に独立する制度です。
栽培について教えてもらえるだけではありません。
デビューしたばかりの新人農家にとって、出荷できる「売り先」があるのは何より安心できることだと言います。
「販売の心配をせずに良いものを作ることに集中できるということが自分に合っていると思います」(森さん)

吉田さんの畑のトマトが立派な実をつけていた。
里芋畑。背丈ほどの大きさに成長。

師匠と弟子が競い合う相乗効果

農薬や化学肥料に頼らない有機農業に長年取り組んできた実績と、こうした丁寧な育成制度に魅力を感じ、新規就農希望者は、縁もゆかりもないこの地にやってきます。これまで40人ほどの研修生を受け入れ、30数人が定着しています。
そうした仲間と切磋琢磨しているのは、親がすでにネットワークのメンバーで、その後継者となる若者たちです。
さんぶ野菜ネットワークの代表理事を務める吉田邦雄さんの家でも、世代交代が始まりつつあります。吉田さんの父が亡くなったことをきっかけに、長男・真也さん(26)が昨年から手伝うようになりました。
日が昇ってから沈むまで外で作業が続く毎日に、「想像以上の大変さ」とこぼしつつも、「わからないことがすぐ聞けるのは強み」(真也さん)と勉強の日々だと言います。

さんぶ野菜ネットワーク代表理事の吉田邦雄さん(左)と長男・真也さん(右)。
吉田さんは昨年、販売の仕事を辞めて家業を継ぐことに。
ハウスで作業する吉田代表理事。

浅野拓也さん(30)も吉田さんと同じく後継者の一人。父親の元で手伝いを始めて10年目。現在、浅野さんの父親の元で研修中の早崎良紀さん(32)とは良きライバルで一番の理解者です。3年前からは自分でも畑を借り、今は両方の畑で野菜を作っています。が、何年も土作りを続けてきて地力がある父の畑のように、始めからうまくはいきません。
「同じ品種で同じ作り方をしてもできるものが違う。悩みながらやっています。経営を自分でやってみて初めて気づくこともあります」(浅野さん)
同世代同士だけでなく、フレッシュな若手の存在はベテラン農家たちにもいい刺激を与えているようです。
「(森さんが)すごいよく草取りしてるんだよ。だから俺も刺激されてやってる」
と目を細めるのは、富谷亜喜博さん。北村さん、森さんの師匠でもあり、富谷さんの畑と森さんの畑は隣り合っているところがあります。
かつてはネットワーク全体で100品目以上を出荷していたこともありましたが、契約が取れる品目に絞ってきた結果、現在は60品目におさえています。ネットワークの事務局では、新規就農者には、人参や里芋、大根、小松菜などから始めることを勧めています。作っている先輩たちが多いので、助け合うことができ、生活の基盤にしやすいからです。めずらしい野菜は契約が取りづらく、うまくできても契約外の出荷では二束三文の値しかつきません。
「本当は、新規就農者が新しくチャレンジする野菜も応援して評価してもらえるような場があると嬉しい」(事務局の山本治代さん)
「作る人」が生活をかけてチャレンジを続ける一方で、「売る人」「食べる人」はその思いに応えることができているでしょうか。販売事業者、そして消費者として私たちに何ができるのか。農業を未来へとつなげる責任は、生産者だけのものではないはずなのです。

富谷さん(左)と研修中の林さん(右)。「どんな仕事もすぐ覚える」と林さんの仕事ぶりに富谷さんも太鼓判を押す。

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