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変化、変化で100年続く出雲蕎麦

【NEWS大地を守る12月号】蕎麦屋発・島根の明日

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本田商店社長の本田繁さん。仕入先であるJAしまね斐川地区本部の蕎麦畑にて。

100年を超える歴史を持つ出雲蕎麦の老舗、本田商店(島根県)。蕎麦を実の状態で仕入れ、自分たちで製粉し、麺にすることにこだわり続けてきました。変化をいとわない同店5代目社長が見据える、地域の未来、そして次世代の未来とは―。

挽きたての蕎麦の風味を

挽きたて、打ちたて、湯がきたて。おいしい蕎麦には〝三たて〞と呼ばれる鉄則があります。
三つのなかでも粉の挽きたてというのは、なかなか実現できることではありません。製粉屋にメーカーが粉を発注して仕入れて、製麺するのが一般的だからです。どうしてもタイムラグが生じます。
「弊社では蕎麦の実の状態で仕入れて保管をしています。商品を作るときにそれに合った実を自家製粉をして、タイムリーに商品にしているんです」
そう説明してくれたのは島根県雲南市で100年以上続いてきた出雲蕎麦の老舗・本田商店の社長で5代目の本田繁さん。
蕎麦の風味は抜けやすく、粉になっている状態の時間が長いほど風味は逃げていくのだそう。粉の状態を極力短くできるのが、自家製粉のメリットです。本田商店のように製粉から製麺までを自社で行うところは、全国でもめずらしいと言われています。

10月下旬、この日は収穫の作業の真っ最中。この地区では17名ほどが蕎麦を生産している。
実をつけた蕎麦を収穫していく。例年は種をまいてから2 ヶ月ほどで収穫できるが「今年は花が咲いている期間が長くて3 ヶ月ぐらいかかっている」とのこと。
自家製粉の様子。一度粗挽きした後に製粉し、その後2回ふるいにかける。


本田商店の蕎麦の特徴はそれだけではありません。
「生そばは保存をきかせるためにアルコールや調味酢などが入っていることが多いんです。そういったものが入っていると、袋を開けた時につんとした匂いがします。うちではそれを使用せずに作っているので、開けた時に蕎麦の香りがします。食べる前から『あ、おいしい蕎麦だな』とわかっていただけるはずです」
余計なものを使用せず、殺菌方法に独自のノウハウがあり、長期保存を可能にしました。大地を守る会の商品の場合、生蕎麦でも90日間の賞味期限を保証しています。さらに、貴重な島根県産の蕎麦粉だけを使った商品もあります。

改善重ねて生産性アップ

工場を案内してもらいました。中に入ると、蕎麦のいい香りが漂ってきます。
本田商店では、社員1人あたりの生産性にもこだわり、一体となって作業を見直し、改善を重ねてきました。改善によって得られた資源、人員を基に、そば以外にも生パスタの製造も始め、更なるおいしさを模索、追求しながら雇用を維持し続けています。
「変化・改善は、会社の文化として、常に社内に話をして、納得してもらってきました。他の会社と比べても、変化・改善に対してアクティブだし、スピードも早いと思いますよ」
社員が積極的に改善していくカルチャーの土台として、社長は従業員の給与や職場環境、働き方も大事にしています。同地域の食品業の一般的な求人に比べて高い給料を提示し、さらに有給休暇の消化率も80%を超えています。厚生労働省の調査によれば、全業種の平均有給休暇消化率は56・6%(令和2年)なので、比較してもかなり高い数字です。
「お休みの人がいたら、他の人が代わりにやる仕組みが必要になるので、〝誰でもできる化〞が進んでいくんです。自分の受け持ち以外についてもこうしたらいいんじゃないか、と改善に積極的に参加してくれます」
こうした改善の効果で高い利益率をキープしていますが、何から何まで効率重視というわけではありません。乾麺を作る際に麺を乾燥させる工程は、温風乾燥で時間を短縮する方法が一般的ですが、風味が抜けないように、冷風乾燥を守り続けています。

粉に塩水を混ぜてミキシングしたものを、シート状に伸ばしていく。
乾麺は1日かけて自然乾燥させる。この工程を温風乾燥にすれば時間はかからないが風味が抜けてしまう。
カットした後に包装し、蒸気で殺菌する。

自慢できる場つくりたい

守るべきものを守りながら、変化に対しては前向きに。その姿勢は、代々、本田商店に受け継がれてきたものでもあります。3代目の時代は、蕎麦も作っていましたが、メインはお菓子の問屋だったのだそう。安く量産する蕎麦を作っていた時代もありますが、4代目のときに、娘(本田社長の妹)のアトピーがひどかったことをきっかけに、余計なものを使用しない蕎麦作りに切り替えたそうです。自分自身も変化しながら、時代の要請にあわせて変えていく。それができたからこそ100年続く企業になったのは間違いありません。
そういう意味で、蕎麦にだけこだわり続ける気もない、と本田社長はとてもフレキシブルな考え方をしています。うどんやラーメンと比較し、蕎麦の消費量は10分の1程度にとどまっています。製麺業では山陰でナンバーワンの地位を誇りますが、まだまだ会社の認知度が低いことも課題として捉え、「変化」の真っ最中。
「例えば働く人たちの服装も、白衣ではなく、カフェっぽいユニフォームにできないか考えています」
話題になって、外から見る目が変われば、中の人の満足度も変わってくるはず、と社長は言います。
いま構想が進んでいるのは、工場周辺に観光施設を作ること。蕎麦を基点にしながらも、地域の特産品を楽しめる飲食スペースや売店など広く本田商店ブランドを体感できる華やかな場所にしたいと考えています。
「島根って華やかな場所がすごく少ないし、テレビでも話題になりません。県外に出て『どこ出身ですか?』と聞かれたときに、自信を持って答えられるかというと、田舎だし気後れしてしまう感じがある。若い人が県外に流出してしまっている現状もあります。だから『島根いいでしょう』って自慢できる場所を作りたいんです」
会社の将来だけでなく、地域の未来、次世代の未来も見据えて。5代目の挑戦は続いていきます。

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※該当商品の取り扱いが無い場合があります。

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。