<06>みんなで話そう!: 2010年12月アーカイブ
2010年12月27日
第20回北海道生産者会議報告
消費者理事の鈴木孝子です。自分のアトピーがきっかけで大地を守る会に入って10年。
神奈川県のはずれの南足柄市で、食料、エネルギーの自給を目指した農的な暮らしをしています。
好きなことは読書(目標、年に100冊。お風呂でがサイコー♪)、美術展めぐり(目標、年に20本)、
DVDを観ること(できるだけ1日1本)、カフェめぐりなどなど。
最近はジャズ、ボサノバボーカルに挑戦中 (^o^;
会員サークル「シキ・オリオーリ」や専門委員会「おさかな喰楽部」などでも活動しています。
たくさんの大地仲間が我が家の財産です。
*************************************************************************
そして、以下、鈴木理事の報告です。
雨続きの関東をあとにし、新千歳空港から電車に乗りかえ北広島駅に降り立つと、乾いて澄んだ空気が吹き抜けました。麦やジャガイモの広大な畑の先に続く地平線を見ると、北海道に来たのだという実感が湧いてきました。
7月15日~16日、札幌からほど近い北広島市で開かれた第20回北海道生産者会議に参加してきました。
一日目は北海道大学名誉教授・松永勝彦先生による講演―「森が消えれば海も死ぬ」。
森が荒れると河の水が減少し、ついには海にまで影響するというお話です。半世紀前まで、建築材や燃料として森の利用価値は高かったはずが、安い輸入材や石油に押されて需要が減ったために人工林の荒廃がすすみ、雨水を保水するという森の本来の機能が失われてしまいました。その結果、各地で水なし川が広がって、川や沿岸で砂漠化が拡大しているとのこと。これを食い止めるためには、森の手入れを行い、健全な森・川・海の繋がりを取り戻すことが重要と話す松永先生。例えば、間伐材を木材チップにし、農業で使うハウスの熱源とすれば、CO2の問題の解決策となるのではとのご提案でした。
森や海の話だけではなく、水がなくては成り立たたない農業を通じて、環境保全に取り組む大地を守る会の活動にも繋がり、海や山の恵みを毎日いただいている消費者としても考えさせられる問題です。国産材で家を建てるとか暖房には薪ストーブを使うなど、自分たちにもできることがあるかもしれないなどと、思いをめぐらせてしまいました。
講演の中で特に印象的だったのは、これからは食料不足の時代が来るという話。「世界では毎年8000万人の人口が増加している今、日本は食糧を輸入にばかり頼っていられない日がくる、自分ちの食べ物を自国でまかなえるようにすることが国の急務」とのことでした。やはり、国産のものを食べて生産者の皆さんを応援することが大事だと改めて実感します。
私たち消費者にとって、会議で生産者の皆さんの話を直に聞けることはとても貴重な経験です。産地ツアーやだいち交流会とは違った一面が見られることもあります。今回も素敵な生産者の皆さんとの出逢いがありました。
≪農業は良い家庭を作るのに理想的な仕事 小路健男さん≫
今回、会議の幹事をしてくださったのは、「北海道有機農業協同組合」さん。全国で初めての有機農業の専門農協です。代表理事の小路健男さんは若いころから市民運動に興味を持ち、大学進学をきっかけに北海道の土地に魅せられ、農業をはじめて27年。今はかぼちゃ、にんじん、じゃがいも、ごぼうなどを作っているとのこと。生産、物流のみならず、環境全体として有機的な活動をめざしているそうです。グローバル経済からは距離をおき、消費と生産を結ぶ大地を守る会の活動を目標の一つとしていきたいという熱いお話を聞き、なんだかジンときてしまいました。5人の子供のお父さんでもある小路さんは、農業という仕事は夫婦の関係や子育ても理想の形が実現できると言います。「有機以外はやるつもりない」ときっぱりと話す反面、優しい夫や父の顔も見せてくださいました。
≪自然をこわさない生き方をしたい。農業はその一部 亀川久美さん≫
唯一の女性生産者として参加してくださった亀川久美さんは佐賀県出身の元OLさん。積丹の高野健治さんのところで昨年4月から実習中だそうです。北海道での農業を夢見て土地を探しに来た折、泊まったホテルのとなりが高野さんの家だったのというのが初めての出逢い。高野さんからもらったカボチャがあまりにおいしく、なんて幸せになるカボチャだろうと感激し、即、弟子入り。そんな亀川さんに、高野さんは「仲良しこよしじゃないんだから、本気でやるんじゃなきゃダメ。最低2年はかかる」との言葉。それでも亀川さんの決意は固く、4月~11月は毎日早朝から深夜まで農作業に明け暮れる毎日で、実家に帰省する冬の間も、九州で開かれる農家研修会などに通っては研鑽をつんでいます。「大変だよ~といわれるけど、大変なのは承知の上。一度きりの人生を後悔しないためにも、不可能でないならやらない理由はない」と話す亀川さんは、同じ女性として輝いて見えました。「高野さんのところだから楽しい。全く見ず知らずの人間をポンと受け入れてくださった高野さんへの恩返しのためにもいい野菜を作りたい」。亀川さんの作る野菜は、きっと生命力に満ちておいしいに違いないと思います!
≪じゃがいもに似ていると言われるとうれしいんです 金井正さん≫
男爵
メークイン
全部あわせると20ha以上もある金井さんの畑のうち、ジャガイモは6.5ha。約200トンを収穫するそうです。「7月はじゃがいもの病気や天候のことが心配で心休まる暇がない。毎日天気予報を祈る気持ちで見ています」とのこと。最近ようやく満足のいくものが取れるようになったと話す金井さんです。
長いところではひと畝400mもある、終わりが見えない広大な畑。
毎日1時間以上かけてかけてまんべんなく見回り、下葉、葉の裏にてんとう虫などがいないかチェックします。
この日、朝4時起きで刈り取った雑草は堆肥の大事な材料。
雑草の山が二年後には・・・
堆肥の山に!
雑草は水をかけて発酵させ、切り返しを続け、2~3年かけて堆肥に。150トンの堆肥を作るために市で刈り取った雑草までもらって来るそう。
ジャガイモ畑で小休止中の藤田会長
地下77mから自噴する地下水が畑の中に。
参加者からもたくさんの質問が飛び交っていました。
私が生まれる前から働いているトラクター(45年もの!)
「農業は辛抱」と語る金井さんは、札幌のベッドタウンとして開発の危機にさらされる江別の農地を守りたいと、今なお耕作放棄地を買い取ります。
御歳77才のハーレー乗り!30年のキャリアです。
「37年の農業人生を支えてくれたのは家族。周囲の人からは理解されず、アウトサイダーのように思われてきたけれど、効率重視で経済優先の世の中が壊してしまった自然のサイクルを守りたいという考えは今も変わりません」。'生涯現役'という言葉がぴったりの金井さんです。
北海道の生産者の皆さんは、土地柄のせいか「思索する農家さん」が多いと感じました。生業として農業に携わっているだけではなく、「自分の生き方を模索した結果が有機農業」というお話をいろいろと聞くことができ、胸に沁みました。今回もたくさんの出逢いをありがとうございました。この秋の豊作をお祈りしています。
消費者理事・鈴木孝子
2010年12月16日
映画「玄牝」公開直前スペシャルトーク開催
うっしーこと牛島真也です。
河瀨直美監督の新作『玄牝』の渋谷ユーロスペースでの上映が、
2011年1月7日(金)まで延長になりました。
河瀨監督と言えば、デビュー作『萌の朱(もえのすざく)』で、97年カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞。
2007年には、『殯の森(もがりのもり)』で同映画祭グランプリを受賞するなど、日本を代表する映画監督です。
映画『玄牝』は、"自然分娩"を行なっている愛知県岡崎市の吉村医院と、そこに集う妊婦たちの様子を追ったドキュメンタリー。
河瀨監督自ら16mmフィルム・カメラをかつぎ、お産という繊細な瞬間を見つめました。
※くわしくはこちらをご覧ください↓
大地を守る会では、「大地を守る会35周年」と連動して、映画『玄牝』とコラボ企画をいろいろ実施してきました。
河瀨監督の作品に対する思いや伝えるメッセージの根幹には、「自然環境に調和した、生命を大切にする社会の実現」を目指し35年間活動を続けてきた大地を守る会と通じるテーマが流れています。
コラボ企画のひとつ、「大地を守る会presents 映画『玄牝』公開直前スペシャルトーク」が、10月28日(木)東京・青山のウィメンズプラザ・ホールで開催されました。
遅ればせながらご報告させていただきます。
映画『玄牝』のダイジェスト版を見た後、河瀨監督を囲んでのスペシャルトークというプログラム。
司会は、J-WAVE「ロハスサンデー」のナビゲーターとしてもお馴染みの丹羽順子さん。
トークゲストは、フードコーディネーターの根本きこさん。
当日は雨にもかかわらず、150人以上と多くの方にご参加いただきました。
出産をテーマにした映画ということもあり、女性(特にお子さま連れ)の方が目立ちました。
お三方のトーク、会場からの質問も盛り上がり、終了予定時間を30分ほど越えて終了。
ご来場いただいた方のアンケートもご好評のものが多かったです。
ご来場いただいた皆さま、ステージ上のお三方、本当にありがとうございました。
私も試写などで何回か見ましたが、男性の方にもぜひ見ていただきたい映画です。
最近は立ち会い出産なども一般的になってはきましたが、男性にとっては生まれるまでなかなか実感がわかないというのが正直なところです。
多くの男性がこの映画を見て、お産について考えるきっかけになってくれたらうれしく思います。
東京では、渋谷ユーロスペースで1月7日(金)まで公開中。
これから全国各地で公開されますので、お近くの劇場でぜひご覧ください。
くわしくは公式HPで。
大地を守る会事務局 牛島真也