2011年4月 4日アーカイブ
2011年4月 4日
答えのひとつは 畑にある
" 答えの一つは畑にある。
土や小さい生き物の浄化力を信じて 明日もがんばろう! "
阿部豊さん、コメント(3月28日付) 有り難うございます。
まったくその通りだね。
「土を損なう国は、国全体を損なう」
と言ったのはフランクリン・ルーズベルトだったっけ。
私たちの未来、人類の文明の行く末とまで言ってしまおうか、
その鍵を握るのは、土(土壌) の力と人の関わり方、になるように思う。
(写真右が阿部豊さん。左は桑原広明さん)
阿部さんの師匠、魚住道朗さんから頂いた
エアハルト・ヘニッヒ (ドイツの農業指導者、1906~1998年) の
『生きている土壌』(中村英司訳、農文協) を今読んでいるけど、
最初のほうにこんな一文がありました。
「 生命それ自体は共に終わりを迎えるのではない。
崩壊の過程の中から、「廃墟からの新しい生命」、
つまり、まさに肥沃な土壌が生まれてくるのだ! 」
有機農業は、進む危機の中にあって、いよいよ確かな道標としてある。
しかし火急的に求められている問題は、、、まさに今、であって、
これがつらい。
阿部さんからは、茨城大学の先生を呼んで測定した報告を頂いているので、
紹介したい。 詳細な説明は省略でごめんなさい。 ( ) 内はエビの注です。
本日、茨城大の助教の先生に来てもらい、放射線測定をしてもらいました。
結論から言うととてもいい知らせとなります。
測定にはGMサーベイメーターを使い、出てくる値は CPM という単位で、
放射線の通った跡をカウントしているもの。
通常時は空気中、食品ともに80が基本となるものです。
今回使った機種は原子力機関で一般的に使われている精密なものです。
結果からわかるのは、
べたがけやトンネルは影響を半分以下におさえる効果があるということ。
次に、洗って茹でてみた。
洗いは放射性物質の低減にとても有効。
さらに茹でるとホウレンソウでも普段の2倍(2分の1)
程度まで放射線を減らすことができ、まったく問題ないと思われる。
ここは消費者にも安心して食べてもらえる結果となった。
ちゃんと説明すれば支援先でも受け入れてくれるだろう。
(阿部さんは八郷の有機農家たちと一緒に、福島に支援物資を送っている)
今、土の上に薄~く放射性物質が降り積もってる。
つくば産総研のデータから類推すると、90%以上はヨウ素で、半減期8日。
ヨウ素は大量の降雨がない限り、植物も根から吸わないだろう。
数%がセシウムで、半減期30年。
セシウムはカリや炭を畑に入れれば60%以上植物が吸収するのを抑えられる。
つまり、普段どおりバランスのいい堆肥やぼかしなどを入れて作付すれば問題ないのでは。
気になる人は、カキガラやくん炭を多めに入れればいい。
当会がずっと測定サンプルを出している 「放射能汚染食品測定室」 に依頼した
ホウレンソウの比較試験でも、阿部さんと似たような結果が得られている。
ホウレンソウを洗うと、76%に減少(24%除去)、
洗った後に茹でて絞った状態で、53%に減少(47%除去)、となっている。
阿部さんからは、
放射性物質の暫定規制値についての、実に冷静な考察も寄せられている。
政府基準が適用されたとしても、
自分が納得して出荷できるかどうかが一番重要だし、
安心できると消費者に伝えることができるかも大切。
あの数字に納得しないまま振り回されるのも嫌なので、調べたのだと言う。
阿部さんはWHO(世界保健機構) やFAO(国際連合食糧農業機関)、
各国の輸入基準などをチェックした上で、こう考察された。
政府の食品衛生法の暫定基準は、国際基準と大きく外れてはいませんでした。
すべての基準のもとになるのが、国際放射線防護委員会(ICRP) の
年摂取限度量(ALI) の数字。飲食等による内部被ばくの場合、
たとえばヨウ素の場合、甲状腺への実効線量50ミリシーベルトが限度値。
その他の核種の場合、それぞれ5ミリシーベルト。
この元となる基準は、今までの放射線被ばくの実データやシュミレーションによって
算出されており、現在最も信頼されている数字。
日本の基準には独特の考え方が盛り込まれているので難解。
ヨウ素2000ベクレルの野菜を1年食べて内部被ばくしても
放射線限度の50ミリシーベルトには達しない。
この数字は野菜だけを考えて決められているのではないから。
計算にはいろんな統計資料が用いられており、
核種、年齢によってまた違う計算式になっている。
たとえばヨウ素の場合、成人が年間限度50ミリシーベルトに達するには、
ヨウ素が2000ベクレル含まれた野菜を227gずつ365日食べる。
ヨウ素が300ベクレル含まれた乳製品を105gずつ365日飲み続ける。
ヨウ素が300ベクレル含まれた水分を1.65リットルずつ365日取り入れる。
この3つの条件が合わさって、ようやく制限値の66%に達する。
つまり、かなりの悪条件が一年続くと健康を害する可能性が高まるということだ。
官邸、マスコミが 「ただちに健康は害しない」 というのは正しい。
わかったことは、あの基準はそれなりの根拠があるということ。
本当に 「ただちには健康を害しない」 ということだ。
2000ベクレルのホウレンソウを100g食べただけでは0.003ミリシーベルトしか
被ばくせず、しかも洗うと放射線は2分の1になる。
消費者が理解してくれるといいね。
(今年のだいち交流会・錦糸町会場で歌う阿部豊)
そう言いながらも、阿部さんが代表を務める 「頑固な野良の会」(茨城県石岡市) では、
県下一斉に出荷停止になったカキナだけでなく、
のらぼう菜、石岡高菜も自主判断で出荷を控えている。
「 あとから、消費者の皆さんが後悔することのないように、
生産者にとっても難しい判断です。 」
茨城からは、「オーガニックファームつくばの風」 代表の松岡尚孝さんからも
同様な文書が届いた。
群馬 「くらぶち草の会」 からは、県の検査結果が日々送られてくる。
こうやって、食べる人への責任を全うしようと、
できる限りの対処をしてくれる生産者がいてくれることは、
とても有り難いことではないだろうか。
土壌の力を育てる技術も、彼らの中にある。
ここで彼らを切り捨てるわけにはいかないと、切に思う。
リスクはゼロであるに越したことはない。
しかし、ゼロはもはや現実にはなくなってしまった。
ここで " 最低守るべきライン " を共通尺度として設定した以上、
それ以下は、よく洗う、生では食べない、など念のための防御をしながら、
普通に食べていただくしかない。
多数の意思で受け入れた文明の結果でもあるし。
怒りは、新たな文明設計へと結集させたい。