2013年9月 4日アーカイブ

2013年9月 4日

有機農業しかない!! だろう。

 

新規就農を支援しても、販路の開拓が難しい。

この悩みに特効薬はない。

前回の末尾の言葉はいかにも冷たいようだけど、

自分の経営規模やスタイルに合わせて考えるしかない。

例えば浅見さんたちのような多品種少量生産では、

個人・地域・直売所・地元の食品加工所といった相手がマッチする。

大地を守る会には仲間と共同での野菜セットか、

一定の生産量がある場合のみ単品オーダーが可能になる。

これが庄右衛門インゲンなら、

畑事情に合わせて出荷できる 「日本むかし野菜」 で受け入れ可能だ。

 

僕が言えることは、新規就農で

いきなり大きな流通組織に頼るというのは無理というか、

かえって危険だろうということだ。

地域を眺めてみてはどうか、可能性が見えてこないだろうか。

近場の地方都市に消費者はいないか、そんなはずはないだろう。

レストランやパン屋さんと連携して何か新しいモノや仕掛けが作れないか。

学校給食に交渉の余地はないか。

給食で採用されたなら、子供たちの食育を積極的にお手伝いしよう。

お年寄りのためにできることはないか・・・

見つめてみよう、地域を。 視野はちょっと広めに、異業種も含めて。

 

気候変動は激しくなっている。

TPP は仁義なき価格競争の世界をもたらしそうだ。

見えてくるのは食糧危機だというのも、頷ける。

そんな中で、この国の農業就業者はどんどんいなくなっている。

ピーク時に1,454万人いた農業者は、いまや239万人とされる。

16%にまで落ち込んだのだ。

しかもこの1年で、10万人以上減ったのをご存知だろうか。

農業者の平均年齢(65.8歳) をみれば、この流れは止まらない。

いま目の前で (正確には背後で)、雪崩は激しく進んでいるのである。

しかしその現象は、関心ない人の目には入らない。

 

一方、新規に就農した人の数は昨年 5.6万人。

これを二ケタにしないと収支が合わないわけだが、

それならそれで、たくさんのチャンスが広がっているとも読める。

有機農業従事者の平均年齢は全体の平均より5歳若い、

というデータもある。

後継者がいる率も高く、

何より有機農業に突出しているのは、新規参入者の多さだ。

いま新規就農を考える人のほとんどは有機農業を志向している。

これは何を意味するか。

 

ディスカッションではバラ色の未来は描けなかったけど、

後継者といわれる人たちの肩にかかってきていることはたしかなワケで、

いっちょやったろか、と胸を張って行こうじゃないか。

マーケットがない、ではなくて、マーケットに目を開かせるために、

あるいは地域住民を安定消費者に変えるために、

どうするかを考えよう。

 

次に、

ワシにも1時間、いや30分でエエ、発表の時間をくれ!

とプログラムにねじ込ませたのは、

高知県下の生産者をとりまとめる 「高生連」 事務局の田中正晴さんだ。

 

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田中さんは、高知大学の学生時代から

公害問題や原発建設への反対運動、自然保護などに取り組んできた。 

その延長で、自然塩づくりや有機農業のネットワークづくりに邁進する

人生を送ることになる。 

「この話を30分でまとめるのは大変なんやけど・・・」 と、

田中さんは高知での反公害・反原発のたたかいを一気に辿りながら、

県下での有機農業の歴史をかぶらせていく。

なるほど。

若者たちに、有機農業はたんなる  " 安全な食 "  生産の話ではない、

いのちを守るたたかいとともにあるんだと伝えたいのだ、と読んだ。

ここにも熱い男が一人、いた。

 

夜は楽しく飲み、

翌日は (株)弥生ファームの生産ほ場を視察。

生産法人名は 「(有)大地と自然の恵み」 。

10名の社員を雇用し、有機認定ほ場は 7ha に広がる。

 

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ニラのハウスに、出荷場。

ベテランの母ちゃんたちが素早い手さばきで調製している。

 

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ニラの正品一袋つくるのも、簡単ではない。

脇のオレンジ色のコンテナには、一見して、これも?

と思える葉がパッパパッパとはじかれていく。

こういう現場も、見なきゃ分からない。

誰ともなく、もったいないね、の言葉が漏れてくるのだが、

品質の安定とクレームの少なさが産地の評価につながる。

複雑な心境・・・ も忘れないようにしたい。

 

こちらはユズ畑。

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「弥生ファーム」 と 「大地と自然の恵み」(代表:小田々智徳さん)

の掲げる理念は、

① 自然界との共存共栄

② 有機農業者が誇りを持って農業に取り組める社会環境つくりに努力する。

③ 豊かな大地と自然を次世代に引き継ぐことができる総合的な環境つくりを行い、

  有機農業に携わる全ての人に恵みが得られるよう努力する。

 

毎年かわる天候に振り回されながら、

一本のニラ、一個のユズに、理念と苦闘の結果が表現される。

厳しい世界だよね。

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じっくりと回りたかったのだけど、

視察途中で一足先に帰らせていただく。 

 

解散時の記念写真は、農産チーム・市川泰仙提供。 

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後継者会議も10回目となり、年々少しずつ顔ぶれも違ってくるし、

時代とともに農業観も経営感覚も変化してくることは仕方のないことだ。

それでも、今日の君は先人たちの汗の上に立っているのである。

土台をしっかり踏みしめて、飛んでほしい。

社会の様相とデータが指している未来の方図は、有機農業である。

それは間違いない。

 

解散後、残った参加者たちは、オプションで設定された

木質ペレット・ヒーティングシステムの見学に回ったようだ。

 (株)相愛エコデザイン推進室の前田誠一さんが、

ブログで紹介してくれているので貼りつけたい。

 ⇒  http://soai-net.jimdo.com/

 

前田くん、実は大地を守る会の元社員。

OB が各地で頑張ってくれるのは、嬉しく、励みになる。

 

「第10回 全国農業後継者会議」 レポート、

終わります。

 



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