2012年8月 5日アーカイブ
2012年8月 5日
忍びよる穀物危機
このところ気になっているのが、米国の記録的干ばつである。
1956年以来と言われる最悪規模での干ばつと熱波が6月から続いて、
7月20日にはトウモロコシと大豆の国際相場が過去最高値をつけた。
その後少しの降雨もあって多少持ち直したが、
ここまできて作柄がそう簡単に改善されるとも思われず、
これからさらに厳しい争奪戦(価格上昇) が予測されている。
米国の畜産団体が、ガソリンに混ぜるエタノール(トウモロコシ由来)
の使用を減らすよう政府に求めたことが報じられている。
「エタノール需要を抑えなければ、干ばつの影響で
今年から来年に飼料用トウモロコシは供給難に陥る」 と
全米豚生産者評議会は指摘している (7月31日付・日本経済新聞)。
餌の価格が上がれば、日本の畜産への影響も当然出てくる。
そしてお肉の値段だけでなく、
乳製品、油、卵製品(マヨネーズなど)、大豆製品、、、と直撃してくる。
今は投機マネーも穀物に手を出して相場を押し上げる。
生存のための基礎食糧が資金のあるところに買い取られ、
儲けの対象になって、値札とともに庶民の台所に到着するのだ。
世界の人口が70億人を超え、
すでに食糧が安く手に入る時代は終わりつつあるのだが、
この国の食の安全保障に対する哲学は、あまりにも貧しい。
2007年の秋に訪問 して、翌年には大地を守る会も訪ねてくれた
ノンGM(遺伝子組み換え) コーンの生産者、Mr.ケント・ロックからの便りでは、
25%の収穫減になりそうな予測が届いてきている。
彼はまだセンチュリーコーン(非遺伝子組み換えの品種) の収穫に
自信を見せてくれているのが実に頼もしいのだが、一方で、
すでに保険金の回収に意識を向けている農家がいることも伝えられてきている。
(この事態に遺伝子組み換え作物が貢献する、ということもない。)
しかも、生産現場での25%減は、末端の商品価格が25%上がる
ということではない。
需給バランスの緊張による様々な要因が発生し
(売り惜しみ・買い占め・価格上昇を睨んだ流通在庫・加工コストの上昇・・・など)、
相当ヤバイ状況であることを示唆している。
自国の農を軽んじた国家は滅びる。
それはすでに確実に進行していると言わざるを得ない。
食と、それを保証する農は、互いに守りあう形でつながらなければならない。