2008年12月20日アーカイブ

2008年12月20日

火の国で九州地区生産者会議

 

17-18-19日と、九州は火の国・熊本を巡る。

17日から18日にかけて、水俣で九州地区の生産者会議を開催し、

その後、宇城市から宇土半島を走って三角、上天草まで駆け足で回ってきた。

 

まずは第12回九州地区生産者会議から。

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以前は各産地を回りながら年1回開催していたのだが、

ひと通り回った後で、今は隔年での開催となっている。

2年ぶりにお会いする生産者が誇らしげに息子さんを連れてきたりして、

東京で会うのとはまたひと味違った雰囲気を、現地での会合は醸し出してくれる。

 

今回の受け入れ団体は、肥薩自然農業グループ。

代表の新田九州男 (くすお) さん。 

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水俣市が認定する環境ファーマー。 有機暦30年、JAS認証も受けている柑橘農家。

 「水俣と言えば水俣病、と思われるでしょうが、それだけではありません。

  4年前には大規模な産廃処分場の建設計画が持ち上がり、

  みんなで反対運動ををやって、なんとか中止に追い込みました。

  水俣にはまだまだ潜在的なパワーが残っとります。

  ゴミは22分別です。 水俣を環境の町にしようと、皆で頑張っております。」

と、その名の通り力強い挨拶を頂戴した。

 


今回、記念講演をお願いしたのは、 宮崎大学農学部准教授・大野和朗さん。

演題は 「天敵の有効利用について」 。

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大野さんの持論は、ただ害虫の天敵を 「利用」 するというものではなく、

天敵の棲みやすい環境をつくりあげることにある。

例えば、除草剤を撒くとハダニが増えるが、

それは天敵の棲めない環境にしていることで、増やしてしまっているのだ。

害虫被害が増えているのは自然界の中ではなく、農薬を撒いているところ。

特定害虫の異常繁殖を防ぐ上でも、生物多様性の維持が大切である。

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日本の農業経営は、個々の農家を見れば、すでに単植栽培 (モノカルチャー:

特定の作物の生産に特化している) になっているようにも見えるが、

地域全体を見渡せば、まだまだモノではない。

田んぼもあり畑地もあり、よく見れば色んな作物が植わっていたりする。

地域という単位で多様性を考えたい。

 

だから大野さんは、大学の農場ではなく、農家の畑を借りて実験や実践を試みている。

講演では、具体的な作物に具体的な害虫の名前、それに対する天敵昆虫の育て方、

それらが具体的に語られてゆく。

 

1990年代以降の害虫発生の特徴は、

グローバリゼーションによる世界への害虫の拡散と、

農薬抵抗性の獲得。 しかもそのスピードが速くなってきている。

そんな中で、韓国で天敵利用が飛躍的に広がっている。

オランダはすでに農薬の使用量がピーク時の半分にまで減っている。

日本は、と言えば、天敵も農薬と同じ登録制にしたため (天敵=生物農薬という設定)、

販売するのは農薬メーカーであり、したがって高い。 

いわば農薬メーカーの独占を助けている状態である。

 

実は天敵昆虫は私たちの周りにいる。

どんな植物についているのかが分かれば、その植物と一緒に虫を育てることもできる。

だから、「雑草」 と言われる植物も見直されなければならない。

 

事例が具体的で説得力がある。

事務局ゆえ一番後ろの席に陣取っていたのだが、

みんなスゴイ。 集中して聞いているじゃないか・・・・・

 

大野さんは夜の懇親会にも残ってくれた。 生産者の質問が絶えない。

なかなかいい勉強会になったかと思う。

 

翌日は、肥薩自然農業グループの園地見学。

ここは代表の新田さんの柑橘園。

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デコポン(品種名:不知火) に河内晩柑、レモンにパール柑、温州みかん...

色んな品種が植わっている。

 

健康に育ったデコポンです。 

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肥料は、地域の山や竹やぶに棲息する土着の微生物をベースにした自家製ボカシ。

加えて、いろんな植物を付近から採取して黒砂糖と一緒に発酵させて作った

 「天恵緑汁 (てんけいりょくじゅう)」 という名の液体。 

自然の精気を凝縮させて動植物に栄養と活力を与える天の恵みというような意味。

これを葉面散布する。  

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天恵緑什については、いつかちゃんと紹介できるようにしたい。

韓国の自然農業中央会代表のチョ・ハンギュさんが考案したもので、

日本でもたくさんの人が取り組んでいる。

 

若手メンバーの吉田浩司さん。 

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なんと、弁護士を目指して法律の勉強をしていたのだが、その道を捨てて、

惚れた彼女の実家のみかん園を継いだという異色の経歴。

栽培技術については-「まったく知りませんでした」 。

それがかえって良かったのか、作業効率や将来を考えて、

園地の改造や改植 (品種の植え替え) を大胆にやってしまったのだという。

「お義父さんは肝つぶしたろうな」

「いやあ、娘に惚れて来てくれたんだし、みかん園も継いでくれたんじゃ、

 もう好きにせぇ!ってなもんじゃない」 -そんな会話で盛り上がる。

 

解散前に記念撮影。 

2年後、また笑顔で会いましょう。  いや、その前に、2月の東京集会で-。

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さらに残った職員で、他のグループを見て回る。

宇城市(旧:不知火町) の 「肥後あゆみの会」。 不知火の海を見下ろす柑橘園。

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代表の澤村輝彦さん (写真前列右の方) からは、

来年、すっごいトマトが出てくるはず。 楽しみしていて欲しい。

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続いて、同じ宇城市でも旧三角町の 「もっこす倶楽部」 を訪ねる。

写真は天草にある玉ねぎ畑。

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有機栽培だと、他の園地からの農薬の飛散にも配慮しなければならない。

見晴らしのいい、高台の上にあった。

畑の向こうには、お墓が気持ちよさそうに並んでいる。

玉ねぎも、今のところまずまず順調の様子。

 

玉ねぎ畑の後ろ (眼下?) は島原湾。 その向こうに見えるのは雲仙岳。

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天草四郎公園とかの観光名所を一瞥しながら、ひたすら畑を回る。

地方出張はいつもそう。 今度来るときはゆっくりと・・・とか思うのだが、

名所旧跡を眺める時間がとれたことは一度もない。

 

バタバタと走った三日間だが、実は18日の生産者会議の解散後、

僕は一人水俣に残って、半日ほど別行動をとらせていただいたのだった。

次にその報告をしたいと思う。

 



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