産地情報: 2008年1月アーカイブ

2008年1月30日

一山レポートと イカの塩辛

 

大地を守る会の専門委員会「おさかな喰楽部」のメーリングリストに、

時おり一人の水産生産者から便りが入る。

一山美秋(いちやま・よしあき)さん。

大地にイカの塩辛を提供していただいている

神奈川県中型イカ釣漁業協会・三崎いか直販センターの方だ。

僕はこの便りを勝手に「一山レポート」と呼んでいる。

 

その一山さんが、昨年いっぱいで退職されることになった。

 

27日、パレードを終えた後に開かれたおさかな喰楽部の新年会は、

一山さんの労をねぎらう会ともなった。

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一山さんと僕は同郷である。

会うと必ず故郷の話題になる。

 

昨年の暮れに一山さんから送られてきた退職の挨拶メール。

 

  四国の寒村の漁家に育ち、

  万年漁師を希求し水産課程の教育を受け、

  遠洋漁業のマグロ漁船に30余年乗船。

  その後は陸上勤務で過去の体験を生かしマグロ販売に12年、

  現職のイカの営業に10年と、

  水産一筋に懸命に勤めてまいりました。

 

一山さんはいつも、

三崎でのヒジキ狩りや交流会はじめ、

大地のイベントには必ず顔を出してくれて、

マグロの解体やイカの丸焼きなどで骨を折ってくれた。

 

加えて一山さんとは、

その人柄がレポートからも滲み出てくるような人なのだ。

海産物への造詣の深さは言わずもがなとして、

一山さんの書く文章には、上手い下手を通り越して、

ある種の品すら感じさせる。

たとえばこんなふうに。

 

  近年、水中カメラマンが撮影した写真集が刊行され、

  水中のイカ類の様々な生態に親しみを感じます。

  個体の容姿は、可愛い!綺麗!神秘!驚異!と、

  イカ族の数奇な遺伝子の核分化の歴史に興味が傾きます。

  水中に生息するイカ類には、『光るイカ』は非常に沢山いて、

  色彩が虹の七色以上に多種発色し、

  常に外敵から身を守るためには周囲の環境に融和適応する

  頭脳的な能力を発揮して行動しています。

  海中から釣りあげたイカも、種別により体色は異なるが、

  たいていは茶系色の濃淡を主体にして、

  虹色の生態色と豊かな色彩で、無数の斑点が綺麗に発光し、

  提灯が呼吸するように点滅を繰り返しています。

 

  また水中で遊泳しているイカの映像を見ても、

  外皮全体がたえず青緑主体の透明化した内臓までが蛍光色に染まり

  輝くような、賑やかな状態で生活をしています。

  (中略)

  450種いるイカ族を一同に集めて、

  多彩に発光するグラデーションの水中は素晴らしいのではないかと

  生存展覧の光景を見てみたい。

 

改めて書き写しながら思った。

この品は、海や魚への愛情から醸し出されているのだ。

 

時々添付してくる写真もまた、上手なのである。

 

イカの吸盤

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大地のイカの塩辛

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塩辛についての一山さんの解説。

 

  神奈川中イカの「イカ塩辛」は、所属船が一本釣りで漁獲した

  新鮮なスルメイカのみを原料とし、特に肝は格別に目視検査し

  厳選しています。

  透明なイカ胴肉は揮発性の不純物を半乾燥で除外し、

  同時に自己消化過程で蛋白質や核酸、糖質などの成分を熟成させ、

  肉質の柔軟化を増長させています。

  イカ肝は豆腐の「オカラ」と天然塩で脱臭脱水後に熟練分離して

  数日間寝かせ、先にカットした半生の胴肉にまとわせるように絡ませ、

  低塩調整して更に毎日冷蔵庫で攪拌しながら発酵させ、

  酵素の微生物の醸すハーモニーを吟味調整して最終仕上げをします。

  手造り無添加こそ発酵食品の醍醐味で、

  自然が創り出す成分は効能の宝庫です。

 

  納豆やヨーグルト、糠漬けのように、体内に取り入れられた微生物や

  乳酸酵素の薬効も抜群で、全身の機能を活性化させます。

  漁師風の味を守りつつ、現代の健康嗜好100%に改革した

  塩辛の工房は、消費者に絶賛好評で仕事冥利につきます。

 

...実に実直に、魚や加工の仕事に向き合って生きてきた人だ、と思う。

 日本人の勤勉さと繊細さは、農民だけがつくったのではないようだ。

 

マグロ船時代の写真だと思う。

パナマ運河をわたる写真がついてきたことがある。

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そういえば、まだ一山さんからマグロ船時代の話をちゃんと聞いてないなぁ。

 

一山さんはこの日(27日)、

朝の勉強会から日比谷野音-パレード-新年会とフル参加してくれた。

 

パレードで藤田会長(左)と並んで行進する一山さん。

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昨日お礼のメールが届き、

「これからは消費者会員の一員として協力していきたい」

と、18から始まる7桁の会員番号が記されてあった。

 

生産者にこんなふうに言ってもらえる大地は幸せである。

いま富士が美しい季節です、と写真が添付されていた。

 

「諸磯白須湾の漁船と富士」

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漁業資源の枯渇が進むなか、

一山さんには、まだまだ教えてもらわなければならないことが沢山ある。

 

ひとまずは、これまでの労に感謝して、

一山さん、ありがとうございました。

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(慌ててしまってピントを外しちゃいました。スミマセン)

 



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