産地情報: 2008年10月アーカイブ

2008年10月 5日

備蓄米-「大地恵穂(けいすい)」 収穫祭

 

10月4日(土)。 爽やかな秋晴れのもと、

福島県須賀川市の稲田稲作研究会にて、 『収穫祭』 を開催。

大地を守る会が生産者と一緒につくった米の備蓄システムも、もう15年になった。

あの  " 平成の米パニック "  の翌年から始めたんだった。

その備蓄米-生産者が名づけたブランド名が 「大地恵穂」 (品種はコシヒカリ) の

収穫を祝っての、2年ぶりの交流会である。

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春先からの天候不順もあって、ずいぶん心配させられたけど、

7月から8月上旬の好天で何とか持ち直し、その後の豪雨や低温にも耐えて、

稔りまでこぎつけた。 生産者も今年はけっこうハラハラしたようである。

 

田んぼに集ってくれた会員さんたちの顔も、一面の黄金色にほころんでくる。

これが、豊かである、ということなのだ。

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これからコンバインに乗って、収穫を体験していただきます。


挨拶いただくのは田んぼの主、前稲作研究会会長、岩崎隆さん。

どんな年でも一定水準以上の米に仕上げるワザは、経験や観察によるだけでなく、

田んぼを一枚一枚土壌分析して施肥を設計するきめ細かさにも秘められている。

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今はもう作業は息子さんに任せられるようになってきていて、少し余裕も感じさせる。

今年も 「まあまあ、かな」 。 

 

さて、コンバインに乗って稲刈り。 

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たいして面白くもなさそう、と思われる方もいるでしょうが、

いざ乗ってみると、視界の高さにスピード感もあって、けっこう迫力ある、

子どもたちも興奮する体験なのです。

 

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稲がザァーッと目の前で刈られていく様に声を上げる参加者。

生産者もちょっと得意げ。 写真左は渡辺文雄さん。 

岩崎さんに続いて早くから合鴨農法を導入して、無農薬栽培を実践した方だ。

 

刈り取られた田んぼで、今度は 「第2回イナゴとり選手権大会」 。

30分で何匹捕まえられるか。 大人もけっこう夢中になる。

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飛び跳ねるイナゴを捕まえて、最後は佃煮にして、食べる。

優勝者は、前回2位に甘んじたお父さん。 

重さにして76 (?) グラムだったか。 100匹近く捕った勘定かな、すごいね。

子どもの頃の野生に戻ったって感じですね。

 

岩崎さんの田んぼには、ドジョウもいっぱいいる。

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これも田んぼの豊かさの指標である。

 

田んぼで楽しんだ後は、ライスセンターの施設見学。

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稲田自慢の、太陽熱乾燥施設。

ここで乾燥させた後、モミのまま保管する。

 

モミを攪拌しながら、一定の水分量になるまでゆっくりと乾燥させ、

眠りにつかせる。 

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田んぼごとに土質検査をした上で肥料設計をして、

作業はオペレーターを使って計画的に行ない、

田んぼごとに食味をはかって、収穫-入荷まで管理する。

そして乾燥-保管-脱穀・精米-袋詰めまでの一貫したラインが出来上がっている。

ここまでくるのに何年かかったっけ。

毎年来るたびに設備が充実していく様は、さながら子どもの成長を見るようだったが、

今や、見上げるまでに逞しくなった青年の姿である。

 

施設内にこしらえたテスト・キッチン。

ここで色んな食べ方や新しい素材の研究をしている。 担っているのは女性陣である。

今日は、玄米の粉でつくった生地をベースに、みんなでピザを焼きましょう。

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この生地を完成させるまでに、相当な試作があったようだ。

彼女たちはすでに米粉のパンも完成させている。

 

輸入の汚染米の転売が騒がれる一方で、国内の米農家には減反の圧力がかかっている。

しかしそんな暗い世情なんかモノともしないで、

自らの力で米の消費量を上げようと、

米の多様な活用策を研究する彼ら彼女たちの表情の明るいこと。

希望はこの輪の中にある。

 

陽も落ちて、心地よい夕暮れ。

みんなでつくったピザがどんどん焼き上がる。 この石釜が今年のニューフェイスだ。

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ご飯だけでなく、コメ (稲) をトータルに使い切ることで農家を支えよう。

強い意思を感じさせる石釜の登場である。

 

お次は、伝統のお餅。

これまた初体験の餅つきに興じる。 杵ってけっこう重いでしょ。

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交流会には、会津・喜多方から大和川酒造店の社長、佐藤弥右衛門さんも

「種蒔人」を持参してこられ、盛り上がる。

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そうそう。 「種蒔人」の原料米、美山錦も無事収穫され、しっかりと保管されていました。 

 

最後に、女性陣に感謝。

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地元食材を使った料理の数々、どれもホントに美味しかったです。

すっかり幸せな気分に浸りました。 ご馳走さまでした。 

 

夜は近くの芹沢温泉に泊まって、翌朝、解散。

帰り際、最後まで残っていた方々と、記念に一枚いただく。

なんか、みんな楽しそうだね。

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黄金色に輝いた田に、素直な気持ちになって 「今年もありがとう」 と言って帰る。

まったく息が詰まりそうな、世知辛い世の中になっちゃったけど、

大地は変わらず大らかに、惜しみなく実りを与えてくれる。

この田園にこそ農民たちの誇りがあって、

それがどっしりと生きていることがどんなに救いだろうかと思う。

ゼッタイに荒れさせてはならない。

そして、食を信頼でつなぐ -このテーマに生きていられることを、私も誇りに思おう。

昔よく歌った 『わが大地のうた』 (詩:笠木透、曲:田口正和) の一節が蘇る。

 

    この土地に 生きている 私の暮らし

    私に 流れる 人たちの歴史 ・・・

 

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    この土に 私の すべてがある

    この国に 私の 今がある

 

    いくたびか 春を迎え

    いくたびか 夏を過ごし

    いくたびか 秋を迎え

    いくたびか 冬を過ごし

 

    この国の 歴史を 知ってはいない

    この国の 未来を 知ってはいない

    けれども 私は ここに生まれた

    けれども 私は ここに育った

    

    私がうたう 歌ではない

    あなたがうたう 歌でもない

    わが山々が 私の歌

    わが大地が 私の歌

 



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