産地情報: 2008年11月アーカイブ

2008年11月14日

木を植え続ける人々

11月3日のブナの植林の写真が、

生産者の黒瀬正さん (秋田県大潟村/「ライスロッヂ大潟」代表) や

参加された方々から送られてきたので、アップさせていただきます。

皆さんから 「腰の具合は?」 とご心配いただいたり、

「いっぺん検査せい!」とお叱りを受けたりで、大変嬉しゅうございました。

でも写真を見ると、つい悔しさもこみ上げてくるのでございます。

 

木を植え続ける人々。

植林風景.JPG

毎年々々11月3日に欠かさず植え続けて、16年。

植えた苗木が延べ1万3400本。 樹種もブナだけでなく、ミズナラ、トチ、カツラなど

広葉樹の混交林に育ててきている。 

最初に植えた苗はもう10メートルを超えるまでになった。

 


集合風景。

ハンドマイクを持って説明しているのは、

「馬場目川上流部にブナを植える会」 会長の石川雄一さんだ。 

お元気そうで何より。

e08111401.JPG 

心配された天気も何とか持ったようで、よかった。

 

大地を守る会の応援隊も頑張ってくれました。 

苗木を植えているところ.JPG

 

e08111403.JPG 

 

e08111402.JPG 

皆様、お疲れ様でした。

この子たちが大きくなった頃には、立派な森になっていることでしょう。

時々でもいいから、これからも来てみようね。 

 

16年に及ぶ活動の中で、この森は水源涵養保安林として指定された。

植えられたブナが将来大木に成長し、水田や畑を潤し、

人にも動物にも豊かな恵みを与え続けてくれることを願わずにはいられない。

 

森を育てる作業は、植えるだけでなく、春の雪起こしから測量・植栽準備、

夏の下草刈りなど 色々ある。 すべて生産者たちのボランティアである。

それも、彼らのつくったお米を普通に食べることで持続できているのだ。

紅葉と沢.JPG

僕らは、この森の恵みを頂き、また食べることで支えている、とも言えるんだよね。

 



2008年11月 3日

新米農業者の八年目日記

 

今頃、秋田・五城目の馬場目川上流では、

大勢でブナの植林が行なわれて、お餅つきやコンサートで盛り上がってるんだろうな、

なんて思いながら積まれた書類を整理する一日。

そんな時に、山形は庄内地方、鶴岡市の月山パイロットファームから、

『月山ふるさとだより』 という一枚の通信が送られてくる。

今月号は、冬に向かう日本海・庄内地方の空気が伝わってくるような文面だ。

 

  稲刈りも終わった庄内平野。

  11月に入ると収穫は稲から大豆に移り、豊穣の大地がなんとなく寂しい光景となりました。

  この時期になると曇りや雨の日も多くなり、気温もぐっと下がり、

  華やいだ秋の空気が変わったのがわかります。

  もうすぐ冬です。

  そして実りの秋の終盤になるとやってくるのが、秋冬野菜の収穫。

  赤かぶ、青菜(せいさい)、大根、長ネギ、からとり芋、青大豆、赤唐辛子と目白押しで、

  天気と相談しながら、雪が降るまで目いっぱい収穫が続きます。

  そしてこの時期の収穫物は、私たちにとっては漬物の原料。

  本格的な漬物シーズン到来で、漬け込み、パック、出荷と、

  工場もフル回転になってきます。 ...............

 

藤沢周平の物語の風景まで浮かんできて、

ひととき海を眺めてしまう (こちらは東京湾ですが...) 。

厳しさを淡々と受け止め、静かで、しかし凛とした人々の生き様が見える。

 


この通信に 「新米農業者の八年目日記」 というコラムがある。

代表の相馬大(はじめ) さんが書いている。

「新米農業者」 などと称しているが、立派な若きリーダーである。

ぜひここで紹介したい。

 

  稲がなくなった庄内平野。 あとは冬を待つのみ、というこの時期。

  お漬物中心に移っていく私たちですが、そんな中で今年は土づくりに励んでいます。

  これまで私たちは、堆肥や米ヌカ、緑肥を中心として土づくりをしてきましたが、

  それとはまた違う農法を聞き、目から鱗。 夏に畑の神様から教えてもらったことを

  試してみようと、ワクワクしながら畑に入っています。

  しかし、土づくり、土づくりと皆が口にし、私たちも長い間取り組んできましたが、

  本当に様々な取り組みがあり、その到達点も千差万別。

  目指す人の数だけ、方法が組まれてきています。

  もちろん気候も違えば土も違う。 自然環境から受ける影響のほうが遥かに大きい農業

  ですから、もちろん違う方法になって当然ですし、それだけ奥が深く、完成というものも

  ないのでしょうが、それでもものすごいレベルに達している人たちは確かにいます。

  ここ庄内にも、田んぼの神様と崇められる人もいるし、有機栽培の猛者達もたくさんいます。

  そしてその畑の神様も、まさに「神様」で、

  豆の葉を見ただけで 「カルシウムが足りない」 と看過するほど!

  (中略) あの眼力と理論だった自信満々の話は、まさに魅力たっぷり。

  ぜひ試してみよう!

  というわけで、せっせともみ殻を運んでいるわけです。 しかしその方法は、

  とてつもない努力が必要・・・。 何事も甘くないというものです。

  まだまだ一部の圃場での実験ですが、それでも来年どうなるか、とっても楽しみ。

  新しい扉が開かれますように! 

 

これは、今年の8月に庄内で開いた「全国農業後継者会議」で、

西出隆一さんの指導を受けたことに端を発している。

枝豆の畑で、かなり手厳しい批評を貰いながら、大さんは、したたかに吸収したようだ。

e08110401.JPG

(後継者会議で畑の説明をする大さん)

 

生産者会議は全国あちこちで、年間10回くらいやっている。

その都度いろんなテーマで講師を招いていて、

生産者はそれぞれに必要な技術なり思想なりを学んだり、批評し合っている。

「参考にならん」 とか豪語しながら、実はしっかり持ち帰って試す生産者もいたりする。

ただ栽培技術というのは、一筋縄ではいかないもので、

勉強会をやったからといって、何かが急激に変わるということはない。

しかし、試験的にもやってみる、部分的に取り入れてみる、という反応が見えたとき、

それこそがぼくらにとっての喜びとなる。 やった甲斐があったというものだ。

 

厳しい冬に向かう庄内から、

ワクワクしながら畑に入っている・・・・・ なんて素敵な便りだろう。

1年では結果は出ないかもしれないけど、じっくりと積み重ねて、

どうか我がものにしてほしい。

挑む者の前に、新しい扉は現れる。

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ