産地情報: 2010年3月アーカイブ

2010年3月25日

乾燥、その奥深い可能性を「見える化」する

 

昨年10月3日に開催した、大地を守る会の 「備蓄米」 収穫祭 のレポートを

ご記憶の方は・・・もういないか。 

お時間の許す方は、上の文字をクリックしていただくとして、

その時の交流会に登場して大好評を博した乾燥野菜が、

足掛け3年に及ぶ試作期間を経て、いよいよ本格的な製品化に向けて動き出した。

 

大地を守る会のスタッフでプロジェクト・チームが結成され、

3月22日、現地(福島県須賀川市)・ジェイラップの事務所で

合同のキックオフ会議が開かれた。

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社内のプロジェクト・チームは、農産グループ・商品グループ・広報グループそして

大地を守る会の農産加工部門である (株)フルーツバスケットも参画して結成された。

プロジェクトの名称は、「畑まるごと 皮から種までなんでも乾燥プロジェクト」。

略して 「はたまるプロジェクト」。

 

ジェイラップ専務の関根政一さん(上の写真右奥の方) が、

2年の歳月をかけて試作した野菜や果物の数は60種類を超える。

形状はスライスやチップ状に刻んだものからパウダー(粉) まで。

試作品のパウダーの数々。

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野菜・果物を乾燥させ保存する。 

このノウハウを獲得することで、畑で発生する余剰品や規格外品が活かせるようになる。

" 捨てる "  から  " 拾う・使い切る "  へ。

しかも貯蔵性が高まり、様々な加工食品の幅が広がる。

いや、それだけじゃない。

関根さんや代表の伊藤俊彦さん(写真、関根さんの手前の方) たちと

何度となく語り合ううちに、

これはとてつもなく奥の深い、新しい可能性の扉を開くものになる、

という確信を、僕らは持つにいたったのである。

 


たとえば、有機・無農薬栽培の規格外品の活用ができれば、

それだけでも安全な農産物生産の拡大・普及をバックアップする力になるだろう。

 

あるいは、食べたり加工する際に捨てられる皮やヘタ、茎や種も使うことができる。

しかも皮やヘタや茎だって、普段食べている可食部と言われる部位よりも

栄養価が高いものがある。 粉にすれば食感上は何ら問題なく、

逆に風味が増したりする場合だってあることを、色んな試食によって

粉たちは証明して見せてくれたのだ。

 

ゴミが資源に変わる? いやいや、もともとゴミなんかではなかったのだのが、

畑の  " 資源力 " 、そのポテンシャルを最大限に引き出す革命的なノウハウを、

僕らは今ようやっと手に入れようとしているのだと言えないだろうか。

だからこその、「はたまるプロジェクト」なのである。

 

その扉を開く会議は、予定時間を越えて続いた。

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離乳食から介護用、防災用の非常食、はてはペットフードまで、

互いのイメージは、どんどん膨らんでいく。

赤ちゃんからお年寄りまで、畑が支える健康生活って感じですかね。

 

これなんかは、これだけで充分、家庭での常備品になるのでは。

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この日の試食は、5種類のうどん。

何を加えたかは、ヒ・ミ・ツ。

それぞれの香りや食感が絶妙に活かされていて、美味い、という前に、

これは面白い! などと口走ってしまうのだった。

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ここで、カレーライスを試食した、と聞いたら、どういうものを想像されるだろうか。

一同、「これ、いけるねぇ」 とうなずきながら食べている。

有名シェフがこしらえた驚きのカレー、といったのとは違う。

思うに、「●●●ちゃんちの野菜カレーは、ひと味違う」 と言わせる、そんな感じなのだ。

もちろんその場合は、お米もこだわって欲しいところである。

 

乾燥室を覗くと、長野のリンゴ農家になった元大地職員、広瀬祥寿くんから送られてきた

リンゴの乾燥が行なわれていた。 

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この作品については、広瀬くんがリンゴのチップとして自力で売るらしく

(大地への提案は来年だとか)、少ししっとり感を残して仕上げている。 

彼のリンゴはもともと味では定評を得ているが、

旨味が上品に濃縮されて、文句なく美味しい。

 

フリーズドライでなく、熱風乾燥でもない、低温でゆっくりと風を送って乾燥させる

「低温除湿」方式。 これによって、しっかりと風味を残す。

 

食味、栄養価、環境への配慮、あらゆるステージで野菜を摂取できる食の提案。

野菜の粉末化やドライフーズは今では珍しくないが、

僕らが進めるプロジェクトは、

畑の受け皿の新しい鉱脈を育てる= 「畑の資源力」 の見える化、という仕事であり、

それによって人々の健康への貢献の底力を、畑から見せる化することである。

で、具体的には?

 -え~と、あの、これ以上は、まだ企業秘密ということで。

 

「こんなこと考えてるんですけどね」 と聞かされてから、3年。

ここまで完成度を上げてきた関根さん+スタッフの執念には脱帽するしかない。

最近は電話しても、

「ああ、スミマセン。 セキネは今、例の場所に引きこもっておりまして・・・」

なんて言われたりする。 

あの強面(コワモテ) で引きこもりか・・・その姿を想像するのはやめて、

じゃあ、何としても花開かせなければ、と思うのである。

 

ジェイラップでは今、本格的な設備の工事に入っている。

完成後、速やかに稼動できるかどうかは、こちらのプロジェクトのスピードにかかっている。

製品がお目見えするのは、夏か、秋口か。

一肌脱ごう!という加工食品メーカーがおられたなら、挙手願いたい。

 

忘れないで付記しておくと、ジェイラップの本業は、米である。

生産者集団 「稲田稲作研究会」 の信頼ブランドでもある 「大地を守る会の備蓄米」 の、

今年の美味い米づくりは、もう始まっている。

この日は種籾の温湯消毒 (薬での消毒はしない) が、

若者たちの手で行なわれていた。 うまく仕上げるコツは、氷だそうである。

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2010年3月 7日

未来は有機農業にあり!

 

3月5日(金)、千葉県成田市内の某ホテルにて、

「農事組合法人 さんぶ野菜ネットワーク」 の第5回通常総会が開かれた。

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一年間の事業活動を総括し、決算報告をし、監査報告を受け、

次期の事業計画や予算案について、組合員からの承認を受けるという、

組織の最高決定機関である。

 

当然のことながら、貸借対照表も損益計算書も売上目標も提示されるわけだが、

ここにすべての取引先を招待して開催するところに、彼らの骨太さを感じる。

しかも利益の扱いやら事業計画について、なかなか活発な議論が行なわれ、

時には執行部が熱くなる場面などもあって、実に好ましく思えるのだ。

(何という上から目線のセリフでしょう。 失礼ですね。)

 

役員や執行部の苦労はどこの組織にもつきものだし、

それが会員や組合員に充分に見えなかったりする場合の軋轢も、よくあることだ。

後ろで取引先が腕組んで眺めるなかで、そんな現実を生々しくやり取りされた皆様に、

敬意を表したい。

 

旧JA山武(現:JA山武郡市) 睦岡支所内に有機部会が設立されて21年。 

農事組合法人として独立して5年。

メンバーは50人を超え、取引先も指折って数えきれないくらいに成長した。

部会設立と同時にお付き合いを始めた大地を守る会としては、

彼らの20年にわたる努力を、素直に讃えたいと思う。

しかもこうやって総会をオープンにしながら運営してきた。 立派である。 

 

この日には特別ゲストも招かれていた。

民主党参議院議員、有機農業推進議員連盟事務局長、

ツルネン・マルティ さん。

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有機農業推進法成立の功労者である。

 


日本憲政史上初の、日本国籍を持つ外国人の国会議員が、

日本の美しさを語り、有機農業の推進を訴えている。

 

フィンランドに生まれ、宣教師として来日して、

日本古典文学の翻訳や英会話塾などやりながら、神奈川県湯河原町の町議になり、

国政選挙に挑戦するも四度の次点経験を経て、

大橋巨泉の辞職による繰り上げで、神がかり的に国会議員になった。

そして次の2007年の参院選では、民主党6位で堂々の再選を果たした。

色々と物議をかもす国会議員が多い中で、

数少ないクリーンで苦労人の政治家の一人ではないか。

 

その人が、有機農業の推進に政治生命をかけるとまで言ってくれている。

演題のタイトルは 「未来は有機農業にあり! 」。

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母国フィンランドでは、昨年の閣議決定で、公共施設(大学、学校、老人ホームなど)

のレストランや食堂で 「ルオム自然食」 と 「ローカル食」 を取り入れるという方針が

採択されたんだと言う。

「ルオム」 とは、フィンランド語での 「自然に従う生き方と農法」 という意味らしい。

有機農業と地産地消を足したようなイメージか。

公共施設では、毎月何日かの 「ルオムの日」 が設定され、

その日は地場食材一色の食事になるんだそうだ。

議員としての残りの時間をこういう食育推進運動にかけたいと、ツルネンさんは熱く語る。

 

たかが30分の、間違いなく安いであろう謝礼での講演に来て、

ちゃんと懇親会まで出てくれて、「有機農業が世界を救う、と私は信じています」 と、

真摯に有機農業の推進を自分の政策として語れる政治家は、

僕の知るところ、この人しかいない。

しかも、みたしなみからして、僕らよりずっと日本伝統にのっとっている。

国会ではどう思われているんだろう・・・。

 

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懇親会では、野菜栽培で優秀な成績を収めた生産者8人の表彰式というのが

初めて行なわれた。

オリンピックの入賞にちなんだらしいが、8人なら毎年入れ替われるくらいに

みんなのモチベーション・アップにもつながるのでは、という配慮らしい。 

こうやって、内発的に切磋琢磨されてゆくなら、表彰もあっていいのかもしれない。

 

総会では、新しく3名の組合員の加入が承認された。

加えて、山武市有機農業推進協議会の尽力で、現在3名の若者が研修中である。

警備会社とか青森の郵便局に勤めていたという経歴の人たちが、

「将来は子どもと一緒に有機農業をやりたい」 と語っている。

昨年の研修生からは、1名の方が土地を見つけるところまできたようだ。

まさに 「未来は有機農業にあり!」 の実践である。

 

「自分たちだって苦しいのに、メンバーを増やしてやっていけるのか」

という声も聞かれたが、組織や地域の活性化に、新しい血は必須である。

食の安全や環境を守る戦力を育てられる力がどこにあるのかを、

後ろに陣取っていたお歴々の前で、あなたたちは表現していたのです。

前に進んでよし、ですよ。

 

大地を守る会の稲作体験も今年で21年目となる。

皆さんと一緒に歩んできたという自負も多少はあるもので、

5回目の総会無事終了をともに祝いたい。 お疲れさまでやんした。

 



2010年3月 4日

オーガニック応援隊

 

今年の 「2010だいちのわ ~大地を守る東京集会~」 では、

共通テーマとは別に、もう一つの目玉として、

生産者・メーカーさんたちによる就農相談・求人コーナーが設けられた。

その数14ブース。

チラッとしか覗けなかったのだけど、反応はどうだったのだろうか。

 

奈良・王隠堂農園御浜天地農場さん。

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千葉・さんぶ野菜ネットワークさん。

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山形・おきたま興農舎さん。 

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熊本・肥後あゆみの会さん。 

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・・・などなど。

 

結局販売ばっかりだったというボヤキも一部で聞かれたりしたが、 

就活中の学生も来たようで、全体的にはそこそこの相談があったとのこと。

さて具体的な成果のほどとなると、相談された方自身の

次のアクション次第ということになるのだろう。

 

大地を守る会としては初めての試みだったのだが、

これはけっして一度っきりのイベント的な試みではない。

産地での就農者募集と若者たちの就農希望をつなぐパイプづくりを、

これから積極的に進めてゆこうという、我々の意思表示でもあったのだ。

 

その本気度を表すものとして、

今回の東京集会の開催に合わせて、新しいサイトをひとつオープンさせた。

名づけて ~大地を守る求人情報~ オーガニック応援隊  』

 


現在のところはまだ、東京集会に合わせてのプレ・オープンとして、

出展していただいた団体の情報しか掲載できてないけど、

これから本格的に産地・メーカーの就農・就職 (就漁も就林業も) から

研修生・アルバイト募集などの情報を充実させていく計画である。

 

高齢化や耕作放棄地の増大といったニュースが流れる一方で、

本屋さんには 「農業は儲かる!」 みたいな本が並ぶ奇妙なご時世だけど、

要するに、一次産業が滅ぶことは、実はないのだ。

未来は、環境と調和した農林水産業の担い手たちの手にかかっている。

それは間違いない。

 

昨日は、前にも報告した 「NPO法人有機農業技術会議」 による

就農支援ガイドブック制作のための、最後の編集会議が開かれた。

ガイドブックのタイトルは 「有機農業をはじめよう!」。

有機農業の解説からはじまって、就農までのステップ、

先輩たちの具体的事例やアドバイス、有機に関するQ&A、

情報収集のためのINDEXなど、コンパクトにまとまったように思う。

ガイドブックは今月中にも完成する予定である。

 

風を吹かし、場や情報を提供し、橋をつけ、

山から海までをネットワークしながら、仕事を創り直していきたい。

そうやって時代を変えてゆければいいと思う。

 

近いうちに、本格的に求人情報の受け付けを始めます。

乞うご期待!

 



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