食・農・環境: 2013年11月アーカイブ

2013年11月30日

スター農家!発掘オーディション

 
若手農家の力で、新しい農業のカタチを創る!
 
11月17日(日)、渋谷ヒカリエで開催された
「スター農家発掘オーディション ‐STAR's」 Vol.2(第2回)。
 
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農業にかける夢や志が
精一杯の表現でピチピチとはじけていて、
まだ炭酸の残る新酒絞りたてのような新鮮さだった。
大海に出る若い水夫たちの、怖れを知らないハツラツさよ。
 
全国から寄せられたビジネスプランの数が34。
一次審査の結果、8名のファイナリストが選ばれた。
審査スポンサー企業は17。
それぞれのプレゼンに対して、支援しようと思ったら札を上げる。
ちゃんとした支援の意思表示として上げてください、
と言われていたので、
こっちもそれなりに真剣に聞かせていただく。
(気軽に上げていた企業もあったように見受けられたが・・・)
 

8名のファイナリストは、
3名が新規就農希望者部門で、5名が若手農業者部門。
こんな内容だ。
 
【新規就農希望者部門】
① 農業×土壁 ~バッハのように基礎を創る~
  自然素材の土壁を利用して黄ニラ栽培に挑む、工業大学卒の若者。
 
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② 農的暮らし体験
  「農的暮らし」そのものを商品化し、農業による持続可能な社会づくりを提案する。
 
③ 「離島」 × 「農業」 ~島内自給率100%~
  ふるさと「徳之島」に帰る、島に帰って「農業者になる」。
  島野菜のブランド化に取り組み、地域とともに生きる決意を語る女子。
 
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【若手農業者部門】
④ -農が見える食- 楽しくて美味しい農村の魅力を伝えます。
  自然と人がつながる 「野良しごとカフェ」 を提案する双子の姉妹。
  資金収支計画書もしっかり付けて、笑顔で支援を訴える。
 
⑤ 山形発(初) → 世界へ
  4年以内にネギ10haを作付けして世界一になる、経営者を5人育てる。
  加工部門も作ることで冬の雇用を増やし、年間雇用者を30人にする。
  世界中に YAMAGATA のネギを普及する、と宣言する33歳の社長経験者。
 
⑥ 富士山頂からあなたへ、届け七色のお茶!
  若い茶師の夢は、世界遺産となった富士山の山頂郵便局から届けるお茶レター。
  世界中で作られる様々なお茶を麓で育て、富士山で熟成させて送ります。
  富士山でしか造れないお茶で、みんなを繋げたい。
⑦ " モノを売るな、価値を売れ!" の伝え方と進め方
  カーネーション農家の3代目。 経営指針を明確にし、6次化やネット販売に向かわず、
  生産に特化して、消費者に思いを伝えてくれる企業と手を組むことで、
  企業価値を創造していきたい。
 
⑧ スムーズな農地継承のための 「離農」 と 「卒農」 を考える 「余年制度」
  「耕作放棄地の再生」 の前に、農地をしっかり継承させていくために、
  計画的に 「離農」 「卒農」 を進められる 「余年制度」 を提唱したい。
いずれの面々も、相当練りに練ったパフォーマンスを見せてくれて、
内容よりもその度胸のよさに感服させられた。
しかも、この機会にたくさんのものを得ようと貪欲である。
こいつらなら、たとえ初期計画はつまづいても、何とかやれそうな気がする。
 
応援資金を会社からいただいて臨んだわけでないので、
札を上げるのは少々慎重になる。
僕が上げたのは、①と③。
③は、すぐにでも農家を紹介してあげられる、という明快な理由からだった。
実際に、早々に徳之島の奥田隆一さんに連絡を取って、
会う段取りまで進めた次第。
 
15歳で島を出た娘が、島に帰って農業をやると言う。
島のおじんたちの驚く顔が見たい。
そして数年後、、、東京集会で会おうじゃないか。
 
栄えある大賞(賞金100万円) をゲットしたのは
⑥番、富士山の茶師。
たしかに、アイディアの独自性、現実的なプランと面白さ、
成功しそう感では、一番だったかもしれない。
 
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僕としては、ビニールに包まれた農業を後世に残したくない、
と叫んだ若者の、
「土壁農業」 というのを見てみたい誘惑が、今も捨て切れずにいるのだが。。。
 
 
いずれにせよ、しっかりと農業の魅力を語り胸を張れる若者たちに、
未来はかかっている。
 
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同期生としてつながって切磋琢磨しあえれば、
志も持続し、パワーも本物になっていくだろう。
 
頑張ってチョーダイ。
 


2013年11月24日

農家と環境に優しい持続的農業を目指して

 

福島の再生、新しい福島づくりをオーガニックの力で!

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11月23日(土)、

「ふくしまオーガニックフェスタ 2013」 に集まったエネルギーに

未来への手ごたえを感じ取り、

閉会後は、 東京からバスを連ねてやってきた

『農と食のあたらしい未来を探る バスツアー』 に合流した。

夜にはそのツアー御一行とともに再び二本松東和地区に舞い戻って

交流会と農家民宿を満喫した。

そんでもって今日は、南相馬まで回って有機農家の取り組みを見させていただき、

渋滞に遭いながらバスに揺られて返ってきた。 東京駅着21時過ぎ。

なんとも濃いい4日間の福島巡りだった。

これをまとめるには、少し熱を冷まさなければならない。

 

  とまあそんな言い訳をして、溜まったメモの整理を急ぎたい。

  11月9日(土)、京橋にある中央区立環境情報センター研修室にて、

  「ネオニコチノイド系農薬を使わない病虫害防除を探るフォーラム」

  が開かれたので参加する。

  主催は 「一般社団法人 アクト・ビヨンド・トラスト」(abt) 。

 

  ネオニコ系農薬については、 以前よりミツバチへの悪影響が指摘されていて、

  EUではこの12月から 3 種類のネオニコ農薬について

  2 年間の暫定禁止措置を決めている。

日本 国内でもこの農薬に対する批判は厳しくなってきているのだが、

  国は逆に使用の拡大、基準の緩和に向けて動いている。

  農家のためと標榜しつつ、実は企業のためだろう。

  現在の僕のスタンスはと言うと、

  生産者が納得できる技術提案をしていかないと変えられない、

  ただ批判だけしてもダメ、という考えだ。

  有機リン系など人体への影響の強い農薬から低毒性農薬

  (ヒトへの影響で言えばネオニコも低毒性に位置づけられる) に

  切り替えてきた 減農薬栽培農家の経過も知っている立場としては、

  農家とともに代替技術を見つけ出していかないと

  現実的な対策にはならないと思うのである。

  批判派と農民がいたずらに対立を深めても何ら得るものはない。

 

  この点については abt さんも同じ認識に立たれていて

まず は農薬に頼らない農業技術を学ぼうということになった。

  生産現場での研究の積み重ねが現在どのレベルにあるのか。

  消費サイドも理解して、ともに歩みたいと思うのである。

  そこで今回推薦したのが、宮崎大学農学部准教授の大野和朗さん。

  大野さんは快く受けてくれた。

  付けたタイトルが、

  「農家が楽になる減農薬農業:天敵を利用した IPM について」。

 " 農家が楽になる " と入れるあたりが現場実証主義者らしい。

 

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IPM (Integrated Pest Management)。

総合的病害虫管理と呼ばれ、

病害虫に対し様々な防除技術を組み合わせて対処することで

人の健康と環境へのリスクを最小限にとどめようという考え方。

ここでは農薬の使用もその一つとして認められるが、

それはあくまでも最終手段となる。

この総合防除の考え方も半世紀におよぶ歴史があるのだが、

残念ながら日本ではまだ普及できているとは言い難い。

例えば、かつて農薬・化学肥料に過度に依存していたオランダが、

IPM に基づいた環境に優しい農業に転換して輸出大国になったのとは

天と地の開きがある。

今もって日本は、単位面積当たりの農薬使用量世界一の座を

韓国と争っている。

 

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IPM 技術の重要な柱が天敵の活用である。 

例えばナスにつく害虫・ミナミキイロアザミウマ。

1979年に東南アジアから侵入した難敵で、農薬に強い。

抵抗性の発達が早く、農薬がすぐに効かなくなるので、

どんどん強力な農薬に頼っていくことになる。

 (農産物の輸入は病原菌や害虫も一緒にやってくる、ということも忘れたくない。

  輸入の拡大は国内農産物の安全性確保も脅かす。)

このアザミウマを食べるのが、ヒメハナカメムシという小さなカメムシだ。

しかし農薬に弱い。

 

ここで大野さんはナス畑での実験結果を披露する。

普通の農薬 ( " 普通 "  とは言いたくないけど・・・) を使った畑と、

天敵に影響の少ない農薬に切り替えた畑の比較。

 

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上の赤い線を見ていただきたい。

農薬を使用するたびにアザミウマの個体数が一時的に減るのだが、

しかし徐々に増えていって、10月から一気に増殖している。

天敵のいないナス畑はアザミウマの天下となり、

結果的に農薬使用量も増える(計20回)。

かたや天敵を保護した畑では、アザミウマはほぼ一定数を保っている。

この間のアザミウマを狙った農薬散布は0、多い畑で2回。

ここまでくるとアザミウマはすでに害虫ではない、

と言ってもいいんじゃないか、とすら思えてくる。

つまり、アザミウマはヒメハナカメムシの餌として適度に存在していて、

両者がバランスを取っているとするなら、

天敵と共存する、居てもよい虫ということだ。

 

害虫を防除するために農薬を散布していたはずが、

天敵がいなくなり、やがて害虫だけが復活して、天下となる。

これを誘導多発生 (リサージェンス) という。

散布回数を増やせば抵抗性の獲得も早まる。

より強力な農薬が必要になる。

ハモグリバエ類、タバココナジラミなども、1990年代から

農薬に高度の抵抗性を発達させた害虫として世界中で問題となった。 

こいつらは、ウィルスも持っている。

 

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さて、天敵を保護するだけでなく、

次には天敵が活躍できる環境づくりを考えたい。 

天敵が必要とする餌(花粉、花蜜など)、代替餌(代替寄主)、越冬場所を

提供するためのインセクタリープラント(天敵温存植物) を植えるなど、

農業景観の植生を多様化する必要がある。

インセクタリープラントには、バジル類やスィートアリッサム、オクラ、

ハゼリンソウ、ソバ、といった名前が挙げられた。

天敵の登場を待つのでなく、

天敵を呼び込む、ほ場にとどめる、能力を高める。

これを保全的生物的防除 (Conservation Biological Control) という。

 

天敵が働かないから農薬が必要、なのではない。

天敵を排除するから化学農薬に依存しなければならなくなる。

また日本はモノカルチャー(単植栽培、一種類の作物だけを植える)

に特化し過ぎてきた。

モノカルチャーでは生態系が貧弱となり、害虫が多発しやすくなる。

保全的生物的防除の視点と対応技術をもっと進化させたい。

 

果菜類(トマト・キュウリ等) では、害虫が媒介する新型ウィルスが現われてきて、

ネオニコチノイド系農薬の使用も増えている。

農家にしてみれば、ウィルスを放置するわけにはいかない。

農薬使用への非難に対しては、

ウィルス蔓延で打撃を被るのは俺たちだ、野菜の値段が上がってもいいのか、

といった消耗な議論が始まる。

 

決め手は、ウィルスではなく媒介する害虫のコントロールだろう。

彼らを、害虫ではなく、ただの虫にしてあげるのだ。

 



2013年11月22日

合成ビタミンC添加なし「有機緑茶」

 

福島・郡山のビジネスホテルに潜り込んでます。

今年何回目の福島だろう。。。

 

昨日から二本松の岳(だけ)温泉で 『第4回 女性生産者会議』 を開催。

ダンナを置いて意気揚々とやってきた 30 名の母ちゃんたちと語り合った。

記念講演にお招きしたのは、宮城・気仙沼の  "森は海の恋人"  の人、

畠山重篤さん

実は数日前に畠山さんもワタクシと同じ患いに陥ったようで

出席が危ぶまれたのだが、何とか辿りついてくれた。

ちょうど一年ぶりの再会。

今回はさらに進化した畠山ワールドを展開してくれた。

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そんでもって今日は朝から二本松市東和地区(旧東和町) を皆で訪れ、

羽山園芸組合さんのりんご園でりんご狩りを楽しませてもらい、

道の駅・ふくしま東和で

「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」 の取り組みを聞かせていただく。

 

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解散後、元気な母ちゃんたちと分かれ、

いわき市 「福島有機倶楽部」 の小林勝弥さんを訪ねた。

こちらは除染ではなく除塩。

津波による塩害で今も難儀していて、

大地を守る会から除塩用の資材を提供させていただいたのだが、

連れ合いの美知さんが会議に参加されたのをこれ幸いと、

帰りの車に乗せてもらって立ち寄ることにした。

ブツと畑を確認し、今後の進め方について勝弥さんと話し合う。

 

そこでなお東京に帰らず、内陸に戻って郡山に辿りついている。

明日は郡山・ビッグパレットふくしまで開催される

ふくしまオーガニックフェスタ2013」 に参加する計画である。

 

この二日間のレポートはどうも長くなりそうなので、

追って報告させていただくとして(もう飲んで寝たいし)、

取り急ぎ前回からの続きで、溜まっている写真をピックアップして、

今夜は終わりにしたい。

 

11月3-4日は、「秋田・ブナを植えるつどい」 をキャンセルして休ませてもらい、

11月5日(火)は夕方まで仕事して、夜のうちに広島に入る。

6日早朝から三原市にある (株)ヒロシマ・コープさんを訪問して、

新しく開発したPETボトルでの 「大地を守る会の有機緑茶」 の

製造に立ち会った。

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これも生産部長の仕事なのって?

これは子会社である (株)フルーツバスケットの タダ働き取締役

としての仕事なのであります。 

朝6時から茶葉の抽出が始まり、4回の試験抽出-成分割合の確認を経て、

充填本番を始める。 いや実に、想像以上に複雑な工程だった。

 

大地を守る会がPETボトルのお茶を販売することについては、

違和感を持たれる方も多いかもしれない。

何を隠そう、僕もその一人である。

やっぱお茶はちゃんと急須で入れて飲みたい。

あるいは冷蔵庫で冷やしたり、マイボトルに入れて携帯するとか。

・・・しかし現実は、PETボトル茶全盛時代になってしまっている。

茶葉そのものの販売は苦戦を強いられ、

急須のない家庭も珍しくないと言われる。

しかもほとんどが当たり前のように

酸化防止剤としてビタミンCが添加されている。

これではせっかく有機栽培で育てた茶葉も農家も、哀しい。

お茶はちゃんと入れて飲むようにしよう(努力目標)、と改めて自戒しつつ、

あくまでも 「どうせ飲むんだったらこれを」 という代替として提案したい。

 

ここでビタミンCについて触れておきたいのだけれど、

お茶やジュース・缶詰などに添加されているビタミンCは、

柑橘などから抽出した天然のビタミンCではなく、

L‐アスコルビン酸など人工的に合成されたものである。

トウモロコシなどのデンプン(ブドウ糖)を化学分解して作られる。

この製造過程で石油を原料とした薬品も用いられる。

化学構造から天然のものと同じとされ、

壊血病予防など健康に必要な栄養成分と語られたりするが、

そもそもビタミンCは酸化されやすい性質が利用されている

ということを忘れてはいけない。

つまり自身が酸化することによって食品の酸化を防いでいるわけで、

酸化されたビタミンCには栄養的価値はなくなっている。

ビタミンCが酸化しつくされた後の品質劣化は急激である。

しかもこの酸化反応の過程で、

合成ビタミンCでは活性酸素が発生することがつきとめられている。

放射能講座で毎回のように登場した 「活性酸素」 というヤツ。

ガンや生活習慣病や老化の原因になる。

 

また原料として使用されるトウモロコシは100%輸入であり、

遺伝子組み換えでないとの IPハンドリング(分別生産流通管理) の

証明書確保はほぼ不可能の世界である。

原料として有機栽培の茶葉を使用しても、

製品は 「有機茶」(有機JAS認定) にはならない。

 

外で買うならこれを、ということでローソンさんにも提案中。

国内産(今回の生産地は鹿児島) 有機栽培茶葉100%

かつ ビタミンC無添加「有機緑茶」 です。

なので賞味期限は短く(それでもしっかり殺菌してます)、

常温で9ヶ月となってます。

 

さて、トピックをもうひとつ。 

11月8日(金)、月一回酸化、じゃなくて参加している

丸の内・行幸通りの 「行幸マルシェ × 青空市場」。

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今回は、人参・里芋・白菜・・・と冬物が出そろってきたところで、

千葉・さんぶ野菜ネットワークの野菜一本で勝負した。 

 さんぶからも二人の生産者、吉田邦雄さんと下山修弘さんが

売り子として出張ってくれた。

 

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さんぶの野菜は、ここで食べられます。 

とさりげなく 「Daichi & keats」 のPRも。

おススメは、農園ポトフと農園タパス。 ぜひお立ち寄りください。

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せっかく一日出張して来ていただいたので、

主宰者である永島敏行さんとの記念写真を一枚いただく。

「おう、おう、山武ね。 知ってるよ、もちろん!」

と気さくに応じてくれた。 

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(永島さんをはさんで、左が下山修弘さん、右が吉田邦雄さん)

 

今月は、丸の内のシェフたち向けに、

マルシェ - 試食会 - 現地視察ツアーと、

さんぶ野菜を前面に出しての連続攻撃をかけているのであります。

 



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