2008年11月 3日

新米農業者の八年目日記

 

今頃、秋田・五城目の馬場目川上流では、

大勢でブナの植林が行なわれて、お餅つきやコンサートで盛り上がってるんだろうな、

なんて思いながら積まれた書類を整理する一日。

そんな時に、山形は庄内地方、鶴岡市の月山パイロットファームから、

『月山ふるさとだより』 という一枚の通信が送られてくる。

今月号は、冬に向かう日本海・庄内地方の空気が伝わってくるような文面だ。

 

  稲刈りも終わった庄内平野。

  11月に入ると収穫は稲から大豆に移り、豊穣の大地がなんとなく寂しい光景となりました。

  この時期になると曇りや雨の日も多くなり、気温もぐっと下がり、

  華やいだ秋の空気が変わったのがわかります。

  もうすぐ冬です。

  そして実りの秋の終盤になるとやってくるのが、秋冬野菜の収穫。

  赤かぶ、青菜(せいさい)、大根、長ネギ、からとり芋、青大豆、赤唐辛子と目白押しで、

  天気と相談しながら、雪が降るまで目いっぱい収穫が続きます。

  そしてこの時期の収穫物は、私たちにとっては漬物の原料。

  本格的な漬物シーズン到来で、漬け込み、パック、出荷と、

  工場もフル回転になってきます。 ...............

 

藤沢周平の物語の風景まで浮かんできて、

ひととき海を眺めてしまう (こちらは東京湾ですが...) 。

厳しさを淡々と受け止め、静かで、しかし凛とした人々の生き様が見える。

 


この通信に 「新米農業者の八年目日記」 というコラムがある。

代表の相馬大(はじめ) さんが書いている。

「新米農業者」 などと称しているが、立派な若きリーダーである。

ぜひここで紹介したい。

 

  稲がなくなった庄内平野。 あとは冬を待つのみ、というこの時期。

  お漬物中心に移っていく私たちですが、そんな中で今年は土づくりに励んでいます。

  これまで私たちは、堆肥や米ヌカ、緑肥を中心として土づくりをしてきましたが、

  それとはまた違う農法を聞き、目から鱗。 夏に畑の神様から教えてもらったことを

  試してみようと、ワクワクしながら畑に入っています。

  しかし、土づくり、土づくりと皆が口にし、私たちも長い間取り組んできましたが、

  本当に様々な取り組みがあり、その到達点も千差万別。

  目指す人の数だけ、方法が組まれてきています。

  もちろん気候も違えば土も違う。 自然環境から受ける影響のほうが遥かに大きい農業

  ですから、もちろん違う方法になって当然ですし、それだけ奥が深く、完成というものも

  ないのでしょうが、それでもものすごいレベルに達している人たちは確かにいます。

  ここ庄内にも、田んぼの神様と崇められる人もいるし、有機栽培の猛者達もたくさんいます。

  そしてその畑の神様も、まさに「神様」で、

  豆の葉を見ただけで 「カルシウムが足りない」 と看過するほど!

  (中略) あの眼力と理論だった自信満々の話は、まさに魅力たっぷり。

  ぜひ試してみよう!

  というわけで、せっせともみ殻を運んでいるわけです。 しかしその方法は、

  とてつもない努力が必要・・・。 何事も甘くないというものです。

  まだまだ一部の圃場での実験ですが、それでも来年どうなるか、とっても楽しみ。

  新しい扉が開かれますように! 

 

これは、今年の8月に庄内で開いた「全国農業後継者会議」で、

西出隆一さんの指導を受けたことに端を発している。

枝豆の畑で、かなり手厳しい批評を貰いながら、大さんは、したたかに吸収したようだ。

e08110401.JPG

(後継者会議で畑の説明をする大さん)

 

生産者会議は全国あちこちで、年間10回くらいやっている。

その都度いろんなテーマで講師を招いていて、

生産者はそれぞれに必要な技術なり思想なりを学んだり、批評し合っている。

「参考にならん」 とか豪語しながら、実はしっかり持ち帰って試す生産者もいたりする。

ただ栽培技術というのは、一筋縄ではいかないもので、

勉強会をやったからといって、何かが急激に変わるということはない。

しかし、試験的にもやってみる、部分的に取り入れてみる、という反応が見えたとき、

それこそがぼくらにとっての喜びとなる。 やった甲斐があったというものだ。

 

厳しい冬に向かう庄内から、

ワクワクしながら畑に入っている・・・・・ なんて素敵な便りだろう。

1年では結果は出ないかもしれないけど、じっくりと積み重ねて、

どうか我がものにしてほしい。

挑む者の前に、新しい扉は現れる。

 


Comment:

最近まめにアップされていてうれしいです。
その後腰の調子はいかがですか?
ところで、畑の神様の授業、楽しそうです。
もみがら、どう使うのですか?
古い(2000年だったかな?)現代農業で、畑の神様の一の字農法を読みました。
肝心なことは(というより、込み入ったところは)かかれていなくて、でも、農法の骨格については書かれていました。
その号に確か小松先生が大地のタイツアーについて書かれていました。

from "てん" at 2008年11月 7日 23:58

てん様

パソコンの故障と代替機へのデータ移動のドタバタで、てんさんのコメントを見落としてしまいました。確認とアップが大変遅れましたこと、お詫びします。
しかもこのところ「まめにアップ」できてなくて、極めてバツが悪いです。
モミガラは微生物の餌となるもので、それによって有用微生物(腐植)が増え、保肥力がアップするという考え方かと理解しています。相馬さんも、西出師の話に土づくりの進化のポイントを掴まれたのかもしれません。来年どんなことになっているか、期待したいですね。
それにしても2000年の「現代農業」を記憶しているてんさん、スゴイ方ですね。今後ともお手柔らかにお願いします。

from "戎谷徹也" at 2008年11月24日 22:50

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