食・農・環境: 2010年11月アーカイブ

2010年11月29日

5668

 

てんさん、農民たかはしさん、まっちゃん、Anonymousさん、sakuradaさん、

コメントを頂戴しながらすぐに返事できずにスミマセン。

遅ればせながらコメント追加してますので、ご確認ください。

 

それから、訂正です。

前回の日記で、自分が発言している写真のところで、

 「背景に映っているのは、高知県馬路村のPRコピー。

  『日本の風景をつくりなおせ』 (羽鳥書店) の著者、梅原真さんのデザインによるものらしい。」

と書いてしまいましたが、思い込みによる記述でしたので削除しました。

お詫びいたします。

でも梅原さんの仕事は、地域力を考えたい人、デザインを目指す人は注目です。

上記の著書に加えて、お詫びついでに紹介したい一冊を。

『おまんのモノサシ持ちや! -土佐の反骨デザイナー・梅原真の流儀- 』

(篠原匡著、日本経済新聞出版社刊)。

 

で、早稲田で飲んだ翌24日、当会六本木分室で開かれた

「生物多様性農業支援センター(BASC)」 の理事会に、夕方遅れて出席する。

僕は理事ではなく、理事に名を連ねる藤田会長の代理出席である。

ここだけの話(ある意味当然のことだけど)、会長の代理は各分野にいて、

米とか田んぼとかのキーワードがあると指名がかかってくる。

場合によっては代理の代理で突然に指令が降りてくることもある。

困るのは、時々思いつきで声がかかることだ。

光栄と思うべきなのだろうけど、

「エビスダニ、この日は暇か?」 とか聞かれると、ムッとなるね。

ヒマです、と言える日がほしい・・・・・

 


内輪話はやめよう。 あとがコワいし。

話はBASCの理事会である。

原耕造理事長からこの間の活動報告と今後の方針案が説明され、理事の方々で審議される。

正直言って、厳しい運営状況である。

たくさんの有識者や団体からの支援と熱い期待を受けて、

生物多様性を育む農業を支援するナショナルセンターたるべく設立された組織だが、

独立した事業として確立させることは容易なことではない。

理事代理の立場で無責任な論評は避けるが、

田んぼの生物多様性を育て確認するノウハウはそれこそ多様にあって、

田んぼの生き物調査にしても、手法や価値の伝え方は農家自身の手で発展させられる

ものだったりするので、事業ベースとして (つまり収入源として) 展開するには

オリジナルなテキストや人材派遣(講習会などの開催) だけでなく、

実践する農家を魅力的にネットワークして新たな価値を創出する手立てを

考えなければならないように思える。

難しい課題である。

 

久しぶりにお会いした NPO法人たんぼ 理事長の岩淵成紀さんから

とても素敵なクリアケースをいただいた。

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この秋名古屋で開催されたCOP10 (生物多様性条約第10回締結国会議)

に向けて制作された 「田んぼの生きもの全種リスト(簡易版)」 の表紙デザインだ。

 

「田んぼおよび田んぼ周辺に生息する動植物の全種リスト」 -5668種。

14名の専門家によって作成委員会(委員長:桐谷圭治氏) が結成され、

足かけ4年、いや5年になるか。 3度の改訂を経て、5668種がリストアップされた。

その間、100人近い専門家が手弁当で協力している。 

 

田んぼとその周りには5668種の生きものがいて、食べあいながら共生している。

その曼荼羅のように織り成される生命のネットワークによって、

それぞれの生命もまた支えられている。 もちろん私たちも、だ。

この土台はきわめて強靭ともいえるし、繊細な綾のようでもある。

宇宙のごとく深遠な世界が、ずっと農というヒトの営みに寄り添うようにあって、

あたり前に維持されてきた・・・・のだが。

リストは、そんな世界の見える化への執念の賜物だ。

国家的財産が出現したと言ってもいい。

「5668、5668、世界をオオーッと驚かせた数字です。 皆さん、覚えてくださいね」

岩淵さんが熱く語っている。

 

厳しい運営の話とは別に、楽しかったのはそのあと。

残った数名で、例によって 「懇親会」 という名の一席。

福岡から来られた宇根豊さんと、宮城から来た岩淵成紀さんの両巨頭を囲んで

農政談義からミクロの話まで花が咲く。

なかでも岩淵さんが取り出したⅰPad をめぐって噴き出した論争は、

二人の個性を面白く表現していて、

ちゃんとやってくれるならお金を払ってもいいと思ったほどだ。

" 先端技術が生み出した世界が広がる道具 "  を、生きもの曼荼羅の世界から見つめる。

宇根豊 Vs.岩淵成紀。 どう?

 

さすがに三日連荘で、疲れが出てきたか・・・

部下の視線も厳しい今日この頃。

 



2010年11月27日

「地域の力」 で結び直す希望を

 

今週もよく飲んだ一週間だった。 

いつも飲んでると思われているかもしれないけど (それも否定できないけど)、

こんな会合続きの週はそんなにはないです。

月・火・水そして金と。

気がつけば週末で、財布は空っぽだし、出るのは溜め息のみ。

 

まずは月曜日、22日の夜。 東京湾アオサ・プロジェクトを共同で運営する

NPO法人 ベイプラン・アソシエイツ(BPA) の方々と一席。

場所は船橋。

BPA代表で船橋漁協組合長・大野一敏さんの船 「太平丸」 直送の魚が

食べられる居酒屋 「轟」 (とどろき) にて。

 

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結局ただの飲み会になってしまった感もないわけではないが、

このところやや精彩を欠くアオサ回収-資源循環の取り組みを再活性させることを

確認できただけでも、まあ成功だと思おう。

2001年、『アオサ・プロジェクト 出航宣言』 で掲げたスローガン、

"  海が大地を耕し、有機農業が海を救う!  " 

をもう一度思い起こして、ネットワークづくりを再開しよう。

 

東京湾アオサ・プロジェクトを結成して10年。

大野さんも組合長に復帰し、僕らも実に忙しくなった。

でも、同じ問題に悩む人たちは、全国各地に増えている。

漁民と農民、上流と下流をつなぐことで、この課題を飛び越えることが出来るはずだと、

感性先行で取り組んだ僕らのプロジェクトは間違っていない。

この確信は、いっそう深まってきている。

しんどいけれど、誰かが動かなければならない。

 

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- 酒は純米、燗ならなお良し -

「酒造界の生き字引」 と呼ばれる上原浩大先達の言葉を見つめながら

ぬる燗の清酒が進む。

「日本酒は温度を変えることによって味わいが変わる稀有の酒だ」

(上原浩著 『純米酒を極める』、光文社新書より) ・・・・まさに。

 

続いて翌23日(火)。 勤労感謝の日でも僕らは働く。

-と言いながら外出許可をいただいて、

20年ぶりくらいになるだろうか、

もう来ることはないだろうと思っていた母校のキャンパスに足を踏み入れる。

 


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都の西北、早稲田の杜に - 

アルバイトと大学当局との喧嘩、虚しい党派闘争、合間に勉強とお酒の訓練、、、と恋愛。

そんな喧騒の思い出ばかりの大学時代だが、多少の母校愛は残っていたか、

思わずカメラを取り出してしまった。

校歌に謳われる  " 進取の精神 学の独立 " は今も息づいているのだろうか。 

ま、僕の場合は  " 新酒の精神 "  てところで、偉そうなことは言えないけど。

 

で、この日行なわれたのは 「第2回 地域力フォーラム」 という集まり。 

今回のタイトルが 「持続する価値観と文化のために-自給の力、場所の力、農の力」。

 

グローバリズムが例外なき自由貿易へと突き進む時代に、

地域の力を考える - そのココロは。

哲学者・内山節さんが基調講演で語る。  

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ムラとは周辺の自然も含めた暮らしの空間であって、

すべての生命活動が見える世界だった。 

自然と人間の生命活動が連鎖しあう世界では、互いが助け合う 「関係」 があった。

それが地域という主体である。

しかし手段としてあった貨幣や市場 (しじょう) がいつの間にか目的と化して、

基盤である生命活動が見えなくなってしまった。

 

地域の自律を取り戻すために、地域を越えた関係を築き直す必要がある。

「開かれた地域」 によって、新しい都市と農山村の関係を取り戻したい。

都市にも多様な共同体が生まれ、

それぞれの共同体が、自分たちの山、自分たちの自然を持ち、

自分たちのふる里となる、そんな 「結びつき」 を。

そしてTPPなんてどうでもいい、と言えるような農民をつくっていきたい。

自然とともにある持続、持続する価値観と文化を見つけ直し、

新たな 「地域主義」 を創造しよう。

地域をデザインする鍵は 「関係」 である。

 

聞きながら、夕べの  " 飲み "  を思い返している。

上流と下流のつながりで資源循環モデルをつくる。

これもまた内山さんの言う 「地域を越えた関係」 であり、

「開かれた地域主義における都市と農山村」 の関係の修復でもあり、

「地域と多層的な関係」 づくりなのではないか。

 

共催団体として5分間のスピーチを求められていて、

当初、僕の頭の中では、山間地に移り住んで有機農業をベースに村の活性化に

貢献する若者たちを支援する試みを始めている、といった事例があったのだが、

内山さんの視座でアオサも見つめ直してみようか、そんな気になった。

 

まとまらないまま登壇し、出たとこ勝負の5分間。

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農文協電子制作センターの田口均さんが写真を送ってくれたので、アップしてみる。

背景に映っているのは、高知県馬路村のPRコピーです。

 

地域を拠点にした活動事例を発表された方が8名。

長崎・五島で食から衣料、エネルギーの自給まで進める歌野敬さん。

佐渡で宮司を務めながら農業・漁業・文弥人形の保存と興行活動・除雪オペレーターなど

多職の力で島の活性化に挑む臼杵秀昭さん。

新潟と富山で、新しいスタイルで福祉事業を展開するお二人の女性。

柚子しかない過疎の山村を逆に  " 売り "  にして発展させた

馬路村農協組合長、東谷望史さん、など。

皆さんとても元気がよくて、しかもここに至るプロセスが刺激的なのだ。

頑張ろう、という気になった参加者も多かったのではないだろうか。

 

地域の力を取り戻す。

それは価値でつながる共生の 「関係」 づくり、なんだね。

世界が 「市場価値」 に呑まれてゆく中で、

いま僕らは次の希望のタネを播いているんだ。

そんな気にもなって、関係者たちと、また一杯やってしまう。

俺たちの学生時代にはなかったようなコジャレた店で。

昔入りびたった 「水っぽい酒、まずい焼き鳥」 という看板を掲げていた汚い店は、

見つけられなかった。

 



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