あんしんはしんどい日記: 2008年2月アーカイブ

2008年2月22日

「大地を守る東京集会」 直前号

 

2月と8月というのは、企業にとって比較的ヒマな時期、と聞いたことがあるが、

大地の場合、2月はいっちゃん落ち着かない時だ。

何と言っても、年に一度の "生産者と消費者の大交流会"

-通称 「東京集会」 が開催されるのが2月である。

(加えて事業部門では、今期の集約的な作業や来期に向けての計画作りが佳境に入ってくる。)

 

その東京集会がいよいよ今週末に迫ってきて、

あらゆる作業の総掛かりが、あちこちで行なわれている。


火曜日(19日) の夜は、印刷機コーナーに人が並んでいた。

各専門委員会が一斉に会場で配布するリーフレット類の印刷に入ったのだ。

かくいう私も、米プロジェクト21のやっつけチラシの版を持って、

「なんでとめよう会 (専門委員会 「大地・原発とめよう会」 のこと) が2台とも占拠してんだよう」

とかガンつけたりして......

 

展示用のパネルや資材の準備も、だいたいが去年の焼き直しとなって、

ちょっと恥ずかしいが、どうにも手が回らない。

 

そんな合い間にも、土曜日の地区での集会 (だいち交流会) 会場の担当の方から、

専門委員会の説明用スライドの内容についてチェックの依頼あり、覗いてみれば、

その最後のページには、

タイトルが 『米プロジェクト21のゴールは-』 とあって、下が空欄である。

ここは書け、というメッセージのようである。

ええい、これでどうだ!と返信する。

   生産者が誇りをもって米を作り、それによって美しい田園や環境が

   当たり前に守られる世界を取り戻したい。

   きれいな水が大地を潤し、いつまでも持続可能な「食と農」の営み。

   それが社会の土台として、コモンセンスとして蘇るまで、

   米プロジェクト21の役割は終わりません。

   たとえ組織が消滅しても-

   未来に向けて種を蒔き続ける百姓とともにありたい。

 

また自分が参加する会場では、「農薬や抗生物質について話をしてほしい」 という

難題が降ってきていて、さてさてどうまとめるか......ようやく頭の中の整理にとりかかる。

 

情報企画室からは、中国産ギョウザ事件に関して、

会員さんから届いたたくさんの連絡便を毎週の情報紙 「ツチオーネ」 で紹介するので、

コメントを書けとの命令。

締め切りを過ぎて、いよいよ催促が来る、という直前にこっそりメールで送る。 

書いた内容は、先週の 「よみがえれニッポン」 で喋ったことにちょっと色をつけただけ。

でも、間違ってないと思っているので、これで許してチョーダイ!

 連絡便への感謝は忘れずに入れる。

 

日曜日の全体集会 (正式名称は 「2008だいちのわ」) での

「身近な環境セミナー」 で講演をお願いする宇根豊さんに連絡して、資料の確認。

また送られてきた資料が、重い、というか "思いが詰まっている" 論文である。

恐る恐る、聞く。

「これ、会場で全員に配布するものとしてお考えですか?」

「使い方はお任せしますよ」 の返事で、ちょっと安堵するも、

大地のエビスダニとはヤワなやつだ、と思われたに違いないとか小心な不安を抱いたりして。

 

あちこちに泣きや言い訳を連発しながら、

いよいよ残された時間も一日のみ。

得意の "開き直り" の日がやってきた。

(2月21日から22日に日付が変わったところです。)

 

では会員の皆さま。

土曜日は横浜で、

日曜日は大手町で、お会いしましょう。

 

日曜日は、開会直後の藤田会長の挨拶から聞いていただけると嬉しいです。

何か喋りますから (当たり前か) 。

 



2008年2月18日

『よみがえれニッポン -食べることを考える』

 

16日(土) 。

CSテレビ 「朝日ニュースター」 の生セッション番組

『よみがえれニッポン』 に出演する。

 

今回のテーマは 「食べることを考える」。

様々な食品偽装が治まらない中で、中国産ギョウザの騒動。

いったい何が原因で、日本の食はどうなったのか、何をどう変えていったらよいのか-。

長期的な視野で語り合いたい、ということでのお声掛かりである。

 

場所は原宿、明治通り沿いにある朝日ニュースターのスタジオ。

若者たちが闊歩する竹下通りを複雑な心境で歩いて

(20数年ぶり。ということはこちらの目線も変わっている)、

午後3時前、スタジオ着。

 

キャスターのばばこういちさん(放送ジャーナリスト)、安藤千賀さん(フリーアナウンサー)、

他のゲスト陣と顔合わせ、打ち合わせに入る。

用意された台本を見て、さすがに生番組である。

分ならぬ秒刻みの進行表が書かれていて、一気に緊張が走る。

 

打ち合わせも 「だいたいこんな感じで~」  という調子で、

慣れたレギュラーの方にはそんなもんなんだろうが、

こちらはアバウトであればあるほどドキドキ感が募ってくる。

しかも 「コメントは分かりやすく、コンパクトに」 などと言われると、

瞬間、頭の中が白くなったりする。

 

午後4時半~ 本番開始。

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上の写真は職場の仲間がテレビを見ながら撮ってくれたもの。 こんな感じです。

ゲストということで真ん中に座らせられて、

ばばさん、安藤さんからの質問に、パッパッと応えていかなければならない。

14年前の 「朝まで生テレビ」 のように、マイクを握り締めて話しまくるのとは違うのだ。

 

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「では戎谷さん。問題の本質はどこにあるとお考えですか?」

「消費者として考えなければいけないことは何ですか?」

他のゲストの方の発言を受けて- 「その辺は、戎谷さんはどう思われますか?」

 

という感じで発言を求められ、それなりに応えていたつもりであったが、

実際は 「それはですねぇ」 「はい。え~」 「あのぉ~」 の連発である。 冷や汗...

 

細切れのコメントで、しかも話題はどんどん進行するので、話を深めることはなかなかに難しい。

私が伝えられたのは、こんな程度である。

・今回のギョウザ事件の本質は、日本の食品企業がひたすら 「安さ」 を求めてコスト削減に走り、

 海外に工場を移転して、さらにそこでも生産効率を追求してきた歪みだと思う。

・消費者が求めてきたという意味では、消費者にも責任の一端はあろうが、

 かといって消費者は単純に 「安さ」 だけを求めているわけではない。

 同じ品質のものが並んでいたら安い方を買うだろうが、それも 'まさか危険なものではないはず '

 という、ある種の良心的な 「信頼」 が根底にあるからである。

 それすら裏切って安さを追求するのは、作り手のモラルの退廃以外の何ものでもない。

 実際に多くの食品メーカーは、中国がダメだからとタイに発注先を移しているだけである。

・39%にまで落ち込んだ自給率の問題も、これではまずいとは誰もが思うことであるが、

 一方で、国内では輸入量の7割近い2150万トンもの食品が捨てられているのが実態である。

 「安さ」 の裏で、私たちはどんなに食べものを無駄にしていることか...

  これは輸出国に対しても、地球にとっても失礼な話である。

・食の安全性の確保は社会の土台であり、子どもたちの未来を守るものだ。

 国の政策も変えなければならないが、農業が食料の生産だけでなく、

 国土だけでなく環境の保全にも貢献していることを伝えていきたい。

 そういう意味では、流通や販売者にも重要な責任がある。

 '生産と消費のつなぎ' の修復こそ、我々の課題である。

 

本当は、価格に隠された外部不経済の話や、食と環境のつながりなどを語りたかったのだが、

いかんせん時間がなかった。

 

もっと上手に話せるようになりたいもんだ。

そのためには、普段考えていることをきちんと言葉で整理しておく作業が必要なんだよ。

そんなことを思いながら、番組途中でひらめいたこと。

  右脳と左脳の間には 「あのう」 という脳が存在する。

  あ脳は思いやイメージを言葉に置き換える機能で、当事者にとってはものすごいスピードで

  働いているのだが、メディア的には間の抜けた不要な時間とみなされる。

 

どうでもいいことをふと思いついたりするバカな私でした。

 

番組終了後、記念撮影。

翌日、安藤千賀さんからお礼と一緒に送られてくる。

「とても分かりやすく、いい話だった」 と、社交辞令であったとしても、嬉しい。

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前列中央が、もう一人のゲスト 「有限会社 良品工房」の白田典子さん。

右は、レギュラーのITキャスター、中村輝雄さん (日立ソフトウェアエンジニアリング)。

後列左は、当番組のご意見番(レギュラー)、マルチタスクデザイナーの武者廣平さん。

中央がばばこういちさん。右が安藤千賀さん。

 

レギュラーの方はさすがに落ち着いていて、私の言えなかったところを

いくつかフォローしてくれた。

 

皆さんに感謝しつつ、いい経験をした一日であった。

 



2008年2月 5日

メンテナンス中の出来事いろいろ

 

「メンテナンス中」 がちょっと長引いただけで、ダレるようではブロガー失格といわざるを得ない。

ここは厳しく己れを叱咤して、先週を振り返らせてみたい。

 

まずは1月29日(火)、茨城・つくばで生産者の新年会に参加する。

今回は北浦(現行方市) の卵の生産者・濱田幸生さんから、

茨城県で進みつつある有機農業関係のネットワークづくりの話をしていただく。

新年会といっても、ちゃんと勉強会つきである。

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濱田さんがつくろうとしているのは、

有機農業推進法の施行によって、

各都道府県レベルで有機農業の推進策を策定するようにと、

国から方針が下りてきたことに対して、

下(現場) からの提案とモデルを作っていこうぜ、というものだ。

そこで結成されたのが 『茨城県有機農業推進フォーラム』 である。

生産者だけの集まりにせず、茨城県内の環境NGOや研究機関、流通、自治体も連携して、

有機農業を発展させるための様々な構想や企画アイディアが盛り込まれている。

 

有機農業農家の横のつながりを作るためのマップづくり。

有機農業の普及支援。そのための研究。

消費者が体験できる有機農業公園や、交流を活発にさせるお祭りの開催。

新規就農のお手伝い。

環境NGOも参画しての環境保全型の地域モデルづくり、などなど......

まずはみんなが集まり、語り合える 「フォーラム」 をつくりたい。

 

行政任せにしないで、俺たちで作り上げていこうよ。

やりたいことは一杯ある。やれることはどんどんやろう、ってワケだ。

まったくアツいね、濱田さん。

ちょっと最初から風呂敷を広げすぎている気がしないでもないが、

イメージのウィングは広くもって、たくさんの人に参画してもらいたいのだ。

茨城に入植して20数年。

「俺は茨城が好きなんだ」 と言って先輩農家に呼びかけている。

放ってはおけないよね、皆さん。

時代が、未来が、俺たちに 「頼む」 と言ってきてるんですよ。

 

あとは楽しい(つらい?) 新年会。

 

「(野菜作りの奥義のようなもの? が) だいぶ見えてきた。 もう少しです。」

とスゴイ台詞を吐いた中根剛さん。

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(写真は中根グループの方々。右から二人目が中根剛さん)

 

お父さんの急死を乗り越えて、立派になってきた。

 

「エビちゃんのブログはちょっと難しいな。 もうちょっとやさしく書いてくれないと。」

と意見をくれた堀田辰郎さん。

ちゃんとチェックしてくれているだけでも、感激である。

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「あと一年で長男が(大学を卒業して) 帰ってくんだ。 そしたら書類もパッと出せっから。」

そういう問題ではないと思うんですけど、樫村健司さん。

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いずれにしても、その下にまだ4人の男の子が控えていて、彼の茨の道はまだまだ続くのである。

 

いつも仲良し、小野寺孝一・きよ子夫妻。

どんな時も明るい '気' を送ってくれる。

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二次会では、濱田さんと有機農業推進法や有機JAS制度論議。

部屋に戻っての三次会は......ここでは言えない。

「こんな○○作ってちゃダメだよ」 「俺だって必死にやってんだぁ」 -×●△!#$↑%!~

でご想像いただきたい。

ま、今日も何とか最後まで頑張った (別にそれが偉いわけではないが)。

 

帰ってきた翌30日(水) の夜。

二日酔いがようやく醒めたと思ったら、今度は新宿までお出かけして、

高校時代の同級生が集まっての飲み会に参加する。

実は、わが母校が春の選抜高校野球の 「21世紀枠」 の四国代表に選ばれていて、

ついに甲子園か!

の期待が高まっていたのですが、最終選考で脱落。

気の早い仲間が祝杯を挙げるべく居酒屋を予約してしまっていて、

まあもったいないから、残念会がてらの新年会と相成った次第。

事前に申し伝えられていた議題 -「甲子園初出場にあたって、OBとしてあるべき姿勢の件」

をめぐって、要するにな、我々OBとしても品行を改めんとあかん、ちゅうこっちゃ。

お前のことやけんな。ワレ(お前) に言われたないわ...と、昔の仲間と楽しく飲んだのでした。

ま、いい夢見させてもらったよ。 有り難う!後輩諸君。 夏もガンバってね。

 

重たい頭で翌日、それでも頼まれていた原稿を1本、書いて送る。

依頼者は、棚田の堰の保全活動で紹介した喜多方の浅見彰宏さん。

活動報告書をまとめるのに、賑やかしの一文を、と依頼されていたもの。

2月9日の大和川交流会の前に宿題が出せて、ホッとする。

 

2月2日(土)は、

東京で 「田んぼの生き物調査プロジェクト」 のシンポジウムに参加する。

 

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田んぼの生きものの種類や数を調べることから、実はすごい世界が見えてきている。

その意味を様々な角度から検証し、次の地平を切り拓こう、というもの。

'農業が環境を創造する' -その価値を目に見える形で指標化して、

それに対して農産物価格とは別の形で支援(保証) する仕組みがつくれないか......

そんな問題提起があった。

 

帰り際、セッションの司会をされた宇根豊さんに挨拶する。

「24日の大地の東京集会でも、お世話になります。 ヨロシクお願いしますね」

「戎谷さんから出されていた課題に、今日ひとつ答えたから」

 

そんなこんなの間にも、餃子報道である。

この整理は、もうちょっと待っていただきたい。

現時点ではっきりと言えることは、

 1.原料の野菜に農薬が残留していた、というような話ではない。

 2.これは製造-流通の日常的業務(常態) から発生したものではなく、

   極めてイレギュラーな、つまり想定外の 「(犯罪的)事件」 の色合いが強い。

その程度である。

 

じゃあ、どうやって身を守ればいいのよ?

-(あなたにとって) 信頼できるところから買ってください、というしかありません。

 「中国産」を捨てたからといって、 「安全を保証」するものではありません。

 

目に見えない「悪意」の存在を想定してしまったら、100%安全な場所はない。

「危険」 因子が設定できない以上、「安全」 は証明できない。

そのような不気味な 「事件」 だというのが、私の感覚です。 

 

素材から確かめられるもの、それが保証されることが 「安心」 の根拠だと思うが、

じつは生産から流通までのサプライチェーンで、それを担保するためには、

それ相応のコストが必要である。

安さで競争する人たちは、それを伝える努力をするわけでもなく、

からくりで構成された 「消費者ニーズ」 を盾に周辺コストの引き締めをはかる。

その結果のような気がする。

これは 「この国の生産・消費構造」 が持っている本質的なリスクだと思う。

 



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