2007年11月 6日

米国・コーン視察レポート(3)

 

あれやこれやと動き回れば回るほど、休みは消え、肉体は鈍重になり、仕事は溜まる。

ブログのネタも増えるけど、書く時間はなくなる。

それでもって 「好きなことして」 とか言われた日にゃ、一瞬にして "キレる中年" となる。

......と、泣き言というか言い訳から始めて、米国視察報告を再開します。

とにかくこれを終えないと次に進めないし。

 

10月22日(日本では23日)、

カーギル本社でのレクチャーと情勢分析を終えた我々は、

ミネアポリスから飛行機で1時間半ばかり、イリノイ州ペオリアへと飛んだ。

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しかし、この飛行機が30人乗りほどの、ちょっと古っぽい感じで、

一人しかいない長身の女性客室乗務員が身を屈めて細い通路を歩くようなやつ。

 

しかもチケットでは窓際のシートのはずだったのに、

そこには1.5席分くらいのサイズのお姉さまが先に陣取っていて、

こちらを見て立つわけでもなく、堂々と座席を指差しながら何やら早口で聞いてくる。

こっちに座ってても良いかしら?-とか伺ってくれているのかと勝手に想像して、

「OK,OK」と応えたら、ハーッハッハーと笑い出す。

もしかして、「アタイの膝の上にでもどう?」 とか誘ってくれてたんだろうか。

尻に敷かれた気分でずっとちぢこまって、

機体が傾いた時に、なるべく目を合わせないようにしながら景色を垣間見る。

ボクは・・・・・この大陸の色あいを上空から確かめたかったんだ。

でもジャンボなお姉さまは、そんないたいけな外国人の気持ちなどお構いなく、

雑誌の女性モデルの写真を食い入るように眺め、私の視界を塞ぐのだった。

しょうがないから、哲学者のように掌を顔にあて、眠ったふりをする。

こんな飛行機では、本を読む気にもならない。

時折、空を飛んでるという実感というか緊張感が、睡魔を凌いで迫ってくる。

 

ま、そんな話はどうでもいいとして(今日は愚痴っぽい)、ペオリアである。

 

夕刻、空港に降り立った時は、冷たい雨だった。

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その日はペオリア泊。
翌日は快晴。

レンタカーでホテルから約1時間突っ走り、

イリノイ州南部に建設中のエタノール工場を視る。

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この工場は地元260軒の農家の共同出資によって作られ、

協同組合の方式で運営される。

出資農家は一定量の原料供給義務を負うことになる。

 

建設費は125万ドル(この数字のメモはちょっと怪しい)。

だいたい1~3%が国からの補助金。

加えて地元からの雇用によって州からも助成される。

 

2003年から計画がスタートし、昨年10月に工事が着工。

ほぼ95%まで完成し、12月に稼動予定。

生産量は1億4500万リットル。相当するコーン原料は約30万トン。

 

生産効率としては、1トンの原料コーンの3分の1がエタノールに変わり、

3分の1が搾りカス、残りはCO2となって放出される、という説明。

エネルギー源は、くず石炭。

地域一帯が石炭鉱床の上にあり、潤沢に手に入るのだそうだ。

 

要するに、これは代替エネルギー政策には貢献できるのだろうが、

CO2とか温暖化対策と連動しているものではない。

まあ、京都議定書を批准しない国なのであるから、彼ら的には矛盾はないのだ。

 

野積みされたコーンの山。

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水分含有量が増えてもドライアイスを使って調整可能なので、コーン自体の規格は緩い。

 

前にも書いたが、問題はこれからである。

原料コーン価格の上昇に加え、エタノール価格の下落がすでに予想され、

いま新規に建設されている工場はほとんど採算割れを起こすのではないか、

との懸念が計算されつつある。

建設を止めて様子見に入った工場もあるらしい。

 

エタノール工場の建設には、カーギル社も資金的支援をしていると聞いているが...

と質問してみる。

 

それは農家が建設資金を調達するのに頼まれて '信用' を提供するレベルだと言う。

彼らにとって、あくまでも本脈は農家とのパイプであって、

エタノール景気は穀物価格との関連で冷徹に分析されている。

 

いずれにしても、この結果というか、次の段階は、

わりと早いうちに見られるかもしれない。

 

(続く)

 

こんなふうに細切れで、連載のように続くことをお許しください。

 



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