2010年7月 4日

中山間地はみんなの共通資産だから

 

愚痴をこぼしつつ、ついついしつこく書いてしまう悲しい性(さが) 。 

しょうがないので続ける。

 

二日目(6月27日)は、現地視察が組まれた。

まずは、地元の人たちとボランティアの協働で維持する山都町の堰を見る。 

集落の上にある棚田を通って行く。

耕作されなくなった場所もあるが、ここは変わらずきれいだ。 

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水はゆっくりと、温みながら流れて、一帯の田を潤してくれている。

江戸時代にマンパワーで切り拓いてより、地域の共有資産として、

数百年にわたって修復を繰り返しながら皆をつないできた血脈である。

いま僕らは、21世紀のボランティア(志願兵) として

その歴史の一員に連なっている。 

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続いて、チャルジョウ農場を訪れる。 

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有機農業学会の方々も、こんなハウスは見たことがないのでは。

ハウス内に傾斜がある。 もしやこれも小川理論? 

いえ、下の土地を確保したので、そのままハウスを伸ばしただけだと。。。

 

小川光さんの有機農業のポイントは、自家採種できる品種選択から始まる。

栽培においては、

間隔をあけて苗を植えて、1株でたくさんの枝を立てて実を成らせる 「疎植多本仕立」、

堆肥を深く掘った溝に入れることで初期の肥効を抑えて生長とともに効かせ、

かつ水分保持力も高める 「溝施肥」、

野草をいろいろ選別しながら残す (これが重要。除外すべきものは取る) ことで

害虫の天敵昆虫を増やすとともに土壌侵食を防ぐ 「野草帯管理」、

といったところが大きな特徴である。

さらには徹底した資材のリサイクル利用がある。

 

もらってきた資材でハウスを作り、落ち葉でたい肥を作り、土に水を保持させ、

少ない苗でたくさんの実をつけさせ、天敵との共生で生態バランスを整える。

種も残して自給力を高める。

これらの総合によって、灌水設備のない山間地でも、

「農薬・化学肥料いらず」 でやってゆけることを実証する。

 

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一本気で、裏表がなく、したがってどこか生きにくさを感じさせる小川さんだが、

山間地の農業をただただ守りたいという思い、守れるのだという信念と、

実践によって構築していく徹底した実証主義が、

若者たちを育てる力になっているように思う。

一方その性格ゆえに、若者たちから意外にも慕われたりするのだ。

この山間部で、小川さんの世話で住み着いた家族の間に、生まれた子供が22人。

これが小川光という人物の、内容証明である。

 

最後の視察先は、熱塩小学校。 

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日曜日なので誰もいないが、

小林芳正さんと鈴木卓校長が待っていてくれた。

 

農業科の新設とともにつくられた食育スペースがある。 

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小林さんは農業の持つ教育力を信じている。

それは生命を育てるという行為そのものだから。

稲を育て、いろんな野菜を育てることで、感性豊かな大人に成長してほしい。

そして同時に大人も育つんです。 

そんな美しい共生の 「村」 を、小林さんはいつも思い描いて、

子どもたちに日々農作業を教えている。

 

「育苗からいっさいの化学物質を使わせないんです。

 そんな小林さんのしつこさやこだわりが、

 いつの間にか子どもたちにも伝わっていくんですねぇ。。。」

と苦笑しながら説明する鈴木校長先生。

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授業は年間42時間の計画だが、天候事情などによって、

実際には50時間以上におよぶらしい。 

小学校から農業教えてどうすんの、という地域の反応も強かったそうだが、

鈴木先生は自信を持って語る。

「畑を耕すことで、心も耕す。

 知育を高め、食育・体育を高め、徳育にもつながって、

 結果として学力すべてを上げる。

 実際にここの生徒の成績は上がってるんですよ。」

 

農業科の畑と田んぼは学校を取り囲むようにあり、

3階の窓から全部見渡せる。 

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眺めるだけで、地域が支えていることを実感させる。

 

廊下にも階段にも、子どもたちの作品が張り出されている。 

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ハイ、こんにちは。  いいなあ、この感じ。

 

中山間地問題となると、きまって 「課題」 が語られる。

 - 販路の開拓、6次産業化、、、しかしそんな視点より、

まずは足元の環境や暮らしや農業スタイルを誇れるようにすることが大切だ。

 

水路の意味から都市にメッセージを発信する浅見彰宏さんや、

山間地で飯の食える技術として有機農業を教える小川光さん、

そして子どもたちも父兄も誇る、わが村の農業と自給給食。

地域の文化を美しく 「食べさせる」 料理人の存在。

骨太に活性化させる土台は、地域への " 愛 " だね。 

 

都市生活者あるいは消費者という立場にいる者にとって、

中山間地域というのは、けっして " 救うべき "  過疎地などではなくて、

とても大事な、守っていただかなければならない水の源、のはずである。

この社会資産は未来の人々のものでもあるわけだし。

外国資本に買われていい場所ではない。 

 

守るための条件は-

そこにちょうどいい数の人がいて、持続性の高い、すなわち循環型で

環境と調和した生産によって、

質素だが楽しく、助け合いながら、誇りを持って暮らしてくれている。

それをどう支えられるかってことだよね。

 

都市の人たちにもできることがある。

その地域の価値の " 新たな発見 " だ。

足元にある当たり前の姿が、当たり前じゃない力をもっていることを

発見させてくれるのは、外の目だったりする。

そういう意味でも、人の交流は、互いの価値の発見を促す力になる。

守りたければ、税金で、とかいう前に、まず手をつなぐことだ。

 

山都の堰さらいへの参加も、未熟者たちの野菜セットも、

共通の資産を守り育てるための  " 輪 "  づくりだと思っている。

 



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