2008年6月 2日

「カンブリア」 の言い訳

 

さて、「カンブリア」 をこれで終わりにしたいと思う。

テレビ放映から約1ヵ月。 共通するひとつのご意見が断続的に入ってきていた。

会員から2件。 外部の方から2件。

大地の職員からも、何名かから 「あれはどうなんですか」 と聞かれた。

数は少ないが、みな真面目な質問である。

他にも、同じ思いを抱いた方がいるのだろうと推測する。

 

「道路に除草剤を撒いた生産者がいたが、その行為はいいのか?」

というものだ。


テレビでは、何だか盛り上げ役に使われた感がある。

しかも 「畑でなくてよかった」 的なナレーションが流れたことで、

「?」 と思った方もいたのだと思う。

 

事実はこういうものだった。

 

くだんの生産者・黒沢賢一さんが除草剤を散布したのは、公道だった。

もともとその道の脇にあったご自身の畑を、地域との関係で駐車場にしたのだが、

公道のヘリの部分が舗装されずに残り、雑草が繁茂してしまった。

黒沢さんは自治体と掛け合って、全面舗装することにはなったが、

その前に、「このまんまじゃ、草の種が他の畑に飛んでってしまう」 と心配されて、

仕方なく除草剤を買ってきて散布することになった。

 

大地では、ほ場以外でも除草剤の散布は控えるというのが基本である。

生産者も承知していることだ。

その上で、やむを得ない事情がある場合は、その事情を確認した上で認める場合がある。

今回の場合も、事前に担当は把握していたものだが、

カメラの前で伝票類を見ているわけなので、あえて説明してもらった。

隠すことではないと思ったのだ。

 

これでも疑問を感じる方もおられるだろう。

実際に、有機農業で米を作っているらしい生産者から、

除草剤が水系を汚染することには配慮しないのか、というメールが届いた。

 

その通りである。

しかしあの時、僕は黒沢さんの作業日誌で、

連日ご自身の畑の草取りにかかっていたことを確認している。

それでも、自分の地所の駐車場の前の状態も気がかりでしょうがなかったのだ。

他所の畑への影響を気にして、彼は地域の面倒を見ようとしたのだと、僕は理解した。

もしかしたら、無農薬野菜の生産者としての周囲への遠慮でもあったかもしれない。

「あいつらは雑草の種を飛ばす」

という理不尽な非難が、無農薬の野菜農家にはつきまとったりするから。

しかし黒沢さんの畑からは絶対そんなことはない。 彼のプライドは日誌が証明している。

一方で、彼らは農薬の飛散は我慢させられている・・・・・

僕はカメラの前で 「事情は了解しました」 と応えたのである。

 

僕は黒沢さんをこれからも支援する。

不充分な部分を残しつつも、頑張っている農家を孤立させず、励まし、

地域に仲間が増えていくように。

この行為を指弾しては、誰も地域の世話などしなくなるだろう。

これが生産現場の 「現実」 である。

 

僕が自慢したかったのは、

そんなことも率直に開示し合える当たり前の関係、ということだった。

テレビ局の人に伝えられなかったのは、僕の責任である。

 

あれから1ヵ月弱。 ここにきて、会員からは別な反応が起きている。

「あのテレビ放映で入会者が増えて、私たちのところに届く野菜が減っている。」

そんな連絡便が来ている。

 

すみません。 たしかに入会希望者は増えています。

でも・・・・・それ以上に、野菜そのものの入荷が減っているのです。

4月から、時折は暑い日もあったけど、実はずっと雨 (日照不足) や低温が続いていて、

東北・北海道は霜にもやられて、生育が遅れています。

5月には4個の台風接近という、異例の気象です。

 

そして、恐れていたこと。

本日、関東も梅雨に入ったとの発表・・・・・最悪ですね。

 

お願いしたいこと。

入会者を受け入れてください。 それはかつての私であり、皆さんです。

会員が増えれば、有機に向かう生産者を増やせます。

 

黒沢さんは放送に忸怩たるものを感じつつ、こう言ってくれてます。

「これで消費者が増えてくれるんなら、よかったですよ」

 

どうか、お願いします。

 


Comment:

最近の消費者の傲慢な発言についつい鼻息が荒くなってしまう。
現場の生産者を目の前にして、同じ事が言えるのか、といいたくなってしまう。
自分の安心安全だけを追い求める消費者になって欲しくはないと思う。
生産者の事情や背景を知って、その上で意見の言える品格のある消費者に大地の消費者はなってほしいと思う。
ともに歩んでいく仲間なのだという意識に欠ける発言が多くて残念です。

from "てん" at 2008年6月15日 22:08

私は立場上、てんさんのように言うわけにはまいりませんが、ともに歩んでいる、のは間違いないことで、我々事務局も、もっと相互理解が進む言葉を探さなければなりませんね。
それと、仲間が増えることは安全性の確保と向上に欠かせない要素であり、食の安全を大切にする社会をつくるためにも、「新しい人」は必要な構成員なのです。たとえ未熟でも。こればかりは絶対に譲るわけにはいきません。生命組織に新陳代謝が必要なように。
もしこの船に定員が設定されたら、私は若い夫婦に席を譲って、船を降りなければなりません。その時は、自分を優先する人に対して、あなたも一緒に降りてくれ、くらいは言ってみたいという気持ちはあります。

from "戎谷徹也" at 2008年6月16日 23:56

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