2008年11月23日

「田んぼの生きもの調査」 が世界に広がっている

 

東京・大手町のJAホールで、

「第5回 田んぼの生きもの調査 全国シンポジウム」 が開かれる。

3連休の真ん中ということもあってか、参加者は120名ほどで、

ちょっと主催者 (NPO生物多様性農業支援センター) も拍子抜けした様子なのだが、

まあ閑散と感じてしまうのも、会場が広いから仕方ない。 

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しかし、田んぼの生物多様性を語る思想の今を知るには

格好のキャストが集まっていたし、

前回の日記で紹介した佐渡の斉藤真一郎さんとも再会できて、

僕にとってはけっこう収穫の日曜日だった。

 


この日は、まずは完成したばかりのドキュメンタリー映画

『 田んぼ -生きものは語る- 』 の上映から始まった。

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田んぼに生きる生物たちが織りなす、食べ合いかつ共生する曼荼羅の世界が、

丹念に描かれている。 映像も美しい。

 

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いや、生命が美しいのだ。

生物相の多様性が、人間のいのちを支えている、

そんな世界を伝えたいとする制作側の意欲も感じ取れる。

ただ性格の悪い私には、ちょっと " 文部省推薦 " 的な作りが気になるところではある。

田んぼの生きもの調査が切り拓こうとしている世界は懐古ではないのであって、

もっと斬新な構成へのチャレンジがあってもよかったような気がするのだが・・・

ま、とはいえ、相当な時間を費やして完成した労作ではある。

制作委員会の尽力には敬意を表しなければならない。

この映画のDVDの販売に 「大地さんには500枚はお願いしたい」 とか言われて

うろたえたのではあるけれど・・・・・

 

基調講演では、日本雁を保護する会会長の呉地正行さんから、

先ごろ韓国で開かれたラムサール条約COP10で採択された「水田決議」の意義と、

アジアモンスーン地帯における水田の生物資源生産の豊かさ (多様な活用) が報告された。

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「田んぼ」は、食糧生産と生物多様性の両立を当たり前に支える永続的な装置として

描き直される時が来ているのだと、改めて確信する。

 

お昼には、「佐渡トキの田んぼを守る会」 の生産者が育てたお米による

おにぎりが販売され、つい3パック (6個) も買って、食べてしまった。

 

午後は、3名の方による講演。

いずれも、過去に大地を守る会のお米の生産者会議や東京集会に呼んだ方々で、

僕らが目指そうとしている方向としっかり重なっていることも確認できた。

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それぞれの演題と講演者。

「田んぼの生物多様性指標のねらい」 -桐谷圭治さん。

「田んぼの生物多様性をどう活かすのか」 -岩渕成紀さん。

「百姓の世界認識と農業技術の橋渡し」 -宇根豊さん。

 

詳細は省かせていただくが、それぞれの立場で、田んぼの生きもの調査を

戦略というか未来構想の中に位置づけられていた。

三者の熱い語りを聞きながら、それらのすべてを頂いて進化させたいと思う。

桐谷さんと宇根さんについては、過去にも紹介しているので、

以下、お時間があれば-

 ● 桐谷圭治さん (07年7月15日、同7月18日)。

 ● 宇根豊さん (07年8月7日、同8月29日08年3月1日)。

駄文だけれど、お二人の功績の一端でもイメージしてもらえたら嬉しいです。

 

今回の報告の中で、「う~ん」 と唸って、悔しくなったことがひとつ。

11月4日のラムサール会議で、水田の価値が再認識された 「水田決議」 を、

日本では、どの報道機関もほとんど取り上げなかったけれど、

主催国である韓国では、生物を育む貴重な湿地-「田んぼ」から獲れたお米が、

商品化されて注目を浴びているのだと言う。

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映し出されているのが、そのお米のパッケージ・デザインである。

 

田んぼに生きる虫の意味を世に問うた宇根さん。

ただの虫の存在に光を当てて次世代の農業理論を提唱する桐谷さん。

生きもの調査から 「神がそこに居る」 とイトミミズへの眼差しを伝えた岩渕さん。

彼らの手で再構成された思想と手法が韓国に飛び火して、スポットライトを浴びている。

この国は、未だ減反政策すら乗り越えることができず、「汚染米」 で混乱している・・・

もっと、もっと、前に進みたいものだ。

 



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