2010年7月16日

20回めの北海道生産者会議

 

北海道に行ってきました。

ジャガイモの花が咲いていました。

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品種はメークイン。 江別市・金井正さんの畑にて。

 

7月15~16日、第20回となった北海道地区生産者ブロック会議を開催。

場所は、千歳空港から札幌に向かう途中の北広島市。 

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今回の幹事は、北海道有機農業協同組合。

2001年、全国で初めて有機農業の専門農協として組織された。

挨拶するのは代表理事・小路健男さん。 

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大地を守る会に出荷するようになったのは2年前から。

若い時から大地を守る会を意識してやってきた、と嬉しいことを言ってくれる。

 


今回の講演は、四日市大学教授で北海道大学名誉教授でもある松永勝彦さん。

テーマは、「森が消えれば海も死ぬ」。

同じタイトルの著書がある。 

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森(山) と海のつながりは、今ではあたり前に語られる話だが、

その関係を科学的に証明する先鞭をつけたのが松永さんである。

20年におよぶフィールドワークによって、

海の磯焼け現象(海の砂漠化) の原因が山にあることを突きとめた。

 

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鍵になるのは鉄である。

鉄は生物に不可欠な元素であるが、自然界では鉄サビの状態で存在していて、

そのままでは光合成生物は取り込めない。

しかし森林の腐植土にはフルボ酸という物質が存在し、

フルボ酸と鉄が結合する(フルボ酸鉄になる) ことによって生物に取り込まれる。

森からフルボ酸鉄やリン、窒素が送られてくることによって、

沿岸海域の生態系は豊かに維持されていたのだ。

 

" 森は海の恋人 "  で有名な宮城・気仙沼の畠山重篤さんのバックボーンともなった

松永さんだが、時に公共事業などを痛烈に批判するためか、

あるいは学者の縄張り体質と対立したためか、

いろいろと圧力もあったらしく、学界は居心地のいいものではなかったようだ。

今は三重で、人工漁礁による海の再生に取り組んでいる。

 

話はもっぱら海から森、森から海だったが、

その視点から語られる 「腐植」 の大切さは、

農業者にとっても意味あるものになったのではないだろうか。

 

二日目は現地視察。

江別の金井正さんのほ場を訪ねる。 

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ジャガイモの花も、そろそろ終盤戦。

春の低温・日照不足からだいぶ復活はしてきたようだが、

このところは乾燥気味で、生産者からはおしなべて 「水が欲しい」 という声が聞かれていた。

 

金井さんも70を越え、今年は怪我もあって心配したのだが、

なんのなんの、矍鑠(かくしゃく) としている。

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金井さんといえば、誰もが認める道具を大切にする人である。

45年前のトラクターを、今でも修理しながら使っている。

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開拓時代の道具も保存し、すべてがきれいに整理整頓されている。 

長い間の習慣で、身と精神の芯まで染みついたものとしか言いようがない。

これがただの性格だったら、毎日神経すり減らしてつらいことだろう。

 

畑の管理にもその生き方が表われている。

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ちょっと草があるだけで気になる人に違いない、そんな畑である。

 

これからの天気がちょうどよく推移することを願って、

看板の前で記念の一枚を撮る。 

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続いて、北広島の佐々木透さん。

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北海道有機農業協同組合の理事もされている方。

こちらは多品種の野菜栽培で、少々手が回らない気味。

 

佐々木さんは学生の頃から農業を志したそうで、

北海道・十勝から沖縄・西表島、さらには長野の川上村、群馬の嬬恋村で

修行を積んでいる。

アメリカの農場でも2年、海外青年協力隊員の経験もある、猛者である。

 

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人参畑は草の中にあり、キャベツ畑にはモンシロチョウが元気に飛び回っていても、

佐々木さんはいっさい農薬は使わない。

修行時代に、農薬を撒いては夜に吐いていた、という経験が

この人の農業スタイルの底辺にあるようだ。

 

草との格闘は人海戦術である。 

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炎天下の中で草をとるパートさんたち。

彼女たちこそ、北海道での有機農業を支える柱のような存在である。

うつむいて黙々と進む姿に、僕らの頭も上がらない。

 

暑いけど爽やかな風も吹いている。

秋の後半からの根菜類は、この夏の北海道にかかっているワケで、

祈る気持ちで、あとにする。

 



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