2011年8月 4日

「安全」 「安心」 はみんなの汗で築かれる

 

話は続いて翌27日(水) の夜。

さんぶ野菜ネットワークで放射能の勉強会が開かれ、

下山さんから 「来い」 との指令。

組合員・准組合員・研修生各位~ に出された案内文を見ると、

 重要な会議なので、必ず出席してください。

と筆で書き加えられている。

 

夏の農作業の後にペンを持って集まってくる生産者は、それだけでも偉い。

講師は、農水省大臣官房政策課技術調整室長の吉岡修さん。

本省から連れてくるところに、下山さんの気合いが示されている。

 

生産者や地元の人を集めての勉強会ということで、

話は放射性物質の基礎的知識から始まり、

千葉県の測定調査結果の推移についての説明、農作業の際の注意点と続き、

最後に食品安全に係るリスクについての考え方が示された。

 

食品についての 「安全」 と 「安心」 の関係について、吉岡氏はこう説明した。

「安全」 = 「安心」 ではない。

「安全」 は科学的評価により決定される。 

そして行政、食品事業者等の誠実な姿勢と真剣な取り組み、

消費者への充分な情報提供によって 「信頼」 が生まれ、

「安全」+「信頼」 によって、心理的・主観的な判断である 「安心」 へとつながる。

 

では皆さんに聞きます。

「信頼」 と 「安心」 を得るために、やってはいけないことが二つあります。

それは何でしょうか?

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

はい。 ひとつは、嘘をつかないこと。

ふたつめは、隠すこと、です。

 

ナイス! 

ただ、ここで農家を前に言ってもねぇ。 しかも相手は有機農家だ。

それはぜひとも電力会社に向かってやっていただきたい。 

それと、霞ヶ関に帰ってもだ。

 

前日の学校給食学習会で発言した下山さんの緊張感はみんなも同じだ。

なかなか鋭い質問がいくつも出され、時間をオーバーしても質疑が続いた。

なかにはよく勉強している方もいる。

いつもの彼らではないみたいだ (失礼・・)。

 

さて、過去のレポートはまだ続けるとして、珍しく最新ネタを。

本日20:20~ FMラジオ局 「J-WAVE」 から

生番組の電話インタヴューを受けたのだった。

 


広報に依頼の電話が入ってきて、振られたのはお昼頃。 

新米に対する放射性物質汚染調査が行なわれることに対して、

夜の番組の中で電話取材を受けてくれと。

8時10分から、雑音の入らない別室で待機せよ、との指示。

まったく、日々会社の内外から指令が飛んできて、

ワタクシの上司はいったい全国に何人いるのだろう。

 

本番の1~2分前に電話がかかってきて、ディレクターさんから、

「今聞こえているコマーシャルが終わり次第、

 仲野から声がかかりますので、始めてください。 よろしくお願いしま~す。」

最近はナビゲーターとか言うのよね。 DJってのはもしかして死語?

・・・・なんて考えている場合ではない。本番突入。

で、頭から失敗した。

 

東京・六本木ヒルズから仲野博文がお送りしています。

J-WAVE 「JAM THE WORLD」 。 続いては、「CUTTING EDGE」 のコーナーです。

 

新米に対する放射性物質の汚染調査が本格的に始まります。

主食や他の食品に、どんな影響を及ぼすのか。

生産農家はもちろん、私たち消費者も危機感を募らせています。

そんななか、生産者と消費者をつなぐ食品流通業界は、

「今」 と 「これから」 を、どのように考えているのでしょうか。

株式会社大地を守る会農産グループ長の 戎谷徹也さんに伺います。

エビスダニさん、こんばんは。

 

・・・・(お、おお、本番か) は~い、エビスダニです。今晩は。

どうぞ、よろしくお願いします。 時々聞かせてもらってま~す。

 

え? 時々?ですか ・・・・・

 

しくじった。。。

ここは 「よく」 だろう、「よく聞いてます」 だよ、まったく!!!

 

僕はたぶん、如才なく社交辞令で返事するオジサマたちよりは、

よくこの番組を聴いていると思う。

このブログで 番組を紹介 したことだって、あるしぃぃぃ。

ただ、なかなか8時にラジオをつけられるわけではない。

スミマセン、仕事で・・・ 言い訳もしっかり流れた。

ワタクシの人生を、象徴するような、瞬間だった。

 

与えられた時間は10分。

丁寧に説明しようとしても、質問は矢継ぎ早やにトントンと入る。

 

放射性物質に関して、お客さんからはどんな不安の声が聞こえてきますか?

  -汚染が拡散していくなかで、現状を知りたい、これからどうなるのか、など

    応えにくい質問が多くなってきている、というような話をしてから、え~と・・・

 

仕入れの段階で、または販売する直前にチェックするなど、独自の対策をお考えですか?

  -待ってましたよ、その質問。

    ええ、わが社では、、、測定体制を縷々自慢し始めると・・・

 

なるほど。 ところで、米の汚染調査が発表になりましたが、

かえって昨年産米を買い求める人が増えるなど、目立ってきた動きはありますか?

  -米業界からは聞こえてくるけど、当会に限っては・・・(つまらない回答だ。)

    やはり少し突っ込まれ、社会的な購入動向について喋る。

    (本当は、ここから不気味に想定している近未来を語りたかったのだが・・・)

 

農林水産省が示した、収穫の前後2段階での調査は、

消費者の不安を解消するものだと思われますか?

  -微妙ですねぇ。 ワラと牛肉のように対策が後手にならないよう考えたことと思うが、

    「暫定基準値以下」 に実態が埋もれてしまうことになると、

    不安は消えないどころか、かえって増すかもしれない。

    (僕が最も怖れているのは、" 米離れ "  である。)

    しっかりと情報を開示して、その上で適切な対策を打つことが必要だと思う。

 

最後に、これだけは言えた。

私たちは今まで経験したことのない大変な事態のなかにいて、

国がやることにも当然限界があって、批判したり要求するだけではなくて、

農家も、民間も、みんなで力を出し合い、知恵もお金も結集させて、

やるべきことを、それぞれが出来ることを、やらなければならない時だと思うのです。

 

制限時間10分では伝えられなかったが、 

2段階調査に足りないことや不安は、たくさんある。

ただ、すでに新米の刈り取りが進み出したなかで、とにかく食用の米だけは

「安全」 「安心」 を担保させたいという思いなのだろう。

ならば最低限、稲ワラへの注意喚起だけは徹底して欲しい。

田んぼに放置しない、確実に回収できる刈り取り方法が望ましい。

使えるものは有効に使い、使えないものは適切に処分できるように。

もしセシウムを吸収していたら、そのワラは土を浄化したのだ。

また土に帰したり、家畜にあげたり、堆肥材料にしたり、

あるいは燃やしたりしては、かえって拡散 (循環) させてしまって

始末できなくなるどころか我々に還ってくる。

ナウシカふうに言うなら、

「汚れているのは土なんです (汚したのは人間)。 ワラはそれをキレイにしてくれてるの!」

大切にしてあげたい。

 

大地を守る会が高価な測定機器を現地 (「備蓄米」 産地=福島県喜多方市) に

据えたのも、可能な限り数多くの、生育段階からのデータを取るためだ。

今年だからこそ、遅れてでも、やっておかなければならないことがある。

国への文句も言うが、俺たちだって

必死で汗と知恵と、なけなしの金を投げ打ってやったんだと

胸を張れるだけのことは、やってみせたい。

「安全」 「安心」 を築くのは、説法ではなくて実践だから。

 

さんぶでの勉強会に出る前に 「大地を守る会の稲作体験」田に立ち寄った。

なんと! すでに穂が出て、垂れ始めている。

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花が咲く出穂期には田んぼに入るわけにはいかず (受粉を阻害しないため)、

7月23日の草取りはやれなかったとの報告を受けていた。

前代未聞の早さである。

コナギとオモダカが繁茂して、稲に相当のストレスを与えている。

周りより早すぎると、カメムシも集中してくる。

無農薬22年、これまでと違う対策が必要だ。

 

e11080104.JPG

 

ヤバイね。 かなりヤバい。

実行委員諸君、稲刈り後にも汗をかく必要があるぞ。

 

本日の教訓。

「安全」 「安心」 は説法ではない。誠実な汗で築くものだ。

ただしバカ正直は、渡る世間では、時に冷や汗につながる。

 



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