2013年8月19日

朱鷺の舞う島へ

 

・・・やってきた。 

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大地を守る会の専門委員会 「米プロジェクト21」 のメンバーたちと組んだ、

公式ツアー企画を検討するための予備調査も兼ねての訪問。

僕にとって佐渡は、11年ぶり である。

 

8月17日(土)、7時48分発Maxとき307号で新潟へ。

新潟港からジェットフォイルで65分、

昼過ぎに佐渡島の真ん中に位置する両津港に到着。

港で出迎えてくれたのは、

佐渡 「トキの田んぼを守る会」 代表の斎藤真一郎さんと

大井克己さん、土屋健一さん、そして

佐渡市農林水産課長の渡辺竜五さん。

渡辺さんが市のマイクロバスを用意してくれて、運転手まで買って出てくれた。

 

港では、お米の仕入・保管・精米等でお世話になっている (株)マゴメの

馬込和明社長も合流。

さらには、なんと宮城県大崎市から車を飛ばして、

「蕪栗(かぶくり) 米生産組合」 代表の千葉孝志・孝子夫妻まで

駆けつけてくれた。

千葉さんも実は、生産組合の視察企画を考えての佐渡入りである。

そしてバスに乗り込めば、

佐渡の平たねなし柿の生産者、矢田徹夫さんが

笑顔で待ちかまえていた。

「矢田さんじゃないスか! いやーご無沙汰です。 お元気そうでなにより!」

この面子がそろっただけで、充実の交流が約束されたようなものだ。

 

まずは腹ごしらえ。

佐渡のB級グルメとして売り出し中の、佐渡天然ブリカツ丼。 

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佐渡の海で獲れた天然ブリに、

米は 「朱鷺と暮らす郷づくり認定ほ場」 で栽培されたコシヒカリ。

衣はその米粉使用という " オール佐渡 "  のこだわり。

その土地の食を記憶させることは、旅の大事な要素である。

しかも、庶民も気軽に食べられるお値段であることがキモだ。

" B級 "  にもちゃんとしたコンセプトがある、ってことね。

ウマかったです。 ご馳走さまでした。

 

さて、豪華メンバーとなった我々一座は、

両津から加茂湖を右手になぞりながら島の南側・小佐渡山地へと

入っていく。

朱鷺湖と命名されたらしい小倉川ダム湖からさらに上流に登り、

到着したのは、小倉千枚田。

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1969年から始まった減反政策以降だんだんと耕作放棄されてゆき、

荒廃地になってきたところを、5年前に復活のための支援が呼びかけられ、

オーナー制度 「トキの島農園小倉千枚田」 がスタートした。 

 

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田んぼごとにオーナーの名札が立てられている。

オーナー1口(1区画) 3万円で、30㎏のお米が届けられる。

募集した65口のオーナーは、すぐに予約が埋まったほどの人気である。

おかげで田んぼは90枚近くにまで復活した。 

それにしてもこの傾斜、小さな機械しか入れられない。

草を刈り、畦を塗り直し、水路を補修して、、、

かなり厄介な作業だったろうと推測する。

 

棚田の解説をしてくれる渡辺課長。 

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渡辺さんの話によれば、佐渡の棚田は、

金山発見によるゴールドラッシュの賜物である。

採掘の労働者はじめ人口が増え、米の需要が高まるにつれて、

棚田が開かれていったのだという。

しかも佐渡には自作農が多かった。

だから守ってこれたのだとも。

 

中には、こんな奥にまで、とビックリするような場所にも

田んぼがあったりするらしい。

いわゆる  " 隠し田 "  というやつか。

金山が発見されたのは、関ヶ原の戦いの翌年(1601年)。

江戸幕府は佐渡を藩とせず、天領として直接統治した。

流人や無宿人も含め増える人口に対して、

秩序を保つためにも食糧は厳しく取り立てられたに違いない。

隠し田という言葉には、農民が刻んだ深い皺の、

その溝の奥に染み込ませた執念を思わせる響きがある。

 

よく見るとまだ荒地も残っていたりするけれど、

まあ見事に復田させたものではある。

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話を聞かされると、僕も一口、という気になるのだが、

その前に食べなきゃいけない、約束の米がたくさんあって。。。 

 

一角で、畦を野焼きしている作業が見られた。 

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野焼きは禁止された行為ではないか、と思われるかもしれないが、

農地や草地、林地の現場では、その必要性と効果は認められてきたものだ。

焼くことによって地表の植物が焼失し (地下部分は生きている)、

優先種による支配への遷移を防ぐ。

枯れ草もなくなり、裸地になって炭や灰が残る。

黒くなった地面に直接日光が当たると地温が上がり、

地中の微生物が活性化される。

それまで支配しつつあった優先種がいなくなったことで、

様々な埋土種子が発芽してきて、植物の種類が多くなる。

植物の種類が増えると昆虫の種類も増える。

窒素量が増加し、灰分とともに植物の栄養となって利用される。

その意味で、野焼きはただ草を刈るよりも生物多様性を高める。

適度にかく乱してやったほうが生物多様性が高まることを、

中規模攪乱説という。

 

また炭は長く土中に固定される。

CO2を吸収して育ち、炭となって土の浄化を助ける。

カーボン・オフセットという概念にも含まれる技術であって、

農林草地の野焼きは、CO2の増大を招くものではない。

ゴミを燃やしているワケでは決してないのだ。

 

山から下りて、斎藤さんの田んぼを見せていただく。

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冬水たんぼに江(え) の設置など、生き物たちのために田んぼを活かす。

経済的な生産性追求でない、もっと大きな世界と共存するための手仕事を、

米価低迷の時代にあって実践する人たちがいる。

僕らはこの外部経済 (それがあることによって、その商品価値以外の価値が守られている)

の意味を、ちゃんと問い直さなければならない。

 

ただ冬水たんぼは、けっして良いことだけではないようである。

収量や食味の点から見ても、3年目から弊害が出てくる、と斉藤さんは語る。

草の出方にも傾向があるようで、この技術を活かしきるには

もっと実践者同士の技術交流が必要なようだ。

 

斉藤さんの説明に反応し、自らの経験からアドバイスを送る

宮城の千葉孝志(こうし)さん (写真中央)。

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田んぼの縁にもう一本の水路をつくり、

田んぼを干した時にも水生生物が生きられる場所を用意する。

この 「江(え)」、ビオトープは、仲間の共同作業でつくられたものだ。

 

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トキの野外復帰を進め共存する、と口で言うのは簡単だけど、

このフィールドは国立公園内の話ではない。

これは一次産業者たちの暮らしとともに実現させるプロジェクトなのである。

僕らのベスト・タイアップは、どんな形なのだろうか。。。

 

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思いを深めるには、現場をもっと知らなければならない。

いや感じ取る必要がある。

 

さあ、トキを見に行こうか。

 


Comment:

えびちゃん、その節はお世話になりました。
さすがの文章量に脱帽。
続きを待ってます!

佐渡も随分涼しくなりました。

from "yata" at 2013年8月27日 08:45

いつものことながら、頑張ってらっしゃいますね!!
やたさんがFbにあげてくれたから、ひさしぶりに来ました!(笑)
えびちゃんも、自分でFbにリンク張ってくださいませ〜。
これも大事な活動でございましてよ〜!!
沢山の方の目に触れさせたい内容でございます!!

from "てん" at 2013年8月27日 21:36

yata さん
こちらこそお世話になりました。楽しかったです。ただ、フルメンバーが揃っていた1日目に全員の写真を撮るのを忘れてしまいました。まったく、後悔しきりです。
来年はツアーを実現させたいと思いますので、ぜひお力をお貸しください。
お体に気をつけて。おいしい柿、待ってます。

てんさん
お久しぶりです。有り難うございます。
ところで、FbというのはFacebookのことでしょうか。実はやってないんです~。ブログもほとんど深夜の作業になってしまっていて、正直、これで一杯一杯です。許して下さい。お願い!

from "戎谷徹也" at 2013年8月28日 21:47

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