2014年3月24日

地域の力と内発的復興のために-


お彼岸の日のお通夜に参列した帰り道、

大地を守る会の職員や OB、生産者と誘い合って飲んだ。

あえてなのか、みんな楽しく飲もうとする。

それが先に逝った仲間への弔いであると信じてるみたいに。

この輪の真ん中に道場さんもいて、

「お~い、ビールあと2本!」 を連発しながら笑っているんだと、

そんな気分で酒も会話も、彼に飲ませ聞かせるように進むのだった。

 

翌日(22日) は、下北沢の ふくしまオルガン堂 に出かけた。

福島・喜多方市の市長選をたたかった浅見彰宏さんから、

東京で応援してくれた人たちに御礼の報告会をやりたい

という案内をもらっていたので。

「喜多方から始めよう、浅見彰宏報告会」 と題して夕方から開催。

遅れていったところ、20人ほどの人が集まっていた。


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選挙の結果は、以前 にも報告した通り。

たった 3 ヶ月の準備と運動期間で、

ほとんど無名の候補者が約 3 分の 1 の得票を獲得した。

それだけ潜在していた 「変わらなきゃ」 の気運を動かしたということだ。

多くの人が大健闘だと称えているが、

中には 「これだけしか取れなかったのか」 という厳しい批評もあれば、

あと1カ月あれば・・・ という悔しさをにじませる声もある。

でも、今日の浅見さんは爽やかである。

それなりにやり切ったという思いと手応えが、次へと歩ませているのだろう。


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特に子どもたちが誇れるような地域をつくりたい。

たとえ都会に出ていかざるを得なくなったとしても、そんな若者たちのためにも

美しい故郷にしたい、と語る。

「四国から出てきたエビさん、どうですか?」

と突然ふられて、一瞬ひるんだけど、まさにその通りだよ。

「田舎が誇れるって、どっか自信につながっているような気がする。」

街に出るしかなかった小っちゃな漁村の三男坊でも、

あの海はいつまでも僕の骨としてある。 

子どもの頃、原発誘致計画をふたつ、潰した地域だ。 蹂躙する奴は許さない。


「喜多方の豊富な地域資源を活かした、最先端の田舎にしたい。」

浅見さんの力強い言葉に、

誰かから 「じゃあ 4 年後!」 の声も挙がる。

いや待て。 4 年後の選挙に出るかどうかよりも、

その時までにどんな地域づくりを進めるかだろう、みんなの力で。


ここで折角なので、報告できてなかった

2月 16日(日) に開催されたフォーラムのレポートも入れておきたい。

「 ~地域の力シンポジウム~

 3.11 東日本大震災と内発的復興

 -農山村と都市の新しい結びつきを考える- 

会場は渋谷区外苑にある 「日本青年館」。


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基調講演は、「地域フォーラム」委員長、出版社コモンズ代表の大江正章さん。

大江さんは、内発的復興に必要な 6 つの視点を提示された。

1.犠牲のシステムからの脱却

  地方、第一次産業、自然、環境に犠牲を押し付けないこと。

  ゲンパツはまさに犠牲のシステムである。

2.地域循環型社会の構築

  第一次産業と地場産業をベースに、商業・金融機関・地域メディアも一体となった

  経済の地域循環を築くこと。

3.経済成長優先主義から脱成長へ

  経済成長(お金) のみを物事の判断基準にしてはならない。

4.内発的な力と外来的な力の交響

  外部からの力を活かし融合させるような地域主体の形成。

  主役はあくまでも内側にあること。

5.自然観の転換

  自然とともに生きる、という思想を育みたい。

6.故郷への想いの継承

  人間関係や風景を含めて、いま暮らすかけがえのない地域こそが故郷である。

 

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そして地域の力を活かした内発的復興への取り組み事例として、

3 つの地域を上げた。

里山の再生から地域特産品の開発、新規就農者の学びの場としての

「あぶくま農と暮らし塾」 を誕生させた

「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」(二本松市東和地区)。

新しい産業づくりを目指してオーガニックコットンの栽培に取り組み、

コミュニティ電力事業を進めるまでにいたった

いわきおてんと SUN プロジェクト」(いわき市)。

壊滅的被害を受けながら、NGOや被災地支援ファンドなどの支援を得て、

漁師たちによる株式会社づくりや共同作業所、アンテナショップの経営

などに取り組む宮城県石巻市北上地区。


地域の魅力を再発見し、若者がその地域を好きになれば、

彼らが地域の元気の素をつくっていく気運が生まれる。

企業誘致や公共事業に依存しても失敗する。

地域は内発的にしか発展しない。


続いて特別報告者として発言したのが浅見さんである。

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大手鉄鋼メーカーを辞め、喜多方市山都町の山間地に移住して 17年。 

山間地農業の役割と現状での問題点を整理しながら、

山間部に残る水路の保全に取り組んだ思い、

そして堰さらいボランティアを受け入れた経過とその効果が報告された。


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地域の宝ものを発掘し、内と外の視点からその意味を再確認し、

担い手を育てる力にしてきたこと。

協働者(ボランティア) との交流から、都市と農村の互恵的な関係を築く。

そのためにはつなぎ役の存在が欠かせない。

新規就農者を取りまとめ、兼業でも生きていけるカタチをつくっていくことで、

後継者が育ち、地域に力が生まれていく。

この里山を慈しみ、誇りを持つ若者たちを一人でも多く育てること。

それが私の役割かな、と。 

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チャルジョウ農場・小川光さんのもとで学んでいた若者たちをまとめ、

「あいづ耕人会たべらんしょ」 の組織化を働きかけた者としては、

それなりに貢献できたか、という自負も密かに持っていたものだが、

いや実は、仕掛けにまんまと乗せられたのはオレの方だったのかもしれない、

いうことにも思い至らせられたのだった。 

もしかして、してやられたのか。。。

でもまあ、ほぼ狙い通りの答えを用意したとは思ってる。


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二人の報告の後は、

福島県有機農業ネットワーク理事長・菅野正寿産をコーディネーターに、

4人のパネラーによる活動報告。

広告代理店の立場で  " 農に触れる "  活動を展開する (株)博報堂の藤井久さん。

国士舘大学文学部准教授で、学生たちの農業体験や交流を続けながら

中山間地での地域発展を研究する宮地忠幸さん。 専門は経済地理学。

持続的な社会づくりのための調査・研究や地域開発支援に取り組む

一般財団法人 CSOネットワーク事務局長・黒田かをりさん。

そして流通という立場から戎谷。

福島の農産物との付き合いから学んできたことをお話しさせていただいた。

それぞれに5分や10分じゃ語り切れない思いを抱えているのだった。


さて、今年も堰さらいには行くしかない。

地域の力を掘り起こし、「内発的復興」 がどういうカタチとなって進むのか、

ここまできたら、とことん付き合うしかない。


最後にご案内。

東京方面から堰さらいボランティアに参加してみたいという方がおられましたら、

直接浅見さんの ブログ からお申し込みください (注意事項はしっかり読んで)。

あるいは大地を守る会・戎谷 にご連絡いただいても結構です。

席が空いていれば、車に同乗も可能です (お約束はできませんが)。

行程は以下の通り。

5月3日:早朝都心発 -大和川酒造店立ち寄り(酒調達) -現地で前夜祭・公民館泊

5月4日:早朝から堰さらい作業 -温泉 -夕方から交流会・公民館泊

5月5日:山都散策(チャルジョウ農場訪問) -帰京

ただし、ゴールデンウィークの渋滞を覚悟してください。

お問い合わせは、戎谷まで。

 ⇒ ebisudani_tetsuya@daichi.or.jp 




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