戎谷徹也: 2013年3月アーカイブ

2013年3月31日

「D & k」 日本酒セミナーの夕べ

 

昨夜は 「Daichi & keats」 1周年記念企画シリーズ最終回、

「日本酒セミナー」 が開かれた。

大和川酒造店から佐藤和典工場長がゲストに招かれ、

大和川さんの4種類のお酒を飲み比べながら、

君島料理長が考えた 「日本酒に合う料理」 を堪能していただいた。

 

e13033101.JPG

 

参加いただいた方は約40名。

大地を守る会の会員さんはむしろ少なく、

「D & k」 のファンとなったお客さんのほうが多かったかな。 

加えて、ツイッターやフェイスブックで見つけたという方々、

中には大和川さんから通販で取り寄せている、というおじさんもいた。

 


会津の気候風土や米づくりについて、

また一貫して地元の米を使い続けてきた大和川酒造のこだわりについて、

説明する工場長。

e13033102.JPG

 

いや、これからは 「杜氏」 と呼ばなければいけない。

いつも当たり前に 「工場長」 と呼び慣れてしまっているけど、

越後杜氏・阿部伊立(あべ・いたつ) 氏引退後は、

工場長が杜氏を引き継いだワケなんだから、

ここはやっぱ 「イヨッ、杜氏!」、だよね。

 

「種蒔人」の紹介のところでは、

開発のコンセプトや 「種蒔人基金」 にかけた思いなどについて

喋らせていただいた。

この酒が飲まれるたびに、森が守られ ~

思いが強いぶん、長くなってしまった。 ごめんね、町田店長。

 

本日の料理を説明する、君島繁夫料理長。

e13033103.JPG

本職はイタリアンなのだが、今日は特別に

日本酒に合うオリジナル料理を用意してくれた。

 

本日の大和川ラインナップ。 

e13033104.JPG

 

まずは 「活性にごり・純米酒 弥右衛門」。

原料米は五百万石。 まだビン内で酵母が活きていて、炭酸ガスが内包している。

甘さと炭酸ガスの酸味が調和した、スパーリング感覚のお酒。

食前酒から乾杯まで。

 

続いて本番、「純米吟醸 種蒔人 あらばしり」 を

料理とともに堪能していただく。

原料米は、稲田稲作研究会が育てた「美山錦」、無農薬栽培。

酵母は「うつくしま夢酵母」(F7-01)、精米歩合55%、日本酒度+5、酸度1.4。

芳醇な香りと程よい酸味、キレのある搾りたて。

5月頃までは、一切火入れをしていない生生(なま・なま) で、

その後は生貯蔵酒 (ビン詰め時に1回のみ火入れ) となる。

 

次は 「純米吟醸 雪蔵囲い」。

会津の豊富な雪を利用して雪中貯蔵されたお酒。 

酵母はこれも福島県で開発された「煌酵母」、華やかな吟醸香が特徴。

 

あとはお好きな酒をお代わりしていただきながら料理を楽しみ、

親睦を温めていただく。

気持ちよくなった僕は、テーブルを回りながら、

5月に行なわれる山都での堰さらいのPRなどをしたりして・・・

 

最後。 食後のデザートには桃のリキュール 「桃の涙」 を。

純米酒と桃の果汁をコラボさせ、爽やかな甘みが口に広がる新感覚のお酒。

この商品化の裏には哀しい物語がある。

常に高い評価を得てきた福島の桃だったのに、

ご多分にもれず一昨年から販売不振に陥ってしまった。

今年も美味しい桃ができたのに・・・・・その涙を受け止め、

新しいお酒として生まれ変わらせたのが、このお酒。

飲んでつながる復興支援。

大和川酒造からお取り寄せできます。 

⇒ http://yamatogawa.by.shopserve.jp/SHOP/470205.html

 

e13033105.JPG

 

皆さん、ご満足頂けたようで、私も満足。

正直、話とお酒の説明に夢中で、

料理の写真をまったく撮ってなかった事に気がついた。

というか、後半(メイン料理) はほとんど食べてないんじゃないかしら

 ・・・・エエーッ! 残念。

君島料理長、こんどまたお願いします。

 

終了後は工場長、もとい、杜氏を誘って、線路をまたいで日本橋まで。

そこでまた大和川の酒のある料理屋でお疲れさん会。

盛り上がったのは、会員を募って袋絞り酒をつくろう! と決めたこと。

できた酒は会員で全量引き取り。

 

こういう感じで吊らされて、自然にポタポタと落ちてゆく、

とてもナチュラルで、しかし少々贅沢なお酒。

e13021106.JPG

 

さて一本いくらになるか、何人集まれば実現できるか、

これから皮算用が始まる。

これは仕事なのか、遊びなのか・・・

いずれにしても、モットーは 「仕事は楽しく、遊びは真剣に」 だからね。

楽しく、かつ真剣にやりたい。

 



2013年3月28日

共同テーブル「提言」で、関係省庁と意見交換会

 

遅まきながら、大地を守る会の HP トップに

『大地を守る会の 放射能連続講座Ⅱ』 シリーズのバナーを

貼ってもらいましたので、お知らせいたします。

 ⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza2/

 

ここから一般の方もお申し込みいただけますし、

過去のアーカイブもご確認いただけます。

第2回は、4月18日(木)18:30~ 日比谷図書文化館にて。

講師は東京大学アイソトープ総合センター長、児玉龍彦教授。

テーマは 『改めて内部被ばくの問題を考える』 です。

締め切りは4月5日(金) に設定していますが、

定員(200名) になるまで受け付けます。

児玉教授の話が生で聞ける機会は、1学期中でおそらくこの日だけかと。

どうぞ奮ってご参加ください。

 

さて、今週は 2回にわたって、中央官庁に出かけた。

「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 で出した政府への 「提言」 に対して、

関係省庁との意見交換会が設定されたのだ。

3月26日(火) は内閣府食品安全委員会にて、

3月28日(木) は農林水産省に厚生労働省の方も来ていただき、

それぞれ意見交換をさせていただいた。

 


当方から出向いたのは、

パルシステム生協連合と大地を守る会の 2団体。

 

写真は26日、食品安全委員会事務局の方(2名) との意見交換風景。

e13032801.JPG

 

こちらは28日、農水省&厚労省の方々との一席。

e13032802.JPG

 (撮影はパルシステムの植田真仁さん。 いずれも左側の一番奥が戎谷。)

 

厚生労働省からは医薬食品局食品安全部から4名、

農林水産省からは、大臣官房環境政策課、生産局、食料産業局、

消費・安全局、農村振興局、農林水産技術会議の他、

水産庁および林野庁含め合計10名の方に出席いただいた。

この場を借りて感謝申し上げたい。

 

冒頭、戎谷より共同テーブルの結成主旨から

今回の 「提言」 提出に至った経過を説明させていただき、

続いてパルシステムの松本典丈さんが提言を読み上げながら内容を説明した。

 

意見交換で出された省庁の見解をまとめると、

概ね以下のようなものであった。

・ 生涯 100 mSv、年間 1 mSv (の食品による内部被ばく) を上限値とした

 新基準値は、他のリスクと比較しても低い方であり、妥当だと考える。

 基準を見直す考えは、今のところ、ない。

・ ただしリスクコミュニケーションの不足は認識している。

 科学的知見によって合理的に判断してもらえるよう努力してゆきたい。

・ 提言にある 「出荷制限の見直し」 や 「きめ細かな対応」 については、

 実施してきた部分もある。 「やっていない」 と思われるのは不本意である。

・ 出荷制限の範囲はできるだけ狭めたいが、現実的には

 全量管理が可能な単位(市町村) で考えざるを得ない。

 一方で 「部分解除」 というルールも設定してきているので、理解してほしい。

・ 原木しいたけについては現在、栽培ガイドラインの策定など、

 生産支援策を準備中である。

・ < 「ストロンチウムの継続的なモニタリングと結果の公表を求める

   という要望に対する、厚労省の回答 >

 出荷の判断基準としてではなく、調査として継続的に調査は行なっている。

 いずれまとまった段階で公表する予定である (時期は未定)。

 検査結果からは、セシウム比で数百から千分の1 程度と推定している。

・ < 3月19日に厚労省かから出された

   『食品中の放射性物質に関する 「検査計画、出荷制限等の品目・区域の

    設定・解除の考え方」 の改正について』(※)  において、

   検査対象品目が減少しているのは姿勢の後退ではないか、との意見に対して>

 検査の継続にも、コストや人手の問題等、限界がある。

 これまでの検査結果から、「まず問題ない」 と判断できるものは削除した。

 限られた条件の中で、これからは  " 選択と集中 "  に向かう判断も必要である。

 魚については、主要品目は継続する意向である。

・ ちゃんと対策をとり、検査して (安全性を)確認できたものは出荷可能にすべき、

 という提案は、生産者のモチベーションを上げる意味で、

 むしろ有り難い提案として受け止めている。

 対策に力を入れている生産者が報われるような運用を目指していきたい。

 

総じて、こちらの 「提言」 に対して真摯に対応いただいたことは評価したい。

施策の方向性で共通する点が少なからずあったことも確認できた。

努力されていることも窺えた。

しかし、基準値に対する考え方は埋まりようのない隔たりを感じさせた。

科学的知見を基に、というが、

国が拠り所とする ICRP(国際放射線防護委員会) ですら、

「合理的に達成可能な限り被ばく線量を低減する」 という原則 (ALARAの原則)

が示されている。

つまり、1 mSv 以下であればそれでよい、ということではないはずなのだが、

「これ以下のリスクは取るに足らない」 というのが、

「厚労省医薬食品局食品安全部基準審査課 放射性物質専門職」

という肩書を持つ方の発言であった。

 

どうも自分たちの枠の中で判断して、国民の不安を見つめていない。

研究室に籠っている方ならシカトもできるが、

国民の健康に責任を持つべき立場の者として、いかがか。

 

ひと言、言わせていただいた。

公的基準を国民が信じないという不幸な事態のなかで、

日々日々消費者と接する我々は、できるだけリスクを低減させる努力をしながら、

なおかつ冷静な判断力を持とうとコミュニケーションに努めてきた。

どれだけの経費をかけたことか。

その上で、積み重ねてきた測定結果を基に、基準を下げることができることを示し、

提言させていただいたものである。

国としても、消費者の暮らしに  " 安心 "  を回復させるために、

可能な限りリスクの低減に努めていくという姿勢を、持ってもらいたい。

 

また検査項目の  " 選択と集中 "  について言えば、

もっと限られた原資で行なっている民間ならまだしも

(我々も検討しているテーマであるが)、

国に率先して絞られると、それでいいのか、と叫びたくなる。

データがなくなることによる不安は、信用されてない状況では

不信を募らせる結果にしかつながらないように思う。

こうなるとリスク・コミュニケーションという手法でカバーできるものではない。

国が信用されてない状態というのは、

民間にとってコストを増やす要因にもなることが理解されていない。

 

彼らには 「国民(消費者)」 が見えてない、と言わざるを得ない。

リスク・コミュニケーションと言いながら、一方通行で終わっている。

それでもって、批判者を排除したがる。

本物のコミュニケーションを互いに目指すことができれば、

一歩ずつでも良くなっていくはずなのだが。

 

とまれ、こういう場に出てきていただいたのだ。

十把ひとからげに批判だけしては失礼というものだ。

「時間が足りませんよね。もっと話したい」 と言ってくれた方もおられた。

各部局に呼びかけてこれだけの人を集めててくれたのは、

農水省の消費・安全局の方だ。

こういった作業の積み重ねによって官と民の距離が縮まることができたなら、

あるいはいつでも渡れる橋が架けられたなら、

この二日間も無駄ではなかったと言えるのだろう。

歩み寄るのではなく、一緒にある目標に向かえたなら・・・

みんなストレスを抱えている。

 

(※) ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xsm1.html

 



2013年3月27日

学校給食全国集会

 

今日は朝から夕方まで飯田橋。

JRの駅に隣接する飯田橋セントラルプラザ17階にある

東京都消費生活センターの教室にて、

「全国学校給食を考える会」主催による 『学校給食全国集会』 が開かれた。

ここで大地を守る会の放射能対策についての報告をしろ、

とのこと。

つけられたタイトルが、「ゼロリスクがありえない中で、どう食べるか」。

何度見ても重たいお題で、逃げ出したくなるが、そうもいかない。

作成したスライドにはあえて 「何を、どう食べるか」 と付け加えさせていただいた。

「何を-」 は、ここでも重要なポイントだと思うのである。

 

e13032701.JPG

 

会場には、学校給食の現場を預かる栄養士さんや調理員さん、

教員、児童・生徒の親御さん(学校関係者は 「保護者」 と呼ぶ)、 

そして一般の方が、全国から集まっていた。

その数、100~120人くらいだろうか。

日々子どもたちと接する教育現場の方々を前に、放射能の話。

誰がこんな世の中にしてしまったんだろう。 ため息が出るね。

 


集会では最初に、

学校給食を考える会が発行する 「給食ニュース」 の編集責任者である

牧下圭貴さんが、「まずは、おさらいから入りましょう」 と

放射能に関する基礎知識から学校給食の仕組みと課題までを整理された。

 

放射能の世界というのは、初めて聞く人には難解なものだが (特に文系には)、

牧下さんはそれを分かりやすく解説しようと苦心しながら話された。

これが意外と難しいんだよね。

中途半端な知識ではなかなかうまく話せない。

 

彼は現在、大地を守る会が長く事務局を担っていた 「提携米研究会

(前身は 「日本の水田を守ろう! 提携米アクションネットワーク」) 

の事務局長も務められていて、

実は自宅の一室を改造して測定室にしたツワモノである。

測定室は 「生産者と消費者をつなぐ測定ネットワーク」 と名づけられている。

バックグラウンド(環境中の放射線) の影響をできるだけ避けるために、

機器の4方(&床下まで) をペットボトルに入れた水をレンガのように積んで

囲うという念の入れ方だ。

(水は放射線を吸収する、防護壁の役割を果たす。 水はエライ!)

 

e13032703.JPG

 

学校給食の話では、

「教育としての学校給食」 が謳われながら、

一方で正規調理員の減少や栄養士の民間委託、大規模センター化など、

合理化によるコスト削減が進められていく現状が指摘された。

また設備対応が追いつかない中で衛生管理(食中毒対策) が強化されていること。

さらには学校給食に対する家庭からの期待が高まる一方で、

給食費未納(家計経済の悪化) という問題があって、

その狭間で予算(給食費) と質のジレンマが深まっているという。

・・・・・聞いてるだけで耐えられなくなる。

 

これが子どもたちの食を取り囲む現実の一端だとしたら、

この現実は、もっと社会で共有されなければならない。

栄養士さん、調理員さんは日々必死の格闘を余儀なくされているということだ。

彼ら彼女らを支えているモラルと使命感が薄れていかないことを願わずにいられない。

それには社会の支えが必要である。

 

加えて放射能問題、である。

僕がお話ししたこの2年間の取り組みや思いは、

一民間団体としてやってきたことで、

たとえ、仮に、それが立派な事例であったとしても、

上記のような現場で日々やりくりさせられている人にとって

どれだけ参考になったことだろうか。

最後に、子どもたちの未来&未来の子どもたちのために、

僕らはつながらなければならない、とエールを送って締めくくらせていただいた。

 

ここでは余計な話だったかもしれないけれど、

食や暮らしに侵入してきているリスクは実は放射能だけでないことも、

忘れたくない。

・ 人口爆発と耕作地の減少。

・ 近代農業(農薬・化学肥料依存型農業) による地力(=生産力) の低下。

・ 温暖化による自然災害の増大と食生産の不安定化。

・ 食システムの巨大化、寡占化。 それはリスクに対する脆弱化を進めていること。

  例えば、病原菌による脅威の増大(耐性の獲得など) がある。

  自由貿易の名のもとに進む食システムの寡占化は、

  パンデミック -感染症・伝染病の世界流行- に対して

  極めて脆弱になっていくことを意味している。

・ グローバリズムによる安全性管理の後退(事故や汚染の一触即発化)。

・ 生物多様性の崩壊現象。

・ 越えたとも言われるピーク・オイル

  ⇒ 近代農業の破綻(あるいは大転換) へと進まざるを得ない。

・ 使える水資源の汚染と枯渇、そして空気まで(例: pm2.5 など)。

  - これらすべてがクロスし、リンクし合いながらグローバルに進んでいること。

 

原発もTPPも、

「地球の健康」 「未来のための安全保障」 という視点から

捉え直さなければならない時代になっているはずなのだが、

どうにも目の前の経済という難敵の呪縛から逃れられないでいる。

(そういう意味でも、脱原発からイノベーションへと進みたい。)

 

食育基本法という法律までできた時代なのだけど、

現場からは息が詰まるような話ばかりである。

お茶碗一杯のごはん(ハンバーガーでもいい) から世界が見える、

そんな機会を子どもたちに提供できないものだろうか。

 

しかし、四面楚歌のような状況にあっても、現場で工夫し、

あるいは粘り強い交渉力や調整力で成果を勝ち取ってきた事例もある。

埼玉県越谷市では、調理員さんたち(自治体職員) の努力によって 

測定器が現場に導入され、しかもベテラン調理員たちが講習を受けて、

ローテーションで測定を行なうという体制まで敷かれた。

調理工程を熟知した人が関わることで、入荷した食材の測定と使用判断を、

作業を滞らせることなく進めることができる。

そのために雇用が(非正規ではあるが) 一人生まれた。

唸らせる報告だった。

 

世田谷区では一栄養士として積み上げてきた足跡が語られた。

保護者を巻き込むのにちょっとした工夫が加えられる。

これは公にすると手の内がバレたりするので、公表は控えておきたい。

 

全国各地で、子どもの健康を守るために頑張っている人たちがいる。

とにかく、孤立させないこと、つながることだ。

つながりながら、新しい社会と豊かな食を築き直していきたい。

 



2013年3月23日

〔地球大学〕 日本の食のサステナビリティ

 

一週間が矢のように過ぎてゆく。

このまんま " 気がつけばジ・エンド "  ってことはまさかないだろうけど、

どうもなんかに追われている感が拭えない。

何を焦っているのか。。。

 

今週の活動から振り返りをひとつ。

3月18日(月) の夜、丸の内・エコッツェリア協会で開かれた

「地球大学アドバンス 〔食の大学〕 シリーズ」 に参加した。

今年度の最終回ともなった第6回は、

『日本の食のサステナビリティ』 をテーマに、

3名のゲストからのプレゼンを中心に展開された。

 

写真右から、

グラフィックデザイナー・佐藤卓さん、予防医療コンサルタント・細川モモさん、

そして一番左が農林水産省大臣官房政策課課長・大澤誠さん。

e13032301.JPG

 

まずは佐藤卓さん。

佐藤さんとは地球大学で何度もご一緒しているが、本ブログで紹介したのは

5年前の 『 Water 〔水:mizu〕 展 』 だけだったか。

昨年の10月には、北海道の銘柄米 「ゆめぴりか」 の新米発表会で

一日限定の 「米の道」展 というのを手掛けている。

食や環境をデザインの視点から見つめ直し、いつも

私たちに新しい発見を与えてくれる、僕には宇宙人にしか見えない方。

 


すべてのモノには設計とデザインがある、デザインが関わらないものはない、

と佐藤さんは語る。

目の前にある当たり前のモノ、自明なものをデザインし直して見ることで、

そのモノの真実が捉えられることがある。

 

たとえば水田は、水との関係、水とたたかいコントロールしてきた関係を

デザインした究極のものだと佐藤さんは捉える。

地球大学のモデレーターである竹村真一さんと佐藤さんは今、

「米 展」 の来年開催に向けて準備を始めている。

「当然、手伝ってくれるよね」 と言われているのだが、この人たちに関わると

とんでもないリクエストが舞い込んできそうで、コワい。

 

続いて細川モモさん。

現代の日本人の食の現実は、恐ろしい未来を映し出している。

子どもたちの間で成人病(予備軍も含め) が急激に増えている。

妊娠前の女性では、必要エネルギーを満たしてない、

極めてアンバランスなパターンが目立ってきている。

摂取カロリーは何と、終戦直後より低くなっている。

最大の要因は、朝食の欠食である、と細川さんは指摘する。

その影響は、低体重児の増加となって現われてきているが、

一方で最新の学説として注目を集めているのが

「成人病胎児発生説」(胎児期での飢餓が将来の成人病の原因となる) である。

 

男はメタボ、女は難民状態。

見えてくる日本の未来は、世界一の不妊大国であり、

生活習慣病増加が最も懸念されるハイリスク国家である。

人間としてのサステナビリティ(持続可能性) が壊れつつある、

それが今の日本の姿である。

 

3番目は、農水省・大澤誠さん。

食を文化としてとらえる社会を目指したいと語る。

農水省では3年前に 「食に関する将来ビジョン」 を策定し、

健康と食と医の連携という新分野への展開を模索している。

そして今月、「和食」(日本食文化) をユネスコ無形文化遺産に登録させるべく

申請を出したばかりである。

 

e13032302.JPG

 

外国人観光客が日本に来て期待する第1位は、日本食体験である。

和食の神髄は自然の美しさの表現にあり、

新鮮な食材は多様性に富み、素材の味を楽しむ特徴を持つ。

その土地の年中行事などともつながっていたりする。

これは文化そのものである。

またかつての米国・マクガバン報告を持ち出すまでもなく、

日本食はバランスのとれた健康的食生活のモデルとして

長く世界から評価されてきたものだ。

 

これからももっと日本食の大切さを普及する活動を展開していきたいと

抱負をけっこう熱く語る大澤さんは、実は

僕も参加させていただいた 「地域食文化活用マニュアル検討会」 の

仕掛け人でもある。

 

食は将来の子どもたちの、ひいてはこの国の生命に関わる重大事である。

ただ絶望している場合ではない。

何を、どう食べるのか。 日本食という OS を、どうデザインし直すか。

屋台骨が崩れ始めた日本人を、どう鍛え直すか。

いろんな立場の人を総動員して、

あの手この手で 「食の再生」 に向かう必要がある。

 

ということで、次はワールドカフェ方式によるセッション。 

各テーブルごとで感想や知恵を出し合い、最後に

「これからの日本の食」 についてのキャッチフレーズを考えてください、

というお題に挑戦する。

 

e13032303.JPG

 

ここで、普段から何気なく思っていたことを口にしてみた。 

「味噌汁が、けっこう決め手になるような気がしてるんですけど。」

朝、忙しくても 「味噌汁一杯」 なら実行できないか。 

晩ごはんの際に翌朝分も一緒につくっておいて、朝はさっと温めるだけでいい。

具は日によって変えてみる。 とうふにワカメ、しじみ、ネギ、大根・・・

味噌という醗酵食は体にもいい。 出汁も隠れた栄養である。

味噌汁はそして、必然的に和食を求める。

 

予想外にウケて、味噌から大豆の話、醗酵食、菌の話、

はては味噌汁全国大会の開催・・・ と展開された。

辿りついたキャッチフレーズは、これ。

e13032304.JPG

 

みそ汁で世界を救う! 

- 言った以上、実行しなくちゃね。 いえ、してますよ、これでも。

 

竹村さんが最後に締める。

「食」 は人を育てる根幹である。

いろんな食材をどうインターフェイスさせていくか。

持ち方・運び方・噛み方、そして誰と食べるか、

食べ方のデザインを考え直したい。

そして次世代の舌を育てるための 「食の大学」 を、この街に出現させたい。

 

いま、フランスで 「OBENTO」 という言葉が流行り始めているそうだ。

栄養バランスと彩りに配慮され、調和的に配置された一食分のパッケージ。

地球食の新たなデザインを発信する力が、まだ日本にはある。

いや、あるうちに、自分たち自身が、食の力をちゃんと理解し直すための

運動が必要なように思う。

 



2013年3月20日

祝!開店 「ふくしまオルガン堂 下北沢」

 

突風が砂塵を巻き上げたかと思えば、記録的な夏日がやってきたりして、

ヘンな陽気が続いてる。

そんでもって今日は春分の日。

世間は春の気分なのかもしれないけれど、こっちは休日返上して、

来週(27日) 行なわれる学校給食全国集会の発表資料を仕上げる。

この手の宿題が、締め切りを過ぎて尻に火がつかないと、やっつけられない。

この性分が変えられないまま、長いこと生きてきてしまった。。。

与えられたテーマも、プレッシャーだった。

『ゼロリスクがありえない中で、どう食べるか』 ・・・ きついすね。

2年間取り組んできたことと、今到達している心境をお話しするしかない。

はたしてお役に立てるかどうか心許ない。

 

さてと、資料を送って開き直ったところで、

遅ればせながら日曜日の報告を。

 

「福島県有機農業ネットワーク」 が東京にアンテナショップを開設した。

菅野正寿さん(ネットワーク理事長) から開店祝いのご案内をいただいたので、

お祝いを持って足を運んだ。

場所は、若者の街、ファッションの街、演劇の街、下北沢。

 

何年ぶりだろう、下北沢に降りたのは。

若者たちで賑わう商店街を通り過ぎて、歩くこと約15分。

世田谷区代沢の住宅街の一角にオープンしたお店の名は

『ふくしまオルガン堂 下北沢』。

 

e13032001.JPG

 

少々奮発して、お花も贈らせていただいた。 

e13032002.JPG

 


原発事故から2年。

放射能とたたかいながら、「希望の種を蒔こう」 と励まし合ってきた2年でもあった。

この思いを、東京の人たちに伝えたい。

そして、ちゃんと測定して得られた結果もつけて、福島の有機農産物を

胸を張って PR したい。

東京と福島をつなぐ拠点にしたい。

東京に避難した方々との交流の場にもしたい。

 

そんな思いをいっぱい詰め込んでオープンした、小さなお店。

e13032003.JPG

 

オルガンの言葉は、オーガニック(Organic) と、

対話・交流を奏でるという意味が込められている。

 

挨拶する菅野正寿さん。 

e13032004.JPG

 

この日は、山都町・浅見彰宏さんのお連れ合い、晴美さんも

助っ人に駆けつけられていた。 

e13032005.JPG

 

そして何と!

ヴィライナワシロの元料理長、山際博美さんの姿も。 

e13032006.JPG

今は福島の食材を提案する 「山際食彩工房」 を主宰している。

実は、大地を守る会の元職員も一人、お世話になっている。

 

e13032007.JPG

 

お祝いのケーキは、当会でもお馴染のナチュランドさんから。 

e13032008.JPG

 

福島の地酒も並べられている。 

e13032009.JPG

 

菅野さんから頼まれて、

僭越ながら、乾杯の音頭を取らせていただく羽目に。。。

 

照れながらケーキカットする菅野さんだった。

e13032010.JPG

 

お店も続けていくとなると、けっこう厳しいこともあるに違いない。

それでも、ここまで頑張ってきたみんなの力と和を結びながら、

楽しくやっていただけたら、と思う。

e13032011.JPG

 

この2年、苦闘しながらも、

福島の有機農業者たちは王道を忘れずに歩んできたと思う。

本当に頑張ったと思う。

僕らはつい軽々しく 「支援」 とかいう言葉を使ってしまうけれど、

むしろ僕らのほうこそたくさんのことを教えられてきた。

しかも下北沢という街にお店をオープンさせるまで、前を向いて走って来られたこと。

ただもう スゴイ! のひと言に尽きる。

この可愛らしいお店が、福島の思いの発信基地となって、

また新しい都市との交流の場となって、

多くの人に愛されることを願ってます。

 

e13032012.JPG

 

皆様、お近くにお越しの節は、ぜひお立ち寄りください。 

「ふくしまオルガン堂 下北沢」 の HP はこちらから

⇒ http://www.farm-n.jp/yuuki/organ/ 

 



2013年3月16日

農と医の連携 -さんぶ野菜ネットワーク総会から

 

昨日は成田の某ホテルで、「さんぶ野菜ネットワーク」 の総会に出席した。

2年前の総会は、忘れもしない3月11日。

あの激震は、まさにこの総会の途中で発生した。

会議室から避難して、ホテルのテレビ大画面から見た津波の光景。

これが今起きている現実なのか、、、今でも明瞭に思い出される。

 

そして2年後の3月15日は、安倍首相がついに

TPP (環太平洋連携協定) への交渉参加を表明するという日にぶつかった。

何かが起きる、何かとぶつかるさんぶの総会・・・・

とか言いながら、総会自体は滞りなく終了。

 

e13031601.JPG

 

震災よりも原発事故による放射能問題で、

福島だけでなく関東各地の生産地も打撃を受けてきた2年間だった。

それでも 「さんぶ野菜ネットワーク」 では前年を上回る売上実績を果たし、

新規就農者が6名、新たな組合員として迎えられた。

研修生も8名いて、有機農業での自立に向かって頑張っている。

交渉内容が明らかにされないという TPP への不安は拭えず、

詭弁に満ちた開放論に怒りも収まらないが、

ここで後ろ向きになるわけにはいかない。

何とか農地を守りながら、地域を盛り上げていきたい、との決意が語られた。

 

前に呼ばれ、抱負を述べる新組合員の方々。 

e13031602.JPG

 

ネットワーク代表の富谷亜喜博さんによれば

「みんなすごい学歴の人たち」 だそう。

頭でっかちにならず、将来の中核になれるよう頑張ってほしい。

 

さて、この日の記念講演に招かれたのは、

北里大学名誉教授で、(財)微生物応用技術研究所長の

陽 捷行(みなみ・かつゆき) さん。

直接お会いするのは初めてだが、北里大学副学長時代に、

藤田社長宛てに送られてくる通信を読ませてもらいながら、

僕はこの方からたくさんのことを学ばせていただいた、そんな経緯がある。

 


陽(みなみ) 先生が一貫して提唱してきたことは、

「環境を基とした農と医の連携」 である。

 

20世紀は、「技術知」(ものをつくる知的能力) の勝利であった。

それによって文明が発達してきたとも言える。

しかし技術知には表と裏、光と影があり、結果的に

様々なかたちでの 「分離の病」 に侵されてきた。

一方で、人類が長い時間を通して生活の場から観察し、獲得してきた知恵がある。

これを陽先生は 「生態知」 と呼ぶ。

生態知は文化の進展をもたらしてきた。

技術知も生態知もともに人間の英知が生み出した貴重な財産である。

これからは、この二つを融合させた 「統合知」 の獲得が求められている。

 

たとえば堆肥などの有機物の施用が作物の増収に役立つ、という知識を

人は経験と観察から獲得したが(生態知)、

技術知に基づく農業生産の増大を目的とした過剰な窒素の使用は、

温室効果ガスの問題や河川の水質汚染、富栄養化などの

環境問題を引き起こしてきた(=分離の病の一形態)。

これからは、作物による窒素吸収効率の向上によって

亜酸化窒素や硝酸態窒素の発生を抑制するといったように、

農業生産と環境保全を健全に調和させる 「統合知」 へと

向かわなければならない。

21世紀は 「分離の病」 を克服する時代となる (でなければ生き残れない)。

 

e13031603.JPG

 

ここで忘れられがちなのが、人々の健康の基は何か、ということである。

医療の発達が 「健康」 ではない。

基は、環境と農業(健全な食の生産) である。

かつて農業生産を考える人たちは、よく土壌学を学んだ (陽先生の専門は土壌学である)。

今は環境を考える人たちのほうが土壌学を勉強している。

土の健康(=農) こそ、人の健康(=医) につながっている。

そもそもこの世に境目などないのだが、

学問はすべてを分離させて発展させてきてしまった。

 

農と医と人の健康、この境界をつなぐ言葉は、実は様々にある。

医食同源、身土不二、地産地消・・・そして農医連携だ。

(「農医連携」 は陽先生の造語。 医学の世界には 「医農連携」 という言葉があるが、

 先に病気があるわけではないから、と先生は逆にして使っている。)

 

先生は、農医連携を心した先達の名前を次々と挙げながら話を進める。

何人か挙げると-

・ ヒポクラテス・・・ 「食べ物について知らない人が、どうして人の病気について理解できようか。」

・ シーボルト・・・ 植物の育種から土壌まで研究し、かつ植物の薬効も研究し普及させた。

・ 北里柴三郎・・・ 医の基本は予防にあるとの信念で、環境を通した農と医の連携を説いた。

・ シュタイナー・・・ 宇宙的な生態系の原理に基づくバイオダイナミック農法を提唱。

・ 新渡戸稲造・・・ 「武士道」 の前に、「農業本論」 で 「農業は健康を養う」 と語る。

・ アレキシス・カレル・・・ 「土壌が人間全般の基礎なのであるから、私たちが近代的

  農業経済学のやり方によって崩壊させてきた土壌に再び調和をもたらす以外に、

  健康な世界がやってくる見込みはない。

  生き物はすべて土壌肥沃度(地力) に応じて健康か不健康になる。」

・ アルバート・ハワード・・・ 有機農業運動の創始者。 「土壌、植物、動物、人間、

  これらの4つの健康は、ひとつの鎖の環で結ばれている。」

・ アンドルー・ワイル・・・ 統合医療の世界的権威。 『医食同源』 『人はなぜ治るのか』 は

  世界的ベストセラー。 「健康な食生活は健康なライフスタイルの礎石である。」

 

日本はこれからの10年、20年で大きく社会構造を変えていく。

防災・地域の再生・医療・介護・農業・・・・・統合した公共政策を築く必要がある。

これに民間としてどう取り組んでいくか、が重要な鍵である。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シャンシャンと総会をやって飲む、んじゃなく、

こうやってしっかり座学も忘れない。

有機農業の人たちは、そういう意味でも、

この国の未来に欠かせない存在なのだと思うのである。 

 

国民の健康は、社会の安定の土台である。

そのためにあるはずのセーフティ・ネットをすべて崩壊させかねない TPP とは、

いったい誰のためか。

自由貿易による 「成長神話」 は、

ひと握りの勝者をつくるために修復を繰り返しながら再構築されてきて、

いよいよ最終のリーグ戦に入ったみたいだ。

恐ろしいのは、このゲームの進行とともに

社会全体が脆弱になっていってるとしか思えないことだ。

このゲームでは、勝者もまた生き残ることはできない。

なぜなら地球の調和(健康) を壊しながら勝ち残ろうとしているワケだから。

その前に、ただアメリカの餌食になるだけのような気もするが。。。

 

陽先生の影響でたくさんの本を読まされたが、

やっぱ僕の中でのベストは、今もってこの一行だね。

『 国民が健康であること、これは平凡な業績ではない。 』

     (アルバート・ハワード  『ハワードの有機農業』 より)

 

さんぶ野菜ネットワークの皆様。

無事総会成立、おめでとうございました。

陽先生とも話ができまして、良い刺激を有り難うございました。

ひるむことなく、前に進みましょう。

 



2013年3月14日

「Daichi & keats」 日本酒セミナー のご案内

 

季節の変わり目に入り、異常な風が吹く今年です。

日曜日には突然の 「煙霧」 に見舞われ、昨日はさらに強い 「風塵」 だとか。

電線に引っ掛かった自転車には驚きました。

皆様、体調のほどはいかがでしょうか。

 

さて、大地を守る会が昨年3月、東京・丸の内にオープンさせたカフェ&バル

「Daichi & keats」 では、開店一周年を記念して

4回連続での日本ワイン・セミナーを開催してきましたが、

記念企画の締めとして、「日本酒セミナー」 を開催します。

 

日時は3月30日(土)、18:30~20:30。

ゲストは、大和川酒造店の杜氏である佐藤和典工場長。

「種蒔人」 はじめ数種類の日本酒が堪能できます。

世界に誇る複雑な醗酵プロセスを経て醸される日本酒の世界に、

用意される 「D & k」 の料理。 さて、どんなコラボになるのでしょう。

参加費は、1周年特別価格! お一人様 3,900円。 

 

e13021118.JPG

 

飲みながら、食べながらのささやかな復興支援。

「この酒が飲まれるたびに、田が守られ、水が守られ、森が守られ、人が育つ」

(「種蒔人」 基金のキャッチフレーズ)。

そんな空間が生まれることを願って、多くの方のご参加をお待ちします。

詳細とお申し込みはこちらから (要予約です)。

 ⇒ http://ameblo.jp/daichi-keats/

 

おまけをもう一つ。

『つながろうフクシマ! さようなら原発 大行動』 に行けなかったお詫びに-

3月31日(日)、

大地を守る会の専門委員会 「原発とめよう会」 では、

ルポライターで 「さようなら原発 1千万人署名」 の呼びかけ人の一人、

鎌田慧さんをお呼びしての講座を開催します。

「鎌田慧さんと考える 原発にたよらない社会の作り方」

時間は14時~16時半。

場所は、池袋・豊島区生活産業プラザにて。

参加費 : 会員=無料、一般の方は500円。

お申し込み・お問い合わせは、原発とめよう会 tomeyoukai@daichi.or.jp まで。

 



2013年3月11日

共同テーブル、政府に 「提言」 提出

 

今日は3月11日。

早いもので、あれから2年が経ったんですね。

しかし復興はまだまだ、です。

メディアを通して伝わってくるのも、復興の歓びよりも、焦燥や怒り、そして慟哭。。。

政府はといえば、経済こそ優先とばかりに突き進んでいます。

事故の原因も現状も正確に把握できず、廃炉への道筋も

廃棄物処理問題も定まらないまま " 再稼働 "  を公言して憚らない強硬姿勢には、

戦慄すら覚えます。

 

さて、一昨年秋に生協など4団体とともに結成した

「食品と放射能問題 検討共同テーブル」(※) では本日、3月11日付にて、

国に対して 「提言」 を提出したことを報告しておきます。

提出先は3名の方々。

・ 原子力災害対策本部長 内閣総理大臣 安倍晋三 殿

・ 厚生労働大臣 田村憲久 殿

・ 農林水産大臣 林 芳正 殿

 

「提言」 内容は以下の通り。

 


食品中の放射性物質の暫定規制値の低減などに関する提言

 

わたしたち「食品と放射能問題検討 共同テーブル

(以下、共同テーブル)」では、各参加団体が実施している

食品中の放射性物質に関する検査結果を持ち寄り、

検出件数や推移などを検討・協議してきました。

 

2012年の検査データから一定の知見を得ることができ、

今後に向けた施策を協議しました。

これらを元に、以下の提言をいたします。

 

1.共同テーブル各団体の放射能測定の状況

 

・共同テーブルの各団体では、それぞれ独自の放射能基準を設け、

 取扱商品の放射能検査を実施してきました。

 計測結果は、消費者の商品選択に資するもの、

 消費者に安心を与え風評被害を低減させるもの、

 産地の放射能低減策に活用できるものとして、

 組合員・会員・消費者に向け、ホームページや店頭で公開してきました。

 

・参加5団体で、これまでに測定し、公開した件数は53,128件で、

 2012年だけでも37,301件になります。

 

・検査をおこなった商品は、加工食品など多岐に渡りますが、

 これらのうち同品目として集計が可能な商品については、

 測定結果を5団体で集約しています。

 集計した検査結果は22,667件です。

 

2.共同の集計結果からの提言

 

・わたしたちの検査結果と国・都道府県の検査結果の数値や傾向は

 概ね一致しています。

 私たちはこれらの検査結果から、

 以下の施策が可能であると考えています。

 

1) 品目ごとの検出状況を踏まえ、可能な品目については

 現在の新基準値(201241日より適用)を

 さらに下げるべきです。

 

・多くの品目において検出される放射線量は低下傾向にあります。

 

・共同テーブルの参加団体は

 政府の暫定基準を下回る自主基準を採用していますが、

 ほとんどの品目において自主基準をクリアできています。

 

・上記の状況から、この間、検出されていない品目については、

 現在の暫定基準値をさらに下げることは可能であると考えます。

 

2) 市町村単位の出荷制限は見直すべきです。

 

・現在、ある生産団体の作物から放射線が検出された際、

 当該団体が所在する市町村の単位で出荷制限がおこなわれています。

 

・しかし以下の理由から、市町村単位の出荷制限は見直し、

 生産団体単位、圃場単位、出荷単位など、

 きめ細かい出荷制限に移行すべきであると考えます。

 

きめ細かな検査に基づく出荷制限・出荷自粛要請をすべきです。

 

・基準値を超えた放射性物質の検出による出荷制限および

 出荷自粛要請は、自治体単位(合併前の旧自治体を含む)での

 指定になっています。

 しかし放射性物質による汚染区域は自治体単位の区域に基づいて

 いるわけではなく、自治体単位の出荷制限等は科学的な根拠に

 乏しいもので、汚染の実態を反映しているものとはいえません。

 きめ細かな調査・検査を前提に、検出していない地域は

 出荷できる制度とすべきです。

 

② 放射性物質の検出の原因がその地域に由来しない事例を

考慮すべきです。

 

・精肉から放射性物質が検出された場合、原因の多くは

 肥育時の餌によるものです。

 また原木栽培のしいたけの場合、原因の多くは原木に由来する

 ものです。

 畜産に使用する餌、原木しいたけ栽培に使用する原木などは、

 各生産者や生産団体が、それぞれ他の地域から取り寄せている

 場合もあります。

 

・放射性物質の検出の原因がその地域に由来しない事例の場合、

 一つの生産団体の出荷物から放射性物質が検出されたとしても、

 当該の市町村の作物を一律で出荷制限すべきではなく、

 生産団体ごとの出荷制限など、きめ細かい単位での対応をすべきです。

 

③ 積極的に除染に取り組み、効果を上げている生産者については、

検査を前提に出荷できるようにすべきです。

 

・ゼオライトや塩化カリウムの投入、表土の入れ替えなど、

 除染に積極的に取り組んでいる生産団体の生産物は

 確実に検査数値が下がっています。

 前項同様、ある生産団体の出荷物から放射線が検出されたから

 といって、当該区域の作物を一律で出荷制限すべきではありません。

 生産団体単位、圃場単位など、きめの細かい単位で対応し、

 検査の結果、数値の低減を実現している生産者からの出荷は

 認めるべきです。

 これは、生産者の除染の努力を後押しすることにもなります。

 

3) 検出が続いている作物については政府が調査・研究や支援を

おこなうべきです。

 

・共同テーブルの参加団体の検査結果では、

 ほとんどの品目が自主基準をクリアできていますが、

 一方で、残念ながら放射性物質が検出されてしまう品目もあります。

 

・国や行政の検査でも、原木の菌茸類、茶葉などから検出されています。

 共同テーブルの参加団体の検査結果では

 レンコンも数検体で検出されています。

 

・東京電力福島第一原発の事故から2年が経過し、

 非常に多くのデータが蓄積されています。

 こうした品目については、国や行政による調査研究、

 除染および濃度低減方法の研究支援、除染費用の支援など

 をおこなうべきです。

 

・国による出荷制限と自治体による出荷自粛要請の対象品目について、

 品目によって大きく齟齬の発生しているものがあります。

 国と自治体でそれぞれの検査結果などの情報を共有し、

 連携する体制を整えるべきです。

 

 

以上

 

 

※ 「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 構成団体

  ......(株)カタログハウス、パルシステム生活協同組合連合会、

     生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、生活協同組合連合会グリーンコープ連合、

     (株)大地を守る会

 



2013年3月 9日

敵の動態を追い詰めたい

 

今日は明治公園で開催された

「つながろうフクシマ! さようなら原発大集会」 に行く予定でいたのだが、

溜まった宿題のために断念する。 

 集会には全国から1万5千人の人々が集まったとのこと。

 脱原発の願いはけっして後退したワケではない。

頑張って前に進みましょう! とパレードに参加した気分になって気合いを入れる。

(パレードに参加された皆様には、調子のいい台詞で申し訳ありません。)

 

昨日は一日がかりで、市民科学研究室の上田昌文さんと一緒に、

関東のとある場所にて土壌サンプリングを実施した。

森林や水系からの放射性物質の移動は、まだ充分に解明されていない。

農産物の濃度は相当に下がっている

(特定の作物を除いて、ほとんどはNDレベルになってきている)

とはいえ、今後の影響については、まだ楽観は禁物である。

農産物の安全性を可能な限り確保していくためには、

野菜の測定結果だけで一喜一憂せず、

目に見えない敵の動態を追跡していくことが求められる。

自分たちでできることは限られているけど、それでも

やっただけの効果が上がるよう、地点を決めてモニタリングを継続してみよう、

と上田さんと申し合せて実施に踏み切ったものだ。

 

e13030902.JPG

                                             (↑ 上田昌文さん)

この日は5ヶ所 × 3ポイント = 計15サンプルの土を採取した。

計測には茨城大学農学部の小松崎将一准教授も協力を買ってくれて、

大学院生を派遣してくれた。

サンプラー(採土器) の扱いも慣れていて、お陰で大変助かった。

 

お国のためだ、いやもとい、

人類の未来のためだ、がんばれ若者!  

e13030903.JPG

 

この測定結果がどうのではなく、

今後の経過を観察していくことで、いずれデータが何かを語り始める。

結果はどうあれ、データが無駄になることはないはずだ。

 

上田さんとは、今月末にもう一日、サンプリング回りをする予定。

根気のいる作業ではあるが、これも

高価な測定器を持つ者の、これからの務めだと思うのである。

できるなら、この2年間であまた誕生した民間の測定機関とも、

必要な調査やデータをネットワークさせられないものか、と思ったりもする。

僕がいま危惧し始めているのは、

せっかくの機器があちこちで遊び始めているんじゃないか...... ということだ。

やることはまだまだいっぱいある。

敵の動態を、僕らはまだ殆どつかめていないのだ。

追い詰めたいよね、何としても。

 



2013年3月 6日

「アド街ック天国」 と 「遠くへ行きたい」(予告)

 

昨日、社内でいっとき盛り上がった話題をひとつ。

TBSテレビの朝番組、「みのもんたの朝ズバッ」 の

「ニュース目のつけドコロ」 というコーナーで、

大地を守る会が取り扱う 「もったいナイ魚」 が紹介されたのです。

これまで捨てられていた未利用魚が流通に乗り、家庭で食べられているという話。

スーパーなどでは並ばないチカやミズダコの頭も登場して、

我が水産物仕入担当者のひと言 -「売れてます!」 が流れた。

僕も観るつもりで目覚ましをかけたのだけど、

朝6時に起きられず (放送は6:30頃から約2分間だったそう)、

みんなの評判を聞いて回るだけ。

質問から 「売れてます!」 の間に、一瞬の間(ま) があったようで、

社員の声は、「笑えた」 「微笑ましい」 から 「あれはバレた」(何が?) まで。

まあ 「もったいない」シリーズばかりが売れても、それはそれで困るので、

あんまり無理しないで、「もう少しファンを増やしたいですね」 くらいがよかったかもね。

 

テレビ話題になったので、生産者が登場する番組予告を二つ。

 


ひとつめ。

関東地区では3月16日(土) 午後9時から、

テレビ東京 「出没!アド街ック天国」 に、大和川酒造店 さんが登場します。

今回は会津・喜多方が誇る飯豊山の伏流水がテーマだそうで、

1月に、大和川さんの蔵で仕込み水をタンクに入れる場面や北方風土館などを

撮影していかれたとのこと。

どうせなら2月の 「大和川酒造交流会」 も撮ってほしかったなぁ、

「天国」 といえばこのツアーじゃんか。。。

ま、冷静に、冷静に。

そんなことはともかく、種蒔人ファンは必見です。 お見逃しなく!

番組HPはこちら ⇒ http://www.tv-tokyo.co.jp/adomachi/ 

 

 

ふたつめ。

こちらは日本テレビ(制作は読売テレビ)の長寿番組、『遠くへ行きたい』。

放送は3月17日(日)朝7:30~。

北海道はオホーツクの町・遠軽(えんがる) 町で

在来豆を販売する 「べにや長谷川商店」 さんが登場します。

今回旅する人は元Jリーガー日本代表選手、今は

スポーツコメンテーターとして活躍する武田修宏(のぶひろ) さん。

オホーツクの流氷を眺め、網走産の魚介に出会い、ワカサギの伝統漁を見学し~

山間部の遠軽町で犬ぞりを体験して、そして

「在来種の豆」 に全国から注文が来るというお店を訪ね、そこで

地元に伝承されてきた前川金時を使った 「ばたばた焼き」 なるものを発見する~

というストーリー。

番組HPはこちら ⇒ http://www.ytv.co.jp/tohku/

 

最初にこの一報をくれたのは、会員の O さんからでした。

べにやさんが募っている 「在来種の豆の 畑のオーナー」 にも入っている方。

Oさん、ご連絡ありがとうございました。

17日は、ゼッタイに早起きします。

(念のために録画も・・・) 

 



2013年3月 5日

「食」 からの CSV

 

ダラダラと東京集会レポートを続けている間にもいろんなことがあって、

日々何がしか動いている。

お月さんのようにただ満ち欠けを繰り返しているだけでないことを願いながら。

トピックをいくつか残しておきたい。

 

2月25日(月)。

二日酔いで東京集会の服装のまま、

編集プロダクションからの取材を受ける。

福島県から委託を受け、6次産業化を推進するためのパンフレットを作成中とのこと。

しかし一次産業者が自ら農林水産物を加工・商品化して売り出すにも、

いかんせん今の福島では放射能に対する風当たりが強く、

新たな販路を獲得できる状況ではなくなってしまっている。

ただの手引書では生産者を後押しするものにはならないのではないか

と考えた結果、福島の生産者を支援している団体もあることを紹介し、

メッセージを掲載したい、ということである。

 

約2時間お話ししたのだが、

放射性物質の基準値の考え方、生産者と取ってきた対策の成果など、

かなりの時間が放射能対策の話となってしまった。

でも、こういう話が聞けてかえって心強く思ったとの感想をいただき、

こちらも安心した。

6次化では、まずは地域に貢献するものを、と強調させていただいた。

地域の潜在力やニーズとつながっていて、

ステークホルダー (その製品に関わる人々) が広がっていくようなもの。

まずは地元で消費され、自慢になるようなもの。

たとえば、帰省した息子がお土産に持ち帰りたくなるようなもの。

そういうものこそ持続し、発展する可能性も生まれるような気がする。

大消費地にいきなり目を向けても、そこは厳しい淘汰の世界である。

しっかりした価値 (土台) が設定されてないと、

一瞬の消費財として使い捨てられる  " モノ "  になりかねない。

何のための6次化なのか、目標を定めて取り組んでほしい。

 

このパンフレットがどういう範囲で配布されるのか、聞きそびれたけど、

撮られた写真が酒臭くないことを祈る。

 

続いて2月26日(火)。

夜、丸の内での 「地球大学」 の会合に出席。

座長の竹村真一氏が招聘したコア・メンバーと称する関係者での集まりで、

2012年度の活動を総括し、来年度からの展開について語り合った。

竹村さんらしい大きな構想が語られたのだが、

一年前に立ち上げたものの低空飛行を続ける 「つながる食プロジェクト」 の

課題も抱えている身として、偉そうなことは言えず、

ただ沸々と闘志を燃やすまで。

 


ひとつここで語られた内容を紹介すると、

これからの企業の社会的方向性は、CSR から CSV へと進む、ということだ。

 

企業がただ利潤を追求するだけでなく社会的な課題に対して貢献する、

いわゆる CSR (Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任) は、

企業の本体とは別の活動と見られがちであったが、

これから求められるのは、社会的課題の解決を事業本体が担う

CSV (Creating Shared Value、共通価値の創造) である。

マイケル・ポーターというハーバード大学の教授が提唱したもので、

社会問題の解決と企業の利益創出を両立させる、という考え方。

この機能を街の中に埋め込んでいこう、というのが次の構想であり、

そのキーワードのひとつが、

万人に共通する生きる根本活動としての 「食」 である。

さて、僕らは何ができるか-。

 

しかし・・・ CSV って。

社会的課題に取り組むことで新たな価値を創出し、

結果として経済的価値も創造される。 そんな企業活動が求められつつある。

って、何をかいわんや! ではないか。

これこそまさに大地を守る会を誕生させた組織コンセプトに他ならない。

僕らは37年にわたってこの点で苦心惨憺、生きてきたのだ。

いよいよ時代がここまで喋り出した。

僕らはここで改めて腹を据えて、挑戦者魂を発揮させなければならない。

生きて、その向こうを目指してみようじゃないか。

  - とまあ、いきなり気合いを入れるのは簡単だけど、

   言えば言うほど自らの首を絞めることも分かっている。

 

2月27日(水)は、週刊誌 『アエラ』 の取材を受ける。

" あなたは福島の野菜を食べますか? "  をテーマに

各地でいろんな人の取材を続けてきて、どうも袋小路にハマってしまったようだ。

ご同情申し上げながら、

ここでも自分たちが取ってきたスタンスと取り組みを語るしかない。

答えは、ある意味でシンプルである。

事実を知る、影響について出来るだけの情報を集め、自らの判断基準を持つ。

生産地が対策に努めるなら、私は応援する。

それが未来の保証につながっていると確信する者だから。

応援の形は多様にあり、それは各々が決めることである。

 - 採用されるかどうかは分からないので、とりあえず忘れることにする。

 

3月1日(金)。

農林水産省が関係省庁と連携して進めてきた

「地域食文化活用マニュアル検討会」 の最後前のひと仕事、

巻末に掲載するという検討委員のコラムを書き終える。

付けたタイトルが、かなりクサい。

「食文化は、ふるさとの  " 風景への愛 "  とともに-」。

かなり情緒的な文章を書いてしまった。

読み返すとやっぱり気恥ずかしい。 しかしもはや書き直す気力なく、

「もう、どうでもしてっ」 と 「送信」 クリック。

あとは得意の開き直り精神で臨む。

 

「活用マニュアル」 という表現が、どうも上から目線的で気に入らない、

というのが委員の大方の意見で (そういうメンバーを選んじゃったのね)、

最終的に、

『 日本食文化ナビ -食文化で地域が元気になるために- 』

というタイトルで落ち着いた。

最終チェックがまだ残っているけど、

まあまあ自分なりに役割は果たせたか、という感じではある。

出来上りを見て、至らなかった点に気づいたりするのだろうが。

 

以上、先週のトピック 4本。

書いてみれば、すべてつながっていることに気づかされる。

「食」 からの CSV、体現するのは他でもない、、、と言わずにどうするよ。

 



2013年3月 3日

『内部被ばくを生き抜く』

 

2月24日(日),「大地を守る会の オーガニックフェスタ」。

放射能連続講座Ⅱ-第1回 を終えた後、

本音を言えばそのまま会場に残って、次の細川モモさんの講演を聞きたかったのだが、

同時刻に行なわれる映画 『内部被ばくを生き抜く』 の上映会に呼ばれていた。

映画上映と鎌仲ひとみ監督のトークの後で、

大地を守る会の放射能対策について報告しろ、というお達しである。

講座会場に残られた方々としばし会話をして、

上田さんに 「ぜひフェスタを楽しんでお帰りください」 と頭を下げて、

バタバタと4階から3階に移動する。

 

この映画は事前にDVDで観ていたものだが

(借りたDVDで。 鎌仲さん、スミマセン。 今度買います)、

感想も入れたいと思って、改めて頭から観させていただく。

4基の原発が爆発し、大量の放射性物質が降ってしまった日本で、

私たちはこの  " 内部被ばくの時代 "  を

どうやって生きてゆかなければならないのか。

4人の医師をたずね、道を探るドキュメント。

映画の紹介はこちらから ⇒ http://www.naibuhibaku-ikinuku.com/

 

e13022808.JPG

 

上映終了後、一瞬、鎌仲監督の姿が見えなくなり、

急きょ先に話す羽目になった。

与えられた制限時間は、10分。

 


しかし、この2年間の取り組みを話すには、さすがに足りない。

(受けた以上は時間内に収めるのが礼儀というものだが・・・)

必死で測定体制の確立に走ったこと、情報開示に踏み切った際の思い、

生産者との厳しいやり取りがあったこと、

その上で除染対策を支援してきたこと、

そして自主基準の策定と放射能連続講座の開催

などなど、早口で喋らせていただいた。

 

ちなみに 「放射能連続講座」 では、昨年9月に肥田舜太郎さんをお呼びし、

今年の4月には児玉龍彦さんをお呼びすることになっている。

そして秋に計画している最終回は、鎌田實さんから承諾の返事をいただいたところ。

まるでこの映画を追いかける格好になっちゃって、鎌仲さん、スミマセン。

 

映画への補足として一点。

映画のなかで、二本松市のお寺・真行寺の副住職で

「TEAM二本松」理事長の佐々木道範さんと、そのご家族が登場する。

そこで 「子どものために少しでも汚染の少ない食べ物を選びたい」 と

全国から届けられた県外の野菜や卵を

ご近所の方々と分け合っている場面が紹介されている。

取材当時の状況としてはやむを得ないことではあるのだけれど、

二本松の生産者たちは必死で調査や対策に取り組み、

今年になって

「 ようやく地元の給食に地元の米 (もちろん検査でNDとなったもの)

 を復活させることができた」

という声も届いてきている、そんな今々の現状もお伝えさせていただいた。

食の安全と国土を回復させるたたかいを粘り強く進める福島の生産者がいることも

忘れないでいてほしい、と。

 

ちなみに、佐々木道範さんとは1年前の2月に、ジェイラップで会っている。

真宗大谷派の僧侶の方を連れて、自分たちに何ができるのかを模索されていた。

なんか深く悩まれているような感じで、一直線で見つめられた記憶がある。

あんな美人の奥さんがいたなんて・・・

どういう意味かって? いや、ただの嫉妬です。

 

話し終えて見れば、10分超過。

原発とめよう会の皆様、鎌仲様、どうもスミマセンでした。

 

e13022809.JPG

 

放射能汚染という厳しい時代を生きることになったけど、

やれることはたくさんある。 やればやっただけよくなる。

そのことを忘れないで、希望を持って頑張りましょう。

最後に元気を与える鎌仲トークだった。

 

鎌仲さんや生産者の方と立ち話をして、気がつけば16時。

お昼も食べず、他の会場も見ることなく、サンプラザ中野くんのライブも聞けず、

私の 「オーガニックカフェ 2013」 は、放射能2本勝負で終了した。

 

延長戦の話は、割愛。

 



2013年3月 2日

放射能から学んだこと -生産者の発言から

 

春一番が吹いても、気分はモヤモヤでしょうか。

中国からの、いま俄かに発生したワケでもない PM2.5 とかの影響も取りざたされて、

これからは黄砂もやってくるし、花粉が飛ぶ時期に入ったシグナルでもあるし。

 

東京集会開催にあたっての藤田代表の冒頭挨拶で、

中国で有機農産物流通組織をつくる支援を進めているという話が

少々控えめに報告されたけど、

中国で食と環境を守る担い手を育てることは日本にとってもメリットのあることだし、

「強い外交」 以上の国際連帯だと、

やる以上それくらいは断固言い切ってもらいたいものだと思った。

なけなしの金も人も使ってやるしんどい作業には、やっぱ大義が必要だから。

 

さて、「放射能連続講座」 の続き。

生産者2名の方に登壇いただいた。

 

福島県須賀川市・ジェイラップ代表の伊藤俊彦さん。

「稲田稲作研究会」 の米を守るために、正真正銘、命を張ってきたことを、

僕は知っている。

 

e13022806.JPG

 


原発事故があって、

安全神話に胡坐をかいて何ら危機に備えていなかったことを、

腹の底から後悔しました。

今は、ただしい知見とデータを残していくことが、

地球のどこかで何かが起きたときのための、恩返しになると思っています。

 

震災と事故のあと、心に決めたことは、農産物をただ売るためでなく、

「自分たちの家族を守る」 ために行動しよう、ということでした。

危ないと思うものは食卓に並べない。

同じように人に食べさせるワケにもいかない。。。

 

今年(2012年産) の福島の米は

全袋検査で 99.8% が 25Bq 以下という結果を得ましたが、

自分たちは独自の基準値を持って、1Bq でも下げようと努力してきました。

稲作研究会メンバー全部の田んぼの坪刈りをして、

稲刈り前から田んぼごとのデータを取ることで、米を出荷する際に

たまたま高いものが混ざるといったことも防ぐようにしました。

 

1年目(2011年産) は、玄米ベースで 3.1Bq。

2年目(2012年産) は、 2.5Bq まで下げられた。

もっと下げられると思って実験をやってきた田んぼでは 2.1Bq 平均を達成しています。

これだと年間60㎏(現在の日本人平均消費量) 食べたとして、

0.0005mSv (=0.5μSv/マイクロシーベルト) くらいですかね。

来年の目標は、玄米ですべて 2 以下 (白米で 1 以下) にしたいと考えてます。

  (注・・・これらの数値は、ゲルマニウム半導体検出器で相当に時間をかけて

   計測できる、通常はND -検出下限値以下- で語られるレベルである。)

 

自分も4世代8人同居で暮らしています。

「家族を守れなくてどうする」 という思いで一所懸命、

できることをやろうと試行錯誤してきました。

やろうと思ってもできないことはありますが、

それでもやればできることのほうがはるかに多い、ということも学びました。

その模索が、結果的に我々を進化させたように思います。

国ではなく、自分たちの基準で判断し、実践して、結果をちゃんと発信する。

これからもたしかな情報発信に努めながら、

いい百姓を目指して頑張りたい。

 

二人目は、「あいづ耕人会たべらんしょ」 の浅見彰宏さん。

大企業勤めをきっぱり捨てて、会津・山都町に入植して17年。

江戸時代から築かれてきた水路を守る活動を全国に発信し、

今ではすっかり地元の古老たちからも頼られる存在になっている。

e13022807.JPG

 

家族に安全なものを食べさせたいという思いで農業をやってきました。

福島原発から 100~120km の距離にあって、

最初は情報も知識もなく、安全かどうかも分からないまま、

このまま野菜を人に食べさせていいのか、と悩みながら悶々としました。

幸い 「食べらんしょ」 での野菜の出荷前に、大地を守る会で測ってくれたことは

本当に有り難かった。

 

今は2年経ってデータも集まり、何とか落ち着いて判断できるようになってきました。

地域資源を活用する有機農業にとって測定器を持つことのメリットは、

資材を計測できることだと思っています。

堆肥の原料の安全性も確認しながら使うことができる。

(それは地域にとっても安心の材料を提供できる、ということである。)

 

有機農業は、ひとつの生産手段とか営利活動ではなくて、

未来への財産を残す、引き継ぐ、そんな職業だと思っています。

この環境を未来に残すために、耕し続けたい。

 

一番怖いと思うことは、(消費が) 東日本産を避けることで

農業が顧みられなくなったとき、農家の意欲が喪われていくことです。

いま福島で耕作放棄地が増えています。

地域が衰えると、やる気のある農家も続けられなくなる。

もう一度、農業の価値を見直す作業を、皆さんと一緒にやり直したいです。

 

・・・・・・・・・・・・

放射能問題は、生きることの本質を私たちに突きつけている。

国に対して言いたいことは山ほどあるが、

社会の土台にあるのは人とモノの流れ (生産と消費のつながり) であって、

それは我々の日々の営みによって築かれていく。 あるいは壊れてゆく。

暮らしを他人任せにしては、社会は脆弱になり、

結果的に社会コスト (外部不経済) は膨らみ続ける。

格差社会を拡大再生産させる  " 顔の見えない "  グローバリゼーションの世界では、

そのしわ寄せは不均衡な帳尻合わせによって糊塗され、

ツケは未来世代が負うことになる。

その予兆が、目の前に迫っている増税である。

 

これは食品の安全性による切り分けではなくて、

大事なものを取り戻す作業なのだ。

 

東京集会レポート、もう一回続く、で。

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ