放射能対策: 2012年4月アーカイブ

2012年4月27日

大地を守る会の「放射能連続講座」、準備進行中

 

4月のブログ空白期間中で、嬉しかったことが一つ。

大地を守る会でも取り組んでいる

「さよなら原発1000万人アクション・脱原発署名」 に、

福島県二本松市のリンゴ生産グループ 「羽山園芸組合」 さんから

270名分の署名が届いたという報告。

3月31日付日記 で紹介した3人が手分けして、

ご親戚ご近所(と言っても距離はある) を回って集めたんだそうだ。

田舎で署名を集めるのはけっこう大変なことだけど、

羽山という山あいで暮らす人たちの思いが、この数から伝わってくる。

 

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羽山園芸組合代表の武藤喜三さん(写真中央) は以前から、

都内で開かれた脱原発の集会などにも、静かに顔を出して静かに帰るような方だった。

去年の原発事故には深く思うところがあるに違いない。

悔しさを胸の奥に秘めて、黙々と除染作業を続けた冬だったね。

 

さて、今日は東京大学理学部の早野龍五教授を訪ねた。

昨年10月のニコニコ生放送でご一緒して以来の再会。

用件は、いま準備している連続講座の講演依頼と、 

弊社・宅配部が試験的にやろうとしている食事一食分のまるごと測定、

いわゆる  " 陰膳(かげぜん) 方式 "  を実施するにあたってアドバイスをいただくこと。

 


「陰膳」 というのは、元々は仏様にお供えする食事のことだったと思うが、

今では、旅に出た人や出征した家族の無事を祈願して用意する食膳を指すようだ。

いずれにしても  " 一緒に食事をする "  ことで、

いつも  " 共に居る "  という願いを込めたものなのだろう。

僕の実家(四国) では、仏壇に供えてチンチンとリンを打って手を合わせるのが、

子どもの朝イチのお勤めだった。

あの頃はただ 「仏さんのお膳」 と呼んでいたけど。

 

それが何の因果か、放射能を測るために使われるようになった。

初めて 「陰膳方式」 という用語を耳にしたときは意味が分からなかった。

この方式を、学校給食での汚染 (被曝) 実態を知るために取り入れようと

提唱したのが、早野教授である。

現在各地の自治体で採用されてきている。

 

この方式にもメリットとデメリットがある。

一食分の食材をまるごとミキサーにかけて測るため、

仮に微妙な数字が出た場合に、どの食材由来なのかは明確にできない。

これはあくまでも、日常的にどれくらいの放射性物質を体に取り込んでいるのか

事実を知り、冷静に判断するための手段である。

うろたえない知識と落ち着いた判断力が求められる。

 

宅配部では、せっかくゲルマニウム半導体検出器という高性能の機械があるのだから、

この方式で会員からの測定依頼を受けてはどうかと考えたようだが、

それが会員サービスにつながるかどうかは慎重に考えた方がいい、

というのが僕の意見だった。

 

と言いつつも、一方で僕の方はというと、この一年で揃えてきた測定体制を

将来にわたって有用なものとして活用させるためには、

測定器というツールを様々な観点で使いこなす力が必要になってくると思っていて、

そのひとつの試行として、この方式の意義を正確に理解しておきたいと考えて、

早野さんに講演を打診していた。 

 - というワケで、宅配部の担当一人を連れて、今回の訪問となった。

 

同行した職員(女性) は、早野教授から直接レクチャーを受けたことで、

なんかとてもシアワセそうだった。

僕も講演の日程や概要を決めることができて、成果ありの半日となった。

 

講師陣がそろってきたところで、いま準備を進めている講座の概要につき、

とりあえずここまでの進捗報告、予告編をアップしておきましょうか。

 

『 大地を守る会の 放射能連続講座

  ~食品と放射能:毎日の安心のために~ 』 を開催します。

◆第1回 ...... 6月2日(土) 午後1時半~4時

  テーマ = 「今後の影響をどう予測し、どう心構えをするか」

  講 師 = 上田昌文さん(NPO法人市民科学研究室代表)

  会 場 = 杉並区産業商工会館

◆第2回 ...... 7月7日(土) 午後1時半~4時

  テーマ = 「正しい食事こそ最大の防護」

  講 師=白石久二雄さん(元・放射線総合医学研究所 内部被ばく評価室長)

  会 場=都内(未定)

◆第3回 ...... 7月21日(土) 午後1時半~4時

 テーマ = 「測定を市民のために ~陰膳法から学ぶ~」

 講 師 = 早野龍五さん(東京大学大学院教授)

 会 場 = 都内(未定)

◆第4回 ...... 8月18日(土) 午後1時半~4時

 テーマ = 「海の汚染を考える」

 講 師 = 勝川俊雄さん(三重大学准教授)

 会 場 = 都内(未定)

◆第5回 ...... 9月15日(土) 午後1時半~4時

 テーマ = 「いのちを生きる ~放射能とたたかい続けた医師からのメッセージ」

 講 師 = 肥田舜太郎さん(被曝医師、元・埼玉協同病院院長)

 会 場 = 都内(未定)

 

第6回は現在、講師交渉中。

テーマは 「低線量内部被ばくを考える」 を予定しています。

 

大地を守る会会員には来週、予告チラシが配布されます。

ホームページでは、15日にアップ予定。

会員以外からの参加も受け付けます。

ただし会場キャパの都合により、申し込み多数の場合は抽選となります。

 

各回とも、講師との質疑でやり取りしていただくコーディネーターを

用意したいと考えています。

第1回は、「出張食いだおれ日記」 以来、すっかり有名人になっちゃった

畏友・山本謙治さんにお願いしました。

また各回とも USTREAM で中継し、視聴者からの質問も受ける形を検討中です。

 

今回のシリーズで、どうしても外せないと思った方がいる。

95歳の被曝医師・肥田舜太郎さん。

4月7日にお会いして講演をお願いした際の返事が、

「体さえよければ、ね。 あんまり先のことは分からないけど。」

生きてる限り伝え続ける・・・・・ 執念というか、オーラを感じた。

ぜひとも聞いてほしい。

 



2012年4月25日

今中哲二さんの講演会から

 

科学は死を他人事にする。

 

- どこかで読んだ誰かの言葉かもしれないけど、

低線量被曝のシンポジウムを聞きながら、浮かんできた。

一人の死や病気が、統計上の 「1」 として語られる。

だからこそ僕らは、科学に倫理を求めたくなるのだ。

その 「1」 にも、私の身体ひとつ分の重みがあることを分かっていてほしくて。

 

昨年12月に 菅谷昭・松本市長を訪ねた とき、菅谷さんが語っていた。

「国の審議会に呼ばれたとき、専門家の方がね、

  『甲状腺がんは死ぬ病気じゃないから (大したことない) 』 って言ったんですよ。

 冗談じゃないです、と私は言いました。 医者として許せなかったですね。

 これは本人にとっても家族にとっても、

 人生が変わるくらい、とても辛いことなんですよ。」

どんな場合でも、忘れたくないことだと思った。

そして今の僕の心情は、内部被曝リスクを語る人のほうがモラルが高い、

という印象を抱いている。

いやここは、ヒューマニズムと言うべきか。

 

さて、まゆつば科学であってはならないと、慎重に

内部被ばくデータを眺める今中哲二さん(京都大学原子炉実験所助教) には、

3月30日に、「共同テーブル」 の勉強会で話してもらったので、

時間は遡るが、いちおう簡単にでも日記として残しておきたい。

 

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場所は新宿、カタログハウスさんのセミナー・ルーム。

依頼した内容は、ベラルーシやウクライナで食品基準が設定されていった

背景を学びたい、ということだったのだが、

今中さんが設定したテーマは、

「 " 汚染食品との向き合い方 "  について考えていること」

というものだった。

そういう心境だったんだろうね。

 

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日本も  " 放射能汚染と向き合う時代 "  になった。

今中さんは10日前にも東京・日比谷公園の空間線量を測定していて、

「やっぱ、東京はどこもセシウムだらけだなあ」 と言い放つ。

そこにずっと立っていたと仮定した場合の外部被曝量は、

年間 440μSv (マイクロシーベルト、=0.4mSv)。

吸入被曝は、0.15 μSv (0.00015mSv)/年。

 

さて、内部被曝はどうだろう。

この4月から国が設定した放射性セシウムの規制値 100ベクレル/kgの食べ物を

毎日食べ続けたら-

全量を胃腸壁から体内に取り込み、体に均一に分布し、

ICRP(国際放射線防護委員会) が考える生物学的半減期(大人約100日、子供約30日)

にしたがって排泄される、と仮定して、

また大人が一日約2kg、子供が約1kg食べたとして、

大人=4μSv/日、年間1200μSv(1.2mSv)。 子供は年間 400μSv(0.4mSv)。

 

実際に流通される食品は規制値よりかなり低いはずなので、

食品汚染にともなう大きな内部被曝はなさそうだ。

幸いなことに福島では、ストロンチウムやプルトニウムの汚染は

とりあえず無視できるレベルのようであるし。

 

といって、基準値以下だから  " 安全 "  なわけではない!

発ガンに関する線量・効果関係は

「しきい値なし直線」(ゼロから比例的にリスクは高まってゆく) である。

1ミリシーベルトの被曝により、後に発ガンする確率は

(人間集団の平均で) 1万分の1である。

環境や食物が汚染されていることを承知で、

それを引き受けながら生きてゆかざるを得ないのが、

" フクシマ後の時代 "  なのだと思う。

 

影響を観察できないからといって、" 影響がないわけではない " 。

低レベルの被曝による  " ガン以外 "  の影響は、まだ  " よく分からない " 。

私たちは、どこまでの汚染を引き受けるのか、どこまでの被曝を我慢するのか、

答えはない。

ただ・・・・・お前ならどうする? と問われれば、こう答えるようにしている。

・大阪の汚染は・・・ 気にならない。

・娘が東京にいるが・・・ 避難するほどでなないだろうと伝える。

・私が福島に住んでいたら・・・ 住み続ける。

・孫が福島にいたら・・・ まだ答えを持っていない。

 

とにかく、原発はやめにしよう!

 

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2012年4月24日

低線量被曝に向き合う(続き)

 

4月21日(土)、「低線量被曝に向き合う ~チェルノブイリからの教訓~」 シンポジウム。

残りの報告を。

 

べラルーシ科学アカデミー主任研究員、ミハイル・マリコ博士の講演。

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博士からは、ベラルーシでの、チェルノブイリ事故由来による

白血病、固形ガン(胃がん、肝がん、乳がん、膀胱ガン、甲状腺がん) の

追加的発症(放射能由来による増加) や、

新生児の先天性異常の増加データを示しつつ、

安全な被ばく線量(しきい値) はないこと、

特に妊婦への影響が指摘された。

 

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マリコ氏のデータに対し、

沢田昭二・名古屋大学名誉教授が以下のようなコメントを寄せている。

1.比較対象群の設定の問題や、初期被曝の測定の不充分さから

  過小評価になっている可能性がある。

  つまり低線量の長期被曝によるリスク (晩発性障害) はもっと高い可能性がある。

2.いずれにしてもこの問題は、福島原発事故による被曝の影響を考える際に、

  参照すべきデータである。

  日本政府の責任で健康診断と治療体制を充実させ、

  晩発性障害の早期発見、早期治療によって被害を最小限に抑える必要がある。

3.これからは食品による内部被曝の影響が主な問題になるので、

  放射能の影響を避ける農業、畜産、漁業などの仕事に対する援助と、

  測定器を充実させた流通体制の整備をすべきである。

 


会場でのコメンテーターは、京都大学原子炉実験所の今中哲二さん。 

マリコ氏とは長年の議論仲間だと言う。

 

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今中氏は、よく知られた脱原発派の研究者であるが、

低線量被曝影響に対する判断は慎重である。

「まだよく分かっていない」 以上、氏にとってこれはまだ 「仮説」 である。

しかしながら、もしかしたら、低線量被曝研究についての

" 枠組み転換 "  が求められているのかもしれない、との視点を提供した。

 

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低線量被曝による影響については、

発症までの時間によって様々な外部要因が生まれるため、

放射能による影響とは明確に特定できなくなる。

これを解決するには、長い時間をかけた、しかもできるだけ数多くの人を

比較対照しながら見続ける疫学的手法に頼るしかない。

 

今中さんには、実は3月30日に

「食品と放射能問題検討共同テーブル」(於:カタログハウス) で講演をお願いした。

この報告もしなくちゃ、と思ってるんだけど・・・追いつけないね。

 

質疑応答では、報告された研究内容に対する質問だけでなく、 

チェルノブイリ後の住民対応(移住や健康調査・対策など) や、

食品の安全性基準の設定経過、はては瓦礫対策と、具体的質問が数多く出された。

 

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日本はどうも、正確な事実調査とそれに基づいた効果的な対策を目指すことより、

国民の不安行動を怖れるあまりに、安全を強調しすぎてきた傾向がある。

それが結局、国への不信を生んできた。

「福島のすべての人の医学登録簿(健康調査と治療履歴) をすぐに作ってほしい。

 それは世界の人々(の予防) のためにも必要なこと。」(ステパーノヴァ教授)

こういう感覚がほしいのだが、どうも生まれてこない。

 

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低線量での長期被曝による晩発性影響。

この問題は長い論争が続くのだろうが、

日々食を運び続ける僕ら、日々何かを食べ続ける僕らは、

専門家論争が決着するまで思考を停止させておくことはできないわけで、

こういう仮説がある以上、「予防原則」 の視点は捨てられない。

この 「保守性」 は動物の自己防衛本能であり、

「大丈夫、問題ない、平気、平気」 という専門家は、

個々のリスクに対する 「科学の (倫理的) 責任」 を果たしていない。

いわばただの科学論者であって、

(私にとって) アテにできない学者、ということになってしまう。

人は今、私 (あるいは私たち) に対するモラルを感じさせてくれる人を求めている。

ただ一歩間違えばコワいことにもなるわけで、

盲信してはいけないよ、と言い聞かせながら歩かなければならない。

 

原発とは、厄介な難題を提示したものである。

 



2012年4月21日

チェルノブイリから学ぶ 「低線量被曝」

 

今日は、年2回(春と秋) の大地を守る会の社員合宿の日。

部署持ち回りで幹事が指名され、自由に企画が練られる。

組織方針をめぐってディスカッションが行なわれることもあれば、

レクリエーション一色になることもある。

 

僕が幹事側になって仲間と企画したもので強く印象に残っているのは、

安全審査グループ時代にやったワークショップ型合宿かな。

千葉・さんぶ野菜ネットワークにお願いして有機農業体験する組、

船橋で船(大野一敏さんの太平丸) に乗って三番瀬を学ぶ組、

林業体験組、ゴミ処分場をめぐる組などに分かれ、

体験後はそれぞれの現地で 「運動と事業のつながり」 をテーマに議論し、

夕方に合流して懇親会、翌日、総括討論をやって提案型にまとめる、という趣向。

わずかなスタッフで皆よく切り盛りしながら働いてくれた。

 

さて今回は、宅配部主催。

出された企画は久しぶりの分散型、

しかもやっていただくことは街の清掃(ゴミ拾い)、という初物企画。

本社のある海浜幕張周辺組、六本木事務所周辺組、

今日明日と出展者として参画するアースデイ東京・代々木公園組に分かれ、

ゴミ拾いをやって、午後に浦安の温泉施設に合流して、

お風呂に入って宴会、という流れ。

 

アースデイ会場は、おそらくそんなにゴミは出ないと思うのだが・・・ 

とか言いながらワタクシはというと、

エプロンして街に繰り出す幕張組に 「ごめんなさい」 をして、

東京で行なわれるシンポジウムの聴講に向かわせていただいた次第。

テーマは、「低線量被曝に向き合う -チェルノブイリからの教訓-」。

会場は、本郷にある東京大学弥生講堂。

ウクライナとベラルーシから二人の研究者を招いて、

チェルノブイリ後に進行した住民たちの健康被害についての最新研究成果を学ぶ。

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招いたゲストは、

ウクライナ国立放射線医学研究所・小児放射線部長、Y・ステパーノヴァさん。

ベラルーシ科学アカデミー主任研究員、M・マリコさん。 

 

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ステパーノヴァさんの報告。

1986年4月26日深夜に発生したチェルノブイリ原発第4原子炉で発生した事故は、

「レベル7」 という最も深刻な事故災害となり、

この原子炉を鎮めるために80万人を超す作業員が動員され、

その作業者の中からも多くの被爆者を出した。 

被曝が原因とみられる死者の数は今も累積されていってる。

 

4km離れたプリピャチ市の住民を避難させるために

1100台のバスと3本の列車が用意され、3時間で4万5千人が避難した。

事故の規模が明らかになるにしたがい、

汚染地域・30km圏内からの避難が行なわれ、1993年末までに23万人が避難した。

 

ウクライナでは、チェルノブイリ事故の被災者を4グループに分けて登録している。

1) 事故処理作業にあたった人。

2) プリピャチ市と30km圏内から避難した人。

3) 放射性物質で汚染された地域に居住している人。

4) 被ばくした両親から生まれた子ども。

 

今回はチェルノブイリ事故が子どもの健康に与えた影響について報告された。

ポイントを上げれば、

・30km圏内から避難した子供にも、放射能汚染地域の住民にも、

 機能障害から慢性病へ移行する現象が見られた。

 この傾向は子どもが18歳になるまで続いた。

・健康な(何も疾患がない) 子どもの割合は、1986-87年の27.5%から、

 2005年の7.2%へと減少した。

・甲状腺に高い線量を被ばくした子どものうち、健康な者は2.8%に満たない。

・プリピャチ市から避難した子どもの疾患レベルは、比較対象グループよりも、

 事故後一貫して高く、2003年の健康調査では、避難グループの疾患レベルは

 対象標準グループに比べて3倍高い。

・子どもに見られる慢性疾患の特徴は、

 以前には子どもには見られなかった病気が見られるようになったこと、

 複数の病気にかかりやすくなったこと、病気の長期化および再発傾向が見られること、

 そして治療効果が低い(治りにくい) ことが上げられる。

・子どもの発達期における障害頻度は、胎児期の甲状腺被ばく線量と相関する。

・放射線リスクに他の危険要因(様々な環境的要因ヤ生活要因) が加わることによって、

 発達異常数が増加する。

・子どもの軽度な諸発達異常数と総被ばく線量に、正の相関関係がある。

 また被ばく時の胎児に妊娠期間(週) とは負の相関関係がある

 (=妊娠初期に被ばくしたほうが発達異常が多い)。

・染色体異常と胎内被ばく線量には相関関係があることが明らかになった。

 

ステパーノヴァさんは、チェルノブイリの教訓をこうまとめた。

1.チェルノブイリと福島第一原発事故は、

  原子力発電でもっとも起こり得ないとされた事故でさえ起こり得ることを示した。

  (原発を有する) 国家は事故に備えて対応措置を高度なレベルで準備し、

  常に対応措置がとれるように態勢を整えておかなければならない。

2.チェルノブイリ事故が大事故であると認識するのが遅かったこと、また

  住民と環境への深刻な影響への理解が不足したことが、

  住民、特に子どもの健康に大きな被害をもたらした。

3.事故対応システムが欠如していたことが、事故状況下で、

  処理作業に用意を欠いた人を事故処理に充てることになった。

  この決定は不合理であり、作業員の健康状態に与えた影響は正当化されえない。

  (エビ注......日本では、この部分はまったく明るみにされてない。)

4.被ばく線量の大部分は事故が危機的状態にあったときに放出された。

  人々への健康、特に子どもの健康保護は何よりも優先されるべきである。

  住民の避難は正しいものであり、効果的だった。

  しかしながら若干遅れたために、最大限の効果は得られなかった。

  今は毎年、子どもたちは4週間以上、保養施設で健康増進を行なっている。

5.原発事故に関して、住民に遅れることなく、しかも十分客観的な情報が

  伝えられなかったことが、社会に心理的緊張を生み出す前提となった。

  避難と移住の過程は、時に家族関係、友人関係、倫理的・文化的価値観を破壊した。

  さらに、新しく住む場所に関する被災者の選択権も考慮されなかった。

  チェルノブイリ事故の教訓として、住民の生活条件を変えるような決定を下す際には、

  被災者の希望を考慮する必要があることを認識することである。

6.チェルノブイリに関するすべての健康問題は、被災者のモニタリング登録が

  事故直後に作成されていたら、より効果的に解決されていただろう。

  しかし登録簿はかなり後に作成された。

7.子どもの健康状態が変化した原因は放射能の影響である。

  放射能由来でない要素 (生活条件や食料条件の悪化、精神面での長期的緊張など) も、

  健康状態変化の原因にあげられる。 

  (しかしそれも 「事故による影響」 である以上) 放射能事故による悪影響を受けた

  子どもの健康を維持し、回復するための施策は、医療当局だけでなく

  国家政策の優先事項に他ならない。

8.放射能の影響に関する住民の知識を高めるため、

  また精神・感情面での緊張感やストレスを軽減するために

  啓蒙活動を常に行なう必要がある。

  また農村地域では、住民にとりわけ信頼される情報提供者である教師、

  医療従事者、社会福祉関係者などに対する研修プログラムを導入すべきである。

 

ステパーノヴァさんは、強調した。

「子どもたちの健康を守ることは、国家の責任であり最重要政策である。」

 

僕たちは、4半世紀前のチェルノブイリから何を学んだんだろう。

そして、フクシマから何を教訓に残せるのだろう。

 



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