2008年3月10日
自給率とメタボリック?
内心、過剰反応だったかしら、などと思い返しつつも、数日たってもやっぱり気持ちは変わらない。
農水省と全農の新聞全面広告のことだ。
日本の農業(食料) を守る手立ては、生産と消費を健全につなぐ作業にかかっていて、
そこにこそ想像力を働かせたい。 それが常に僕の関心事でもあって。
しかも、これからの物資の高騰に耐えるのは、消費者である。
ここでの 「消費者」 には当然生産者も含まれるから、要するに国民すべてか。
ならなおさら、具体的施策が欲しい。
で、周辺に目をやれば、もう一人、自給率にハマッたヤツがいた。
「とくたろう」 ブログ - 農産の仕入担当・朝倉裕が2回にわたって書いている。
大地公認のブログ2本が、こんな調子になっちゃっていいのか、という不安もよぎるが、
なんかこう、そんな "流れ" になっちゃったんだよね。
彼の論考は、自給率の低下からメタボへとつながっている。
たしかに、この半世紀近くで決定的に増えたのは、肉と油脂の消費量で、
また米以外の穀物もほぼ外国に依存するかたちになってしまった。
それが自給率の低下と相関関係にあるわけだから、
結果としてのメタボリックと言えば、言えなくはない。 いや、その通りだ。
ま、私としても、型どおりの 「日本型食生活を見直そう」 より、
「メタボ不安からの脱却のために」 とか言われた方が、真剣になるような気もする。
ちなみに、コレステロールを心配するのも、実は現代の欧米食生活特有のものであって、
ヒトの普遍ではない。
これは文化人類学者・竹村真一さんが明快に語ってくれているので、お借りする。
「たまたま現代の先進国のような肉食中心の飽食社会では、 " (コレステロールが) 溜まりにくい "
遺伝子のほうが良いように思われるが、人類は何万年も肉食が日常ではあり得ない環境に暮らして
きたし、これから地球は再びそうした時代に逆戻りするかもしれない。
家畜を育てる飼料の穀物をそのまま人間の食糧にすれば10倍の人が食べられるのだから、
食糧危機の時代にはそんな非効率を許す余裕はなくなり、
肉食は年に数回の贅沢となるかもしれない。
そんな時代には、コレステロールという人体に必須の要素が溜まりにくい体質の遺伝子は
不利になるだろう。」 (『Voice』 08年3月号 「地球文明への条件」 より)
加えて、米の生産量が800万トンあたりの国に、生ごみ (食品残渣) が2000万トンとは、である。
(2150万トンという数字もある。 家庭からの排出量計算の誤差と思われる。)
国土はヒト以上に超メタボ状態である。 そのほとんどは輸入農産物、でなかったら計算が合わない。
自給率39%の国で、輸入超過でメタボ。 これがこの国の自画像だ。
これに対する医療費はどう考えたらいいんだろう。 絶望する方が楽だと言えるくらいだ。
でもって、ついつい、税金の使い方が気になってしょうがない。
また新規就農の斡旋や単純な規模拡大論では自給率は向上しない、のもたしかである。
「とくたろうさん」 の結論
-「自給すべき品目に対しては、どうしても適切な補助、支援が必要だ。」 に同意しつつ、
「健全な食」 を維持するために、補助金 (税金) をどう健全に回すか。
食べ物を作ってない我々消費者こそ、考えるべき時が来ているんだと思う。
幕内秀夫さんの 『粗食のすすめ』 じゃないけど、
「食生活は豊かになったのではなく、でたらめになっただけ」 なんだろう、たしかに。
でも・・・価格の安さである程度の (贅沢ともいえない) "豊かさ" を手に入れようとしてきたことも、
今の僕らの暮らしの側面でもあって、
偉そうに否定したからといって、簡単に乗り越えられるものでもない。
であるからこそ、これからの苦しい消費生活の先に、希望の有効打を打ちたい。
僕の、かの全面広告に対するイラ立ちとは、実は、
自分への焦りなのかもしれない。