2009年7月 5日
八郎潟から白神へ
昨日から土日を使って秋田・大潟村に行ってきた。
実はこの時期に大潟村に来るのは初めてで、草取りの真っ最中でのお邪魔となった。
こんな田んぼの風景、日本ではないだろう。
一枚が1町歩 (≒1ヘクタール) とか1.5町歩といった田んぼが、
1万5千ヘクタールに及ぶ平野部に整然と固まってある。
平野部といっても、ここは日本第二の湖・八郎潟の湖底だったところ。
1957年から20年、852億円の税金を投入して2万ヘクタールの湖を干上がらせた。
龍に姿を変えさせられた八郎太郎という心優しい男が、
十和田湖から流れ流れて、ここに棲みついたという伝説のある湖も、
大地に変わり、一大米どころとなったのだが、
思いっきり米づくりをしようと入植者が続々と入ってきた頃に減反政策が始まった。
国の政策に翻弄され続けた大地である。
八郎太郎はどこへ行ったのだろう。 天に昇ったか・・・。
ここで無農薬での米づくりに挑戦し続ける黒瀬正さん。
減反政策に反対して米づくりをする以上、補助金には一切頼らず、
有機JASの認証も取らない。 しかし文書管理はしっかりやる。
これは彼のたたかいなのである。
大地を守る会は、生産者も多様性に満ちている。
雑草対策は色々と試してきたが、何をどのように駆使しても、
やっぱり人の手は入らざるを得ない。
それにしてもこんな広い田んぼ。
見るだけで気が遠くなってしまう、容易ならざる作業だ。
おばさんたちがお喋りしながらやってくれているのが救いか。
黒瀬さんは、新しい有機稲作の技術は貪欲に吸収し、必ず試している。
現地への視察も頻繁に行く。
これは先日の米生産者会議でも登場したチェーン除草機の黒瀬版。
自作して、すでに検証している。
大きな動力除草機も持っているのだが、
しかしこのほ場条件にあっても、黒瀬さんが今行きついている草対策は、
人力の除草機とマンパワーである。
「やっぱり、これやなぁ。」
こうやって除草機を押し、なおかつ人の手を入れる。
これを3回はやる。
目を凝らしてみれば、いろんな虫がいる。
これはゲンゴロウの幼虫。 いっぱいいる。
カエルやクモにイトミミズ、タニシ・・・メダカやエビの一種も見つけた。
ここで生き物調査をやってみたいなぁ、という気になるのだった。
減反政策反対の論陣を張ってきたゆえに、ダーティなイメージもついてまわる方だが、
丹念に、地道に、やることはやっている。
ライスロッヂ大潟の提携米には、ゆるぎないファンがついている。
紙袋にこだわり、封がうまくいかないとなればミシンまで自作する。
すごいもんだ。
大地を守る会からの注文には、これで一袋一袋、封をして送ってくれる。
お手数掛けます。
コンクリ打ちから鉄骨の組み立て、機械の改良まで、
自分でできることは徹底して自分でやる。
黒瀬さんの倉庫には、随所にオリジナルの工夫が施されている。
元滋賀県庁職員という安定した職場を蹴って、大潟村に入植して40年近く。
「どこでこんなに技術を学んだんですか?」
「何もかんも見よう見真似よ。 百姓は何でも自分でやるのよ」
と笑う黒瀬さん。 その創意工夫、飽くなき試行錯誤に脱帽する。
さて今回、この時期にやってきたのには、もう一つの目的がある。
世界自然遺産にも登録された白神山地のブナ林を見に行こう、
というお誘いを黒瀬さんからもらったのだ。 (続く)