2013年4月26日
児玉龍彦さんが語る、放射能対策と科学者の責任(Ⅰ)
なかなか整理に手が回らず、アップが遅れました。
大地を守る会の放射能連続講座Ⅱシリーズ -第2回の報告を。
今回設定したテーマは、「改めて内部被ばくの問題を考える」。
講師は東京大学アイソトープ総合センター長、児玉龍彦教授。
会場は、千代田区立日比谷図書文化館コンベンションホール。
参加者、約150名。
児玉さんのお話しは、原発事故後の放射性物質の汚染の流れから始まり、
人体への影響について、そして児玉さんが取り組んでいる除染の問題と、
放射性物質の最終管理の道筋はどういうものであるべきか、
という流れで展開された。
食品による内部被ばくの話に絞って聞きたかった、
という方も多かったかと思うが、
児玉さんとしては、吸入による内部被ばくのリスクはまだ続いていることと、
トータルな意味での被ばく防護対策として、お話ししたかったようだ。
環境に滞留する放射性物質は、放置すればめぐりめぐって
あらゆる生命(生態系、食物連鎖) に影響を与え続けるわけで、
いま効率的な除染を追求することが、徹底的な封じ込めにつながるし、
総合的なリスク低減のためにも、しなければならないのだ、
という強い信念と決意を持っていることが感じられた。
「人間が生み出した問題を、人間の手で解決できないはずがない」
- どんな難敵に対しても、その姿勢を持つことが科学者としての未来への責任だと、
気の遠くなるような除染作業を諦めず、身をもって表現し続けること。
柔らかな口調ながら、そんな覚悟のようなものが伝わってくるのだった。
児玉さんは冒頭、
科学についての考え方が変わってきていることを知ってほしい、と語られた。
原発事故直後、東大教授の肩書を持つ人たちが多数メディアに登場したが、
彼らが東大を代表しているわけではない、とも。
これまでは 「科学的に正確でないデータは出すな」 と教えられてきた。
しかし科学をひとつの見方で捉え、上から下に伝える考え方は、
20世紀の思考である。
21世紀に入ってからは、いろんな考え方があって一つの結論を強制してはならない、
という思考に変わってきている。
ガンの治療法にしても、以前は 「こうしましょう」 と医者が方針を決めていたが、
今では、いろんな治療法がある、と考える。
その治療薬で副作用を発症する確率は10人に一人だったとしても、
その一人にしてみれば、副作用は100%である。
ひとつの治療法だけが、その人にとってベストな選択だとは限らない。
いろんな治療法やいろんな考え方があって、情報が開示され、
互いに検証されていくことが進歩につながる。
原発事故に対しても、同じ見方や考え方ができるのではないか。
しかし情報は一方通行で行なわれた。
3月12日にはベント (排気して中の圧力を下げる) が行なわれ、
歴史上最大量のキセノンや放射性ヨウ素が放出されている。
3月14日の3号機爆発後にも大量の放射性物質の放出があって、
専門家たちが逃げ出していた時も、
政府は 「ただちに健康被害は起きない」 と言った。
放射性物質の拡散予測システム 「SPEEDI」 のデータは発表されず、
多くの住民が拡散してゆく方向に避難してしまった。
結果的に、国民は政府の言うことを信用しなくなってしまった。
いろんな見方や予測が人々に提示されていたら、
もっと違った流れになっていたのではないだろうか。
ベントによって、原子炉内にあった希ガスはほぼ100%放出されたと考えられる。
希ガスはキセノン133 が中心で、その量はセシウムやヨウ素より多い。
キセノン133 は半減期が5日と短いが、
ベータ線を出し、肺に吸入されたり、体内に入ると危険である。
次にヨウ素、そしてセシウムが降下した。
ヨウ素の半減期は8日。 3ヶ月もすれば測定不能レベルになる。
半減期が短いということは、それだけ壊変が多いということで、危険だとも言える。
≪エビ注 : キセノンは最近も観測されいて、半減期の短さから、それは
2月12日に行なわれた北朝鮮の核実験の影響と見られている。
ということは・・・・・と心配になるが、その後の情報がキャッチできない。
僕らはただ福島の影響だけでなく、地球レベルでこの問題を捉えなければならない。≫
予測がなぜ大事かと言えば、
プルーム(放射性雲) がどう通過するかによって行動する必要があるからだ。
原発から何キロといった距離ではない。
「SPEEDI」 情報隠ぺいの罪は大きい。
福島では、3月16日に雪が降った。
21日には東日本全体に雨が降り、東京・金町浄水場の水からヨウ素が検出され、
広範囲に汚染が拡散していることが誰の目にも明らかになった。
放射性物質によって汚染された7割が山林であることも、対策を困難にしている。
放射性セシウムは、初期はイオンの状態で存在するが、
やがて粘土(ケイ酸アルミニウム) に結合される。
今は水そのものにはほとんど存在せず、川の底でも減っている状態で、
ダムや湖沼の底、海底に沈殿・沈着していっている。
したがって海では、表層の魚や回遊魚から底魚へと、問題は移っていっている。
樹木では、最初は高い部分の葉に付着し、したがって
初年度では落ち葉に強い線量が見られたが、次第に土壌の中に移っている。
昨年だと腐葉土を除去するのは有効だったが、
今年からは腐葉土を剥ぐと、かえって土壌の放射性物質が露出して
空間線量が高くなることも考えられる。
住宅ではまず、雨とともに降下して屋根に付着し(これが以外と落ちにくい)、
雨どいから側溝へと集められていく。
雨どいにコケなどがあると吸収されるので気をつけたい。
庭木、芝生、ウッドデッキ、車ではフィルター等に付き、
砂利や車庫のコンクリートに染み込む、という経路を辿る。
さて人体への影響について- (以下、次回に)。